2019 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive studies of working mechanism of Cas proteins using HS-AFM
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18H01836
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
柴田 幹大 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 准教授 (80631027)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 1分子イメージング・ナノ計測 / タンパク質・酵素化学 / ゲノム工学 / 1分子計測・操作 / バイオイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ゲノム編集ツールとして用いられる様々な Casタンパク質に高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を適用し、Casタンパク質1分子がDNAを切断する様子を可視化することにより、その分子作動機構を統一的に理解することが目的である。近年我々は、Casタンパク質の中で最も研究の進んでいるCRISPR-Cas9が標的DNAを探索・結合・切断する一連の過程を動画撮影することに成功した。この成果を基盤とし、様々な種に存在する多様なCasタンパク質に対し高速AFMを適用し、DNA切断ドメインの揺らぎ・構造変化・物性を網羅的に解析する。2年目は、初年度に設置した高速AFMを用い、Staphylococcus aureusに由来するSaCas9、Francisella novicida由来のFnCas9、および、Acidaminococcus sp. 由来のAsCas12a、Lachnospiraceae bacterium 由来のLbCas12aに対して高速AFM観察を行った。その結果、それぞれのCasタンパク質の核酸非結合状態では安定な立体構造をとらず、フレキシブルな動態が観察された。その一方、RNA結合状態では安定な立体構造をとり、コンパクトな固い構造をとることが分かった。さらに、標的DNAへ結合した状態では、Casタンパク質はDNA上をスライドすることなく強固に標的配列に結合し、DNA上を動くことはなかった。これらの分子動態は、我々が報告したSpCas9と同じであり、Casタンパク質群の共通の分子作動機構である考えられる。さらに、DNA切断過程の直接観察を試みたが、AFM基板の影響が大きいため、今年度は成功に至らなかった。これは、各タンパク質において、最適な高速AFM観察条件が異なると考えられ、次年度はより詳細な条件検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SaCas9および、AsCas12a, LbCas12aに対する高速AFM観察により、Casタンパク質単体においては、安定な立体構造を形成せず、フレキシブルな動態であることが分かった。次に、各タンパク質に最適に結合するように設計したRNAを加え、高速AFM観察を行うと、全てのCasタンパク質のRNA結合型では、安定でコンパクトな立体構造を形成することが分かった。これらの結果は、Casタンパク質内部に結合するRNAはDNAの標的配列を認識するための役割に加え、Casタンパク質の安定な立体構造を保つ役割を持つことを意味する。次に、Casタンパク質-RNA-DNA三者複合体の高速AFM観察では、全てのCasタンパク質において、標的配列への強固な結合が見られたが、DNA上を動く様子は観察されなかった。このように、研究開始2年目で上述した研究成果が得られ、RNAの役割とRNA-DNAの結合様式がCasタンパク質群において共通の分子作動機構であることを見出せたことにより、おおむね順調に研究が進展していると考えられる。しかしながら、DNA切断過程の直接観察に関しては、Casタンパク質がもつDNA切断ドメインがAFM基板側へ強く結合してしまい、DNAを切断する瞬間を捉えるには至らなかった。次年度において、さらに詳細なAFM基板の検討(表面電荷, 表面に凹凸を付ける)、観察バッファーの検討(塩濃度, 温度 pH)を行い、Casタンパク質が機能する瞬間のナノ動態の観察を試みる。 また、AsCas12a, LbCas12aにおいては、標的配列DNAへ結合するためには、Mgイオンが必要であることが分かり、DNA切断反応後にはDNAへ結合したままの分子が多くみられた。これは、SpCas9と比べ、タンパク質内部のDNA結合サイトの数多く、その結合数の違いがDNAとのより強固な結合を生むことが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、1年目に設置した高速AFMと既存の高速AFMの2台をフルに稼働し、SaCas9, FnCas9 および AsCas12a, LbCas12aのDNA切断における構造変化の直接観察に集中する。2年目の結果を受けて、より詳細な高速AFM基板の検討を行う。これまでは、DNAを固定するため、アミノシランを用いてマイカ基板表面を正電荷に修飾していたが、AFM基板がフラットであること、DNA切断ドメインが基板へ強く吸着してしまう事実を考慮し、異なる手法でAFM基板の修飾を試みる。最初に、すでに実績にある脂質二重膜を試す予定である。AFM基板表面を正電荷を含む脂質二重膜でカバーすることでCasタンパク質のAFM基板への吸着を防ぎ、かつ、負電荷をもつDNAを脂質二重膜上に吸着させる。これにより、Casタンパク質のDNA切断ドメインが自由に動くことのできる環境を作る。また、脂質二重膜の組成を検討することで、最適な実験条件を検討する。さらに、同研究所内の高分子を専門とする研究者との共同研究を進め、高分子化合物のAFM基板への適用を試みる。これは、DNAは基板に結合するが、Casタンパク質は吸着しない基板条件、または、AFM基板表面にナノメートルサイズの凹凸を作成し、DNAへ巻き付いたCasタンパク質のDNA切断ドメインがナノサイズの空間内で自由に動けるようにする。また、タンパク質側の改変も考え、AsCas12aタンパク質のDNA切断ドメインが基板へ吸着しないよう、システイン残基を導入し、マイカ上にタマビジンの2次元結晶を作り、ビオチン-アビジン結合による固定化も試みる。この場合、動くべきDNA切断ドメインはAFMの基板へは向かないため、その動きを阻害することはないと考えられる。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Macrocyclic peptide-based inhibition and imaging of hepatocyte growth factor.2019
Author(s)
Katsuya Sakai, Toby Passioura, Hiroki Sato, Kenichiro Ito, Hiroki Furuhashi, Masataka Umitsu, Junichi Takagi, Yukinari Kato, Hidefumi Mukai, Shota Warashina, Maki Zouda, Yasuyoshi Watanabe, Seiji Yano, Mikihiro Shibata, Hiroaki Suga*, and Kunio Matsumoto
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Journal Title
Nat. Chem. Biol.
Volume: 15
Pages: 598-606
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Crystal structure of Heliorhodopsin.2019
Author(s)
W. Shihoya, K. Inoue, M. Singh, M. Konno, S. Hososhima, K. Yamashita, K. Ikeda, A. Higuchi, S. Okazaki, T. Izume, M. Hashimoto, R. Mizutori, S. Tomida, Y. Yamauchi, R. Abe-Yoshizumi, K. Katayama, S. P.Tsunoda, M. Shibata, Y. Furutani, A. Pushkarev, O. Beja, T. Uchihashi, H. Kandori and O. Nureki
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Journal Title
Nature
Volume: 574
Pages: 132-136
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] Structure and biophysical characterization of the heliorhodopsin.2019
Author(s)
W. Shihoya, K. Inoue, M. Singh, M. Konno, S. Hososhima, K. Yamashita, K. Ikeda, A. Higuchi, S. Okazaki, T. Izume, M. Hashimoto, R. Mizutori, S. Tomida, Y. Yamauchi, R. Abe-Yoshizumi, K. Katayama, S. P.Tsunoda, M. Shibata, Y. Furutani, A. Pushkarev, O. Beja, T. Uchihashi, H. Kandori and O. Nureki
Organizer
57th日本生物物理学会年会
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