2018 Fiscal Year Annual Research Report
A study of protein corona formation using purified carbon nanotubes
Project/Area Number |
18H01809
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
平野 篤 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (90613547)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀田 倫史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (40415774)
白木 賢太郎 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90334797)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | タンパク質 / カーボンナノチューブ / タンパク質コロナ / 分子動力学計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、独自技術によって得られた超高純度カーボンナノチューブを用いて、カーボンナノチューブとタンパク質の複合体であるタンパク質コロナの形成機構を解き明かすことを目的としている。カーボンナノチューブなどのナノ粒子が環境中から生体内に取り込まれた直後に形成されるタンパク質コロナの構造は、ナノ粒子の生体内動態を決定づける極めて重要な因子であり、ナノ粒子の安全性と深く関わっており、この形成機構の解明を目指す。
本年度は、血漿や血清に含まれる各種タンパク質およびカーボンナノチューブを用いて、タンパク質コロナ形成におけるカーボンナノチューブの骨格構造や電気的性質の影響を調査した。その結果、タンパク質の吸着によって、水溶液中でのカーボンナノチューブの酸化還元反応が抑制されることが明らかになった。さらに、アミノ酸とカーボンナノチューブの相互作用を調べることで、タンパク質とカーボンナノチューブの相互作用の理解を目指した。その結果、タンパク質の構成要素であるシステインが鉄イオン存在下で酸化が極めて迅速に進行し、同時にタンパク質の多量化も進行することが明らかになった。タンパク質コロナの形成過程において、タンパク質の酸化がナノ粒子とその夾雑物によって共同的に進むことを示す初めての成果となった。そのほか、分子動力学計算を用いたアミノ酸とカーボンナノチューブの相互作用の熱力学的物性値の計算を行い、平面性のある側鎖を有するアミノ酸側鎖がカーボンナノチューブに対する高い親和性を有することを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施途中で当初の研究方式を再検討する必要が生じ、研究計画の一部の修正が必要となったが、その後は予定通りの研究の実施が可能となり、新規の知見を得ることができた。特に、カーボンナノチューブとタンパク質の物理的な相互作用と化学的な相互作用の両方をアミノ酸レベルから解明した点は、タンパク質コロナの形成原理を理解する上で、極めて重要な成果となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
カーボンナノチューブの個別の構造がカーボンナノチューブとタンパク質の相互作用にどのような影響を及ぼすのかを明らかにするために、カーボンナノチューブの曲率依存性を調査する予定である。手法の一つとして、分子動力学計算を用いて、曲率の異なるカーボンナノチューブと各種アミノ酸の相互作用を熱力学的に調査する予定である。また、カーボンナノチューブとタンパク質の間の酸化還元反応の普遍性の調査の一環として、タンパク質以外の生体分子を用いた実験も行う予定である。
|
Research Products
(3 results)