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2019 Fiscal Year Annual Research Report

非極性基の相互作用を利用したセルロース・キチンの触媒的分解

Research Project

Project/Area Number 18H01781
Research InstitutionHokkaido University

Principal Investigator

小林 広和  北海道大学, 触媒科学研究所, 助教 (30545968)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2021-03-31
Keywordsバイオマス / セルロース / キチン / 触媒 / メカノキャタリシス
Outline of Annual Research Achievements

液体酸によるキチンの機械的加水分解の機構に関し、ボールミルでのボールの運動の解析を目指した。その結果、ボールの運動方程式と、ボールが弾性体として仮定した試料に衝突する方程式を立てることができ、試料に対してナノニュートン単位の力がかかることを解明できた。
キチンを加水分解できる固体触媒は工業的に魅力的であるが、これまでに本反応を実現した報告はなかった。そこで、反応機構論に基づき、キチンの強固な極性基の相互作用をボールミル処理によって緩め、そこにキチンとCH-π相互作用を形成できる炭素触媒を共存させれば、加水分解が起こせるのではないかと考えた。その結果、キチンと弱酸点を持つ炭素を一緒にボールミル処理すると加水分解が進行することを見出した。反応は選択的に進行し、転化率71%、オリゴ糖収率65%という値を得た。さらに、生成物をNMRと質量分析計を用いて詳細に調べたところ、構造が変化したオリゴ糖(副生成物)の量は6.2%に抑えられていた。つまり、真のキチンオリゴ糖の収率は59%である。
比較のために、これまでに液体酸触媒として用いられてきた硫酸を触媒に使用した場合では、オリゴ糖収率は52%と比較的高いものの、上述した副生成物の量が20%に達し、真のキチンオリゴ糖は32%しか含まれていなかった。
以上のとおり、固体触媒によるキチンの加水分解を達成し、さらに液体酸よりも選択的な反応を実現することができた。
次に、キチンのモノマーから、ポリマー原料として期待できるアミドアルコールの合成を試みた。様々な酸触媒を検討したところ、トリフルオロメタンスルホン酸をS/C=2という高い濃度で用いることにより、アミドアルコールが比較的高い収率で得られることを見出した。得られたアミドアルコールは構造が決定されていなかったため、単結晶X線回折により、望みの構造を持つことを確認した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

計画通りに、ボールミル処理によって発生する力を見積もることができた。予定していた量子計算についても基礎的なデータを得るところまで完了し、問題なく解析を進められることが分かった。
さらに、年度計画を超えてキチンを加水分解できる固体触媒系の開発に成功した。しかも、この触媒系は従来の液体酸触媒を用いた反応よりも選択性が高く、優れていた。
また、N-アセチルグルコサミンからのアミドアルコールの合成も達成することができた。当初は固体酸による反応を計画していたが、アセトアミド基の嵩高さと塩基性の影響が予想したよりも大きく、非常に低い反応性を示した。しかし、方策を改めて、様々な液体酸触媒を検討し、トリフルオロメタンスルホン酸を使用して条件を最適化することにより、問題を解決することができた。

Strategy for Future Research Activity

1. 炭素触媒によるキチンの加水分解
本年度の検討により、弱酸点をもつ炭素触媒とキチンを一緒にボールミル処理すると、炭素触媒と機械的な力が協奏的に作用し、キチンの加水分解が進行することが分かっている。そこで、来年度はこの触媒反応の機構を明らかにするため、まず表面弱酸点の制御および他の固体酸触媒との比較を行い、炭素と表面弱酸点の効果を明確にする。これに加えてモデルオリゴ糖の吸着実験を行い、触媒-キチン間の相互作用と触媒活性との相関を調べ、特にCH-π相互作用の効果を明らかにする。次に、速度論的な検討と分光法を組み合わせて反応経路や中間体について調べる。また、機械的な力が及ぼす化学的な効果をDFT計算により推定し、これらの結果をあわせて反応機構を提案する。

2. セルロースとキチンのモノマーの有用化学品への変換
セルロースのモノマーであるグルコースを水素化するとソルビトールが生成する。ソルビトールの分子内脱水反応により、ポリカーボネートの原料として使用できるイソソルビドが得られる。一方、キチンのモノマーであるN-アセチルグルコサミンを同じルートで変換すると、アミドアルコールが生成し、含窒素ポリマー原料として利用できると期待される。どちらの化合物の合成においても、分子内脱水反応の過程で濃硫酸やトリフルオロメタンスルホン酸などの腐食性の強酸が必要とされており、より温和な条件でそれら化合物が選択的に得られる触媒系の開発が望まれている。そこで、本研究では弱酸触媒を用いてイソソルビドならびにアミドアルコールの合成を目指す。アミドアルコールの合成においては、分子内に存在するアセトアミド基が塩基として作用し、反応を阻害するため、この問題を回避できる方法を探索する。

  • Research Products

    (7 results)

All 2019 Other

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (4 results) (of which Int'l Joint Research: 3 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] Catalytic Conversion of a Chitin-Derived Sugar Alcohol to an Amide-Containing Isosorbide Analog2019

    • Author(s)
      Takuya Sagawa, Hirokazu Kobayashi, Chinatsu Murata, Yukatsu Shichibu, Katsuaki Konishi, Atsushi Fukuoka
    • Journal Title

      ACS Sustainable Chem. Eng.

      Volume: 7 Pages: 14883-14888

    • DOI

      10.1021/acssuschemeng.9b02985

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 弱酸点を有する炭素触媒によるセルロースの加水分解2019

    • Author(s)
      小林広和, 福岡淳
    • Journal Title

      炭素

      Volume: 2019 Pages: 211-218

    • DOI

      10.7209/tanso.2019.211

  • [Presentation] Dehydration condensation of chitin-derived sugar alcohol by acid catalyst2019

    • Author(s)
      Takuya Sagawa, Hirokazu Kobayashi, Atsushi Fukuoka
    • Organizer
      The 17th Korea-Japan Symposium on Catalysis
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] Catalytic Conversion of Cellulose and Chitin to Chemicals2019

    • Author(s)
      Atsushi Fukuoka, Abhijit Shrotri, Hirokazu Kobayashi
    • Organizer
      The 26th Meeting of the North American Catalysis Society
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] Catalytic conversion of chitin into amino acid2019

    • Author(s)
      Atsushi Fukuoka, Hirokazu Kobayashi
    • Organizer
      14th EuropaCat
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] 酸触媒による含窒素糖アルコールの脱水縮合反応2019

    • Author(s)
      佐川拓矢, 小林広和, 福岡淳
    • Organizer
      第124回触媒討論会
  • [Remarks] Researchmap

    • URL

      https://researchmap.jp/read0148875/

URL: 

Published: 2021-12-27  

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