2019 Fiscal Year Annual Research Report
1分子液滴アレイの創製による「1分子制御化学」の確立
Project/Area Number |
18H01848
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
許 岩 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90593898)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 1分子液滴 / 1分子制御化学 / ナノ流体デバイス / Nano-in-Nano集積化 / 1分子操作 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、代表者が独自のナノ流体デバイス技術を用いて世界に先駆けて実現したフェムト・アトリットル(fL~aL)極微量流体の自在制御技術をさらに進化して、わずかaL体積を有する1分子液滴のアレイの創製により、通常反応濃度μM溶液中の膨大な量の分子を1分子単位で計測、操作、反応を可能にするという代表者が提唱してきた1分子制御化学を確立することである。 令和元年度(2019年度)は、ナノ流路内液-気界面物理化学の解明とアトリットル液滴アレイ作製手法の確立に取り組んだ。具体的には以下に述べる。 まずは、昨年度に確立した親水ナノアレイを有する疎水ナノ流路を用いて、アトリットル液滴を形成することを目的とした。この目的を達成するために、ナノ流路における液-気界面物理化学を解明しなければならない。そこで、圧力による水の導入方法や界面を安定化するための操作を検討しながら、形成した液-気界面を顕微鏡で観察し、ナノ流路における安定的な液-気界面を形成させる物理化学条件を明らかにした。最適化した物理化学条件の下、微小液滴のアレイを生成することができた。さらに生成した微小液滴の数や体積、体積分布について評価した。微小液滴の体積は主にaLオーダーで、かつ狭い分布を有することが分かった。これにより、提案の手法によるアトリットル液滴アレイの生成が実証できた。 また、水の導入方法は圧力導入以外に他にも様々なものが考えられるため、振動法や炭酸水導入法などの手法を用いてより良い気-液界面の構築法も探索したが、その結果、液滴生成の改善は見られなかった。 さらに、特別なナノ流路構造により形成する気-液または液-液界面を用いて、ラプラス圧力差原理及びエネルギー変化原理に基づいて、アトリットル液滴アレイ作製の新たな手法の開発にも挑戦した。より簡単な操作でより体積が均一なアトリットル液滴アレイを作製することに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和元年度(2019年度)は、研究実績の概要で述べたように、ナノ流路内液-気界面物理化学の解明と1分子液滴アレイ作製手法の確立ができた。当初の計画の通りに研究内容を実施したことにより、当初の目的はほぼ達成したと言える。また、より簡単な操作でより体積が均一なアトリットル液滴アレイを作製することを目指して、プラス圧力差原理とエネルギー変化原理を融合した新しい気-液、液-液界面の生成原理を提案して、新たに設計、作成した特別なナノ流路構造を用いて、均一なアトリットル液滴アレイの簡単作成法も確立できました。この結果は予想以上のものである。この方法は今後に取り組む予定の1分子液滴実証や1分子計測、1分子ダイナミクス解明に強力なツールになることが大変期待される。従って、令和元年度(2019年度)は当初計画以上に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、アトリットル液滴を用いて1分子計測により1分子液滴のコンセプトを実証することに取り組む。同時に、1分子反応を実現するためのアトリットル液滴の操作手法の創出を探索する。 理論上では、nM~μMの溶液をアトリットル(10の-18 乗リットル)の極微小液滴に分割すれば、個々の液滴に溶質分子が1分子のみ確率論的(stochastic)に閉じ込められる。研究代表者はこのようなアトリットル液滴を1分子液滴と定義した。令和元年度はアトリットル液滴アレイの作製手法を確立した。しかしながら、作製したアトリットル液滴アレイはコンセントの通りに1分子の溶質分子のみが閉じ込められるかについて証明する必要がある。そこで、令和2年度は、アトリットル液滴アレイを用いて1分子計測により1分子液滴のコンセプトを実証する。具体的には、まずは、代表的な蛍光色素をモデル分子とし、そのnM~μMの溶液をナノ流体デバイスに導入することでアトリットル液滴アレイを作製する。そして、レーザー誘起蛍光法を用いて作製したアトリットル液滴内の蛍光分子を検出する。さらに、蛍光計測解析により1分子の蛍光色素に由来する蛍光信号を確認することにより1分子液滴のコンセプトを実証する。 そして、令和3年度に取り組む予定の1分子反応への展開に向けて、令和2年度は上記の1分子液滴のコンセプトの実証を行いながら、アトリットル液滴の移動や融合などの操作手法を探索する。具体的には、まずは、独立操作可能な複合ナノ流路構造を設計して作製する。次に、複合ナノ流路構造における独立操作可能な安定的な液-気界面を形成させる物理化学条件を明らかにして、独立操作可能なアトリットル液滴配列の作製手法を確立する。
|