2018 Fiscal Year Annual Research Report
Study on THz Spectroscopy Using MEMS Chiral Metamaterial
Project/Area Number |
18H01843
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
菅 哲朗 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (30504815)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小西 邦昭 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (60543072)
神田 夏輝 東京大学, 物性研究所, 助教 (60631778)
岩瀬 英治 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (70436559)
高橋 英俊 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 助教 (90625485)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | キラルメタマテリアル / テラヘルツ |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度においては、シミュレーションによる有望なキラルメタマテリアル構造の探索、及び、MEMSファブリケーションによる有望構造の実現評価を進めた。 まず、前者に関しては、有限要素法により、キラルメタマテリアルのらせん変形の振幅を、これまで達成できた値の数倍の範囲広げて、シミュレーション計算を行った。評価指標として、円偏光二色性を用いて評価を進めた。本研究課題で進めているキラルメタマテリアルは、円錐状のらせん構造であるが、まず単純のために一様ならせん構造の計算を進め、先行文献と整合的な結果を得られた。この計算条件をベースに、実際のらせん構造に近い形状での評価を進め、これまで実験的に得られた値よりも、優れた円偏光二色性の応答値が得られることが可能であることが判明した。 この有望な構造は、従来よりも数倍の変形を要するため、実デバイスで変形構造を実現可能とするために、新たな変形駆動方法を考案し、試作を進めた。その方法として、これまで一端が自由端となっているらせん構造を、外力(静電力や空気圧)で駆動していたものを、らせんの中心を機械的に引っ張り上げる様式に変更した。そのためには、マイクロサイズでの局所ボンディングなどの技術開発が必要であったが、プロトタイプの構造において、実現可能性を一定程度確認できた。THz-TDSによる分光計測では、まだ歩留まりが悪く、所定の円偏光二色性は得られていないが、2019年度にプロセス改善と分光性能評価を行いたいと考えている。また、この引っ張りによる変形時に、らせん構造がどのような立体形状を形成するかについて、レーザ加工で試作したラージスケールモデルによる評価を行った。これにより、想定する変形範囲においては、これまでの変形の知見をそのまま適用可能であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に、強い円偏光との応答性を示す有望構造の探索ができたため、「(2)おおむね順調に進展している」とした。 円偏光二色性の指標として、今回は左右円偏光の透過率の差を用いて、まず計算による評価を進めた。先行文献により、赤外領域でほぼ理想的な片側円偏光のみを透過する、選択的円偏光透過性を示す構造は知られており、その計算を参考とした。この結果、MEMSで試作可能な薄膜構造でも、同様の理想的な片側円偏光透過性、すなわち強い円偏光二色性が得られることがわかり、実デバイス製作上の問題点がひとつ解消された。また、スパイラルメタマテリアルの変形量を、実現していた値よりも大きくして計算することにより、これまで得られていたものよりも高い透過率を実現できることが判明した。また、強い円偏光二色性応答も同時に達成できることも判明した。スパイラルメタマテリアルにおいて、これまで実デバイスでは10%程度の透過率しか得られていなかったため、透過率を高められる解が判明したことは応用上、非常に重要な達成である。また、実試作においても、大変形を得るための構造の試作可能性に一定の目途をつけることができた。本年度は歩留まりの関係で、スパイラルメタマテリアル単体での円偏光二色性の実験値を取得することはできなかったが、THz-TDSグループが高速かつ高感度な分光計を構築しており、全体的に見て順調な進展が見られたとの認識である。また、実際に大変形を行った際に、試作した構造が大変形をそもそも許容するかどうかは、試作前の懸念点であったが、この点についてもラージスケール評価によって解消されており、2019年度以降へのスムーズな移行が可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度においては、まず、強い円偏光二色性を示すメタマテリアル構造の実現に注力する予定である。2018年度の取り組みで、デバイスの歩留まり向上が主な課題であることが判明したので、そのキーとなるボンディング技術の改善に取り組み、課題解決を図る。具体的にはボンディングに利用するポリマー材料を、よりアスペクト比が高い構造を実現可能なものに変えて、接合歩留まりの向上をはかる。これにより、本年度前半で、一定のデバイス完成を目指す予定である。デバイス完成後は、THz-TDSグループと共同して、デバイス単体での円偏光二色性応答計測を進める予定である。 また、平行して、シミュレーションによる応答解析の高精度化を進める。2018年度の結果により、大変形した際のらせんの具体的な立体形状が判明したので、その形状をモデル化し、昨年度までよりも実際に近い条件での計算を進める予定である。現時点では有望構造の評価指標として円偏光二色性を用いているが、実際に分光応用をはかる場合には、高い強度を持つキラル電場を、次の評価指標として探索する必要がある。そこで、有望構造に一定の目途が付いたのちに、計算的な探索方法の指標を変え、より実際的なシミュレーションを進める予定である。 さらに、キラル構造の改良にも着手する予定である。2018年度にラージスケールモデルでの変形形状の再現の方法が整備されたので、この路線を敷衍して、本年度は理想的ならせん形状を実現可能な構造の探索を進めたいと考えている。スパイラル構造は平面切り紙を引っ張り上げて立体らせんを描いているので、ラージスケールモデルで切り紙構造を試作し、最適な立体形状を実現できるパターンを探索したい。
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Research Products
(3 results)