2019 Fiscal Year Annual Research Report
Observation and control of valley-spin-polarized current at quantum confinement structures in graphene
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18H01812
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
青木 伸之 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (60312930)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
音 賢一 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (30263198)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | グラフェン / 高移動度 / 量子ポイントコンタクト / バレースピン / カー効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
六方晶窒化ホウ素(hBN)をグラフェンの高移動度化に用いられるhBN/グラフェン/hBN積層構造において,グラフェンに対するエッジコンタクト技術の確立を行った。高周波プラズマエッチング装置におけるCHF3/O2ガスの比率を最適化し,イオンの衝突によるステンレスステージの温度上昇を防ぐために基板とステージとの間に石英基板を挿入した。さらにため,基板の裏面に耐熱性高真空グリースを付けることで基板の熱を逃がしやすくし,温度上昇を防止した。その結果,これまで問題であったPMMAレジストの残渣が大幅に減少し,歩留まり約90%で安定して電気的接触が取れるようになった。また,接触抵抗値は1kΩμm程度まで改善された。 これまで作製してきた2層グラフェンにおけるQPCの問題点として,伝導度がゼロまで下がらないという問題があった。これは,スプリットゲート電極の間における垂直電場が十分に掛からず,細線チャネル内を空乏化することができないためと考えられた。そのため,チャネルを完全にピンチオフさせることを目標として,2つの方向からQPC構造形成方法の改良を行った。一つ目は,これまではSi基板をバックゲート電極として用いてきたが,十分な電場を印加するために100V程度の電圧を印加する必要があったため,ゲートリークがしばしば発生していた。そのため,耐電圧性と平坦性に優れたhBN結晶をゲート絶縁膜とした構造への変更を進めた。二つ目として,これまでスプリットゲート電極を素子の最上部に作製してきたが,グラフェンの下に設置することにした。これにより,基板を第3のゲート電極として利用でき,チャネル内の垂直電場を補うこととに加え,2次元電子領域(リード部分)のキャリア密度の制御と高移動度化を図った。その結果,伝導度を2e^2/h以下にまで減少させることに成功したが,完全にピンチオフさせるまでには至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を始めてから作製にとりかかった反応性プラズマエッチング装置による,hBN層のエッチングとグラフェンに対するエッジコンタクトは軌道に乗り,歩留まり90%以上が達成されている。接触抵抗値も1kΩμm以下となっており,確立できたと判断できる。 ファンデルワールス力を用いた積層化技術に関しても技術が向上しており,バックゲート電極としてグラファイトを用いることで,従来のSi基板を使用したバックゲート構造で問題であったリーク電流の発生を抑制することに成功している。さらに昨年度からはTear & Drop法を用いたツイスト型2層グラフェンの作製にも取り掛かっており,モアレ超格子の形成によるバンド構造の変調が生じていることが確認できるようになってきた。現状ではねじれ角度に対する再現性が不十分であるが,作製を重ねていくことで条件が決定できると考えている。このように,試料作製技術に関しては十分に順調に確立できてきている。 このような技術を用いて,量子ポイントコンタクト構造の作製を進め,量子化伝導度の観測を目指して研究を進めている。第3のゲート電極を有する試料構造を用いることでチャネル領域の垂直電場を補い,またチャネル領域を高移動度化することで,伝導度を2e^2/hを下回る値まで下げることができた。そのような状況でも,我々の試料で得られる伝導度の量子化現象は2e^2/hを単位として現れることが確認され,これまでの結果を裏付ける結果が得られている。これらの結果から間隔の狭いスプリットゲートで構成された量子ポイントコンタクトにおける量子化現象に対する一定の知見がえられたものと考えられる。これらの成果から,研究は概ね順調に進んでいるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで我々の研究で確認された2層グラフェンに対して電界効果によって閉じ込められた量子ポイントコンタクトにおける2e^2/hを単位とした伝導度の量子化現象を観測してきた。これは電界閉じ込めによってバレーの縮退が解けていることを示しており,また垂直磁場の印加により1e^2/hへと変化するゼーマン分裂も含め,これらの成果について論文にまとめる予定でいる。 昨年度成功したグラフェンの下に設置したスプリットゲート電極とトップゲートとで形成されたQPC構造に加えて,基板を第3のゲート電極として利用した素子構造の作製をすすめる。これによりチャネル内の垂直電場を補うことに加え,2次元電子領域(リード部分)のキャリア密度の制御と高移動度化が期待できる。これまではスプリットゲートを金属で作製してきたが,数層のグラファイトを微細加工してスプリットゲート電極とすることで,電極表面の平坦性を確保してスプリットゲート電極上の漏れ電流を抑制することができると期待する。 現在進めている,銀ナノワイヤーをテンプレートとした高精細なグラフェンナノリボンの形成と量子閉じ込め構造の作製を行う。これまでの研究で,銀ナノワイヤーがCHF3によるプラズマエッチングに対してエッチング耐性を有することを確認しており,hBN/単層グラフェン/hBN構造に対して加工を行うことが可能となった。この技術を使い,高移動度なナノリボン構造を形成し,単層グラフェンに対する伝導度の量子化現象の観測を行い,2層グラフェンで観測された量子化現象と比較を行う。 局所測定技術を用いたバレー・スピン偏極電流軌道の観測を行う。原子間力顕微鏡AFM)探針をゲート電極として利用した走査ゲート顕微法や局所カー効果観察を用いて,QPCを通過する電子流においてバレー選択効果が生じているかどうかについて検証を行う。
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[Journal Article] Investigation of laser-induced-metal phase of MoTe2 and its contact property via scanning gate microscopy2020
Author(s)
Kohei Sakanashi, Hidemitsu Ouchi, Kota Kamiya, Peter Kruger, Katsuhiko Miyamoto, Takashige Omatsu, Keiji Ueno, Kenji Watanabe, Takashi Taniguchi, Jonathan P. Bird, and Nobuyuki Aoki
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Journal Title
Nanotechnology
Volume: 31
Pages: 205205-1-6
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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