2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of next-generation chemical refrigerator based on the crystallinity control of metal salt in nanosized pores of composite sorbent
Project/Area Number |
18H01766
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
汲田 幹夫 金沢大学, フロンティア工学系, 教授 (60262557)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
児玉 昭雄 金沢大学, 機械工学系, 教授 (30274690)
東 秀憲 金沢大学, フロンティア工学系, 准教授 (40294889)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 金属塩複合材料 / 収着冷凍 / 結晶性制御 / 熱・物質移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
吸着式冷凍機の熱出力は作動吸着系の特性と冷凍機の主要素である吸着材熱交換器の伝熱性能に大きく左右される。本研究で提案する金属塩/陽極酸化アルミニウム複合材は、良熱伝導材料のアルミニウムの表面を多孔性酸化皮膜に改質し、そのナノ細孔内に吸湿性の金属塩を添着するもので、冷媒蒸気の収着と熱交換をほぼ同じ場所で実現できる点が最大の特徴である。本研究では、本複合材の冷媒蒸気収着能を最大化するための調製法を確立し、その静的および動的収着特性に基づいて冷凍機への適用性について検討することを目的としている。今年度の研究実績は以下に示す通りである。 金属塩/アルミニウム複合材の水蒸気収着性能は、金属塩添着担体となる多孔質酸化アルミニウムの細孔構造と金属塩の添着量およびその結晶状態に大きく依存する。シュウ酸およびリン酸電解浴による陽極酸化処理、その後のカソード分極による細孔径拡大処理を種々の条件で実施した結果、金属塩(CaCl2)の添着量に直結する細孔容積はシュウ酸陽極酸化とカソード分極条件を適切に設定することで増大させることができる。一方のリン酸陽極酸化では直径200nmを超える大細孔皮膜を調製することが可能であるが、最大皮膜厚が36μmに留まるため、細孔容積の増大にはこの値の更なる上昇が必要である。なお、リン酸陽極酸化皮膜においても、溶液含浸後のCaCl2は低温度焼成により高い結晶性を示すことを確認した。 CaCl2/アルミニウム複合材の水蒸気収着特性は、ナノ細孔内へのCaCl2の添着量とその結晶性、そして細孔内の水蒸気移動空間等の影響を受け、特に、リン酸陽極酸化皮膜を担体とする複合材では、水蒸気収着速度が大幅に上昇することを明らかにした。また、本複合材の水蒸気収着挙動を理論的に把握するための2次元非定常熱・物質移動モデルを構築し、実験結果を概ね良好に再現し得ることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルミニウム平板をシュウ酸およびリン酸電解浴中で陽極酸化処理することで、その表面に前者では直径40nm前後、後者では200nm以上のナノ細孔を有する酸化皮膜が得られる。今年度は、新たに2段階シュウ酸陽極酸化法を採用することで細孔の自己組織化を促した酸化皮膜を調製するとともに、リン酸陽極酸化処理条件の見直しを行った。その結果、2段階陽極酸化とカソード分極の逐次操作により皮膜厚59μm、平均細孔径88nm、全細孔容積0.0087cm3/cm2の酸化皮膜を得た。一方のリン酸陽極酸化では、金属塩添着に好適と考えられる細孔物性(例えば、皮膜厚36μm、細孔径244nm、細孔容積0.0025cm3/cm2)を得るための調製条件を確立した。酸化皮膜内へのCaCl2添着では、細孔容積を大きくすることで添着量を増やすことができ、これに応じて水蒸気収着容量を増加させることが可能となった。また、酸化皮膜種に関わらず溶液含浸後に200℃程度で低温焼成することで高結晶性CaCl2を細孔内に析出させることができる。他方で、CaCl2/アルミニウム複合材の水蒸気収着速度は、吸着材充填層や塗布型材料に比べて明らかに速く、特に、リン酸陽極酸化処理で得られる大孔径の多孔質担体を用いて調製した複合材では、細孔内の水蒸気移動空間を容易に確保することができるため、その水蒸気収着はさらに迅速になることを確認した。また、本複合材の水蒸気収着挙動を理論的に把握するために、2次元熱・物質移動モデルを構築して数値解析を実行した。ここでは、水蒸気収着平衡を水蒸気圧に関するべき関数で近似し、収着速度には平衡収着量基準の線形推進力モデルを適用した。さらに、CaCl2の水和反応熱を水和モル比と関連付けることによって、CaCl2/アルミニウム複合材の水蒸気収着量および材料温度の過渡的挙動を概ね良好に再現した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究結果を踏まえて今後は、アルミニウム陽極酸化処理により得られる酸化アルミニウムのナノ細孔内にCaCl2を添着した金属塩/アルミニウム複合材について、収着冷凍性能を最大化し得る複合材の調製とそれを収着材熱交換器に適用する冷凍システムの構築に向けた検討を行う。 高出力収着式冷凍機には、大量の水蒸気を迅速に収着し、加熱脱着により速やかに再生可能な蓄熱材が不可欠である。CaCl2/アルミニウム複合材の水蒸気収着容量は、添着担体となる多孔質酸化皮膜の細孔容量、比表面積、そして、CaCl2の添着量とその結晶性に大きく依存する。一方の水蒸気収着速度は、CaCl2/Al2O3複合層の空間率やアルミニウム基材の厚み等の影響を受ける。シュウ酸およびリン酸陽極酸化により得られる多孔質酸化アルミニウム皮膜をCaCl2添着担体に用い、それらの水蒸気に対する収着能を最大限引き出すための細孔物性と添着塩化カルシウムの結晶性を最適化した複合材の調製法を確立する。そのために、陽極酸化皮膜およびCaCl2添着複合材の微視的構造とそれらの結晶性、複合材の水蒸気収着平衡、収着速度および熱応答性について評価するとともに、複合材中の水蒸気と熱の移動機構の解明に繋げる。 つづいて、CaCl2/アルミニウム複合材熱交換器を適用した収着冷凍システムの冷熱生成能を評価するために、本熱交換器の基本構成単位である平板型CaCl2/アルミニウム複合材の熱・物質移動解析を行う。複合材に対する水蒸気収着平衡と収着速度を実験結果に基づいて定式化し、これまでに構築した理論解析モデルを用いて本複合材の水蒸気収着と熱移動挙動を詳細に把握する。そして、平板型複合材を積層した収着材熱交換器を模擬した実験系による水蒸気収着実験と冷熱生成解析を行うことで、本複合材の収着冷凍用蓄熱材としての適用性について検討する。
|
Research Products
(6 results)