2019 Fiscal Year Annual Research Report
Biosensing by dynamic magnetization measurement of stimuli-responsive magnetic hydrogels
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18H01824
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
北本 仁孝 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (10272676)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | バイオセンシング / ハイドロゲル / 刺激応答性高分子 / 磁性ナノ粒子 / 交流磁化計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
化学的・生化学的刺激に応答する、磁性ナノ粒子を内包した磁気ハイドロゲルをバイオセンシングのラベル(標識)とし、その交流磁化計測による新規の化学・生化学センサの開発を目的としている。その中で、①磁気バイオセンシングのラベルとなる磁性ナノ粒子の流動性媒体中での振舞を解析すること、②磁性ナノ粒子がpHに応答して膨潤・収縮するハイドロゲル中に分散した複合体を作製し、その交流磁化のpH依存性を評価すること、③ハイドロゲル中での磁性ナノ粒子の流体力学的な振舞を変調するゲルの構造を探索する研究を遂行した。 磁性ナノ粒子が流動性のある媒体中でより自由度の高い流体力学的な振舞を発現するには、混合したポリマーとの相互作用の影響を考慮する必要があり、ハイドロゲルに磁性ナノ粒子を分散させる場合のポリマーの選択や粒子の表面修飾が設計上重要であることを見出した。 pH応答性ポリマーであるスルファメサジンのゲル中に磁性ナノ粒子を分散させた複合体において、中性付近から塩基性側へのpHの変化により交流磁化値、緩和周波数の変化を確認した。またアンモニアガスの吸収によるpH変化で同様な交流磁化特性を変調させることに成功し、アンモニアガスセンサにつながる成果を得た。 本研究ではポリマーハイドロゲル中での磁性ナノ粒子の流体力学的振舞の自由度が高いほうがより高感度なセンシングができるが、その実現のためにゲル作製プロセスにおいて凍結などの相分離技術を活用し、ゲル中のポア構造をより大きくすることに成功した。それにより、ゲルのポア構造中に内包する磁性ナノ粒子コロイドの明確な緩和現象を確認するとともに、ゲルの微細構造の変化により、緩和周波数を変調させることに成功した。ゲルの外部刺激に応答した微細構造の変化により、この磁性複合ゲルの交流磁化特性の変調とそのセンシングへの応用にとって重要な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において達成すべき目標は、pHなどの外部刺激に応答して交流磁化特性を変調できるように材料設計・創製することとそのセンシングへの応用してのデバイス提案である。 その中で前年度より顕著なpH応答による交流磁化特性を変調することのできる磁性ゲルとして、ポリマー材料の見直し(スルファメサジンの採用)に成功した。さらにアンモニアガスの吸収によるpH変化に伴うゲルの膨潤・収縮とそれに起因する交流磁化特性の変化を検出できたことから、ガスセンシングのラベルとして応用する道が開けた。前年度に用いていたキトサンの場合は磁性ナノ粒子との相互作用による粒子の流体力学的な振舞に対する拘束が他のポリマーより強いことを見出し、ポリマーと磁性ナノ粒子との間の相互作用と粒子の流動性との相関を調査した基礎的な検討結果を進め、刺激応答性ポリマーでも本研究の対象となる磁性ゲルに用いるにあたり適否があることに気づく結果となった。 ゲル内部での磁性ナノ粒子の流体力学的特性の向上とその変調感度の向上についても、ゲル内部のポア構造をより大きくすることが必要なこと、その手法として相分離によるゲル作製プロセスが有効であることを見出した。相分離の手法が活用できるポリマーの選択は検討課題であるが、ゲルの微細構造として必要な条件を見出すことができ、今後の材料設計指針に有益な情報を与える成果を得たと言える。 以上のことから、最終年度に向けてその成否を左右するともいえる重要な結果が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度においては、応用が想定されるガスセンシングのラベルとしての特性の発現と、ゲルの磁性の制御という視点で最も重要なゲル内部の微細構造制御に成功した。また、課題としては磁性ナノ粒子とポリマーとの相互作用が重要であること、そのためのポリマーの選択の重要性、さらにはゲルの内部構造中の水の物性(自由水と構造水との割合など)のより詳細な調査の必要性を見出した。これらを踏まえて、次のような推進方策を立てた。 内包する磁性ナノ粒子の流体力学的振舞をより顕著にし、かつシャープな緩和ピークを得るために、磁性ナノ粒子(コロイド)が存在するゲル内部のポア構造のサイズを最適化する必要がある。さらに、ゲルの化学的刺激に応じた微細構造の変化が、磁性ゲルの交流磁化特性を変調させるような物性制御をさらに進める。特にポア空間のサイズ、その刺激応答による変化が重要なパラメータであるが、加えてこれまでの成果を踏まえて、ポリマーと磁性ナノ粒子の相互作用の強さ、ゲル内部の水の物理化学的な物性にも注目する必要がある。そのために、ゲルの微細構造解析を進めるとともに、内部の水物性を熱解析、NMR解析によって明らかにしていく。その成果をもとに、流体力学的磁気緩和現象をより顕在化し、化学的・生化学的刺激への応答性の感度向上をはかるための材料選択と構造設計を進める。 流動性媒体中の流体力学的な磁性ナノ粒子の振舞に関して、その特性を表す緩和周波数の代表値の抽出が従来法であるが、ナノ粒子の特性は多分散であり、バイオ反応も不均一であることから、緩和周波数の分布を評価する技術を確立し、ラベル粒子の流体力学的振舞の分布を評価する必要がある。分布の評価手法の基礎的な検討はすんでいるが、センシングの視点からの物理的・化学的検証が課題として挙げられる。このような評価に適した微粒子の合成を検討し、流体力学的振舞の分布解析を進める。
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Research Products
(15 results)