2019 Fiscal Year Annual Research Report
1次元凹凸周期曲面構造C60ポリマー薄膜の新奇物理的・化学的機能の開拓
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18H01826
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
尾上 順 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50241245)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 1次元金属フラーレンポリマー / 熱電変換機能 / ナノ空間特殊反応場 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 熱電変換機能の開拓 超高真空(UHV)下でマイクロプローバを用いてゼーベック係数を測定し, 四探針測定で得られている電気伝導率からパワーファクターを算出したが、KxC60薄膜と同様に、ゼーベック係数と電気伝導率とがトレードオフの関係であることがわかった。薄膜のグレインサイズ(数ミクロン)に対して上記2つの物性値を測定する際の電極パッド間の距離が0.1 mmのため、粒界が支配的になっていることが原因と考えられる。そのため、現在、電極間距離を縮小して再度測定を行う予定である。 (2) 特異反応場機能の開拓 CO2の固定化および有価物質への変換として、水素(H2)とCO2との反応によるギ酸(HCOOH)の生成について検討した。ギ酸は水素キャリアとして注目されている物質である。UHVチャンバーにH2とCO2を1D凹凸C60ポリマー薄膜に導入し、in situで赤外分光測定を行い、理論スペクトルとを比較した結果、室温ではフリーのギ酸に対応するピークは観測されなかったが、新たなピークが現れた。ギ酸がC60ポリマーに吸着している可能性もあり、現在、可能性のあるモデル構造から理論IRスペクトルを計算中である。 また、得られた成果については、今年度、国際雑誌Carbon 152, 241 (2019)、Carbon 152, 882 (2019)、Nanotechnology 31, 115701 (2020)に掲載され、現在1報投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記検討課題は想定内の課題であるため、その解決策も分かっているため、概ねクリアできると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 熱電変換機能の開拓 前年度は、C60薄膜に電子線照射により1D凹凸C60ポリマー薄膜を形成し, ゼーベック係数と電気伝導率をin situ測定したが、グレインサイズより大きな電極間で測定認め、粒界の影響により、薄膜の真の物性値が測定できなかった。今年度は、電極間距離をグレインサイズ程度まで小さくすることで、薄膜由来の真のゼーベック係数と電気伝導率を測定し、1993年に理論予測されている巨大ZTを発現するか検証する。 2 特異反応場機能の開拓 今年度は、前年度In situ超高真空FT-IR装置に取り付けた反応性ガス導入機構および質量分析計測器を用いて、 固定化 したCO2を有用物質(R-OH, R-COOHなど)に変換するために, H2ガスを導入し、室温でギ酸が生成するかを検討した。新たなIRピークが観測されたが、フリーのギ酸そのもののIRピークとは異なることから、ギ酸とC60ポリマーとの相互作用したモデル構造を用いた理論スペクトルを算出し、生成物の同定を行う。また、新たに反応性ガス(たとえば、メタンやエタン)を導入し, 炭酸イオンから有用物質への変換を試みる。
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Research Products
(8 results)