2019 Fiscal Year Annual Research Report
The biocatalytic CO2-fixation catalyzed by (de)carboxylases and application to the production of various aromatic carboxylic acids
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18H01802
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
木野 邦器 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60318764)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 可逆的脱炭酸酵素 / 炭酸固定酵素 / 芳香族モノカルボン酸 / 芳香族ジカルボン酸 / 4-ヒドロキシイソフタル酸 / フランジカルボン酸 / プロトカテク酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
脱炭素化社会の実現に貢献する革新的バイオプロセスの開発を目指して、可逆的脱炭酸酵素を利用した二酸化炭素の固定化による芳香族カルボン酸製造技術の開発研究を推進した。さらに、芳香族ジカルボン酸合成法の開発の一環として、フランジカルボン酸の合成を可能とする可逆的脱炭酸酵素の取得と新たな炭酸固定酵素探索システムの開発を行った。 前年度取得した6-メトキシサリチル酸脱炭酸酵素の解析を行い、複素環を有する2-ナフトールから2-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸を合成する初めての炭酸固定活性を見出した。また、4-ヒドロキシイソフタル酸に対し可逆的脱炭酸活性を有する株と当該酵素遺伝子の取得にも成功していたが、今年度は、大腸菌で調製した組換え酵素の反応至適pH, 温度および熱安定性など生化学的特性を明らかにした。さらに、新たなバイオ樹脂として期待されているポリエチレンフラノエートの原料であるフランジカルボン酸の合成法の開発研究を実施した。バイオマス資源から供給可能なフルフラールを出発基質として、フロ酸を経由してフランジカルボン酸を合成する微生物Paraburkholderia fungorum KK1の取得に成功した。この合成反応を触媒している酵素は、従来とは異なる可逆的脱炭酸酵素システムUbiD/UbiXであることを明らかにし、当該酵素遺伝子と大腸菌組換え株で調製したタンパク質の特性解析も進め、ピロールジカルボン酸も合成可能であることを明らかにした。また、新規基質特性を有する炭酸固定酵素UbiDの探索システムも構築した。 一方、芳香族への官能基導入法として、ポリフェノールである3-ヒドロキシエチルカテコール(HEC)の合成法を検討した。その結果、Pseudomanas sp. K17株由来クメンジオキシゲナーゼ類似酵素によって、2-フェニルエタノールからモル変換収率約90%でHECの合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
芳香族カルボン酸や芳香族ジカルボン酸の合成活性を有する新規可逆的脱炭酸酵素の取得に成功し、その生化学的諸性質を明らかにした。その過程で、2-ナフトールから2-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸を合成する炭酸固定活性を見出すことに初めて成功した。これは、本研究戦略によって複素環を有する多様な芳香族カルボン酸合成を可能とする新規炭酸固定酵素の探索にも有効であることを示す大きな成果といえる。また、新たなバイオ系高分子素材として期待されているポリエチレンフラノエートの原料であるフランジカルボン酸を、バイオマス資源から供給可能なフルフラールを出発原料として合成する微生物株を新たに自然界から分離したことは特筆すべき成果である。さらに、当該合成反応を担う可逆的脱炭酸酵素が従来の酵素とは異なるUbiD/UbiXに依存していることを明らかにし、この酵素反応システムを利用して新たな基質特異性を有する炭酸固定酵素の基本的な探索システムを構築することにも成功した。従来の炭酸固定酵素では困難であったカルボン酸の合成に関しても、当該酵素探索システムを利用することで可能となった。本技術は、合成可能なカルボン酸の多様性の拡張にも貢献するものであり、今後の研究推進における基盤技術となるものと期待できる。これら成果は、日本生物工学会や国際学会での口頭発表や論文投稿につながった。 一方、酸化酵素による水酸基導入法の開発に関しては、ポリフェノールである3-ヒドロキシエチルカテコールを2-フェニルエタノールからモル変換率90%以上の高収率で合成するプロセスを開発した。この研究成果は第21回生体触媒化学反応シンポジウムで発表し、優秀発表賞として選定された。
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Strategy for Future Research Activity |
カーボンリサイクルを基軸とした持続的社会の実現を目指し、前年度までに得られた可逆的脱炭酸酵素に関する成果を展開し、汎用的な機能性化成品の原料として有用な芳香族カルボン酸のバイオマス資源からの効率的な製造プロセスの開発研究を推進する。具体的には、ヒドロキシ芳香族化合物に加えて、前年度見出したヒドロキシ芳香族モノカルボン酸である4-ヒドロキシ安息香酸に炭酸を固定して4-ヒドロキシイソフタル酸のようなヒドロキシ芳香族ジカルボン酸を合成する新規可逆的脱炭酸酵素の酵素特性を解析し、新たなジカルボン酸合成酵素の開発指針を探る。また、ヒドロキシ基を有さない芳香族化合物へのカルボン酸合成法の一つとして、前年度、フルフラールからフロ酸を経由してフランジカルボン酸を合成する微生物を土壌から取得しているが、バイオ樹脂の原料として期待されているフランジカルボン酸の生産活性を高める研究を推進するとともに、当該炭酸固定活性を担う新たな炭酸固定酵素群UbiD/UbiXの高活性発現プロセスに関する研究を進める。また、大腸菌を基盤とした新たなUbiDの探索システムの高度化を進め、芳香族以外の化合物へのカルボン酸導入も目指す。一方で、芳香族化合物へのヒドロキシ基導入法の開発研究も継続する。 これまでの研究成果を整理し、それらの社会還元に向けた効果的な発表や論文投稿を行う。
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