2019 Fiscal Year Annual Research Report
イオンの局在化による新たな分子自己組織化メカニズムの確立と光機能性ゲルへの応用
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18H01851
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 裕司 北海道大学, 工学研究院, 助教 (00649741)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 液晶 / 自己組織化 / パターン形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までは電極をフッ素系の高分子でコーティングすることで電気絶縁性を確保してきた。しかしながら、フッ素樹脂の表面で垂直に配向する液晶分子は極めて限られており、利用可能な試料に制限があった。それに対して、シリコーン樹脂を絶縁材料として利用することで、液晶分子の種類に依らずパターン形成を観察する方法を見出した。シリコーン樹脂のみでは分子配向を制御することは困難であるが、そこに紫外線オゾン洗浄による表面改質を導入した。改質された表面にシランカップリング材による配向処理を適用することよって、様々な分子で垂直配向を実現できるようになった。新しい手法で作成した試料セルに、イオンを混合した液晶材料を注入して実験を行った。電圧を印加することで、液晶分子の種類によらずパターン形成を観察できることが分かった。さらに、この絶縁膜の役割を明らかにするために、低周波数帯におけるインピーダンス測定を行った。数mHzからの数百kHzの範囲で測定を実施することによって、2つの特徴的なインピーダンスの変化があることを観察した。データを解析した結果、これらはバルクの液晶材料に起因するものと、シリコーン樹脂の表面に集まったイオン層の形成によるものであることが分かった。インピーダンスのデータから、液晶および表面に消費されている電圧の値を計算できることを見出した。その結果、試料セル全体には数十ボルトの電圧を与えているにも関わらず、バルクの液晶材料に印加されている電圧は古典的なフレデリクス転移のそれと同じであることが分かった。すなわち、本実験で得られる特異なパターン形成を支配する本質的なメカニズムはよく知られた電場による分子の再配向でることが証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で扱っているパターン形成が分子の種類に依存せずに起こることを実験的に実証することができた。紫外線オゾン洗浄による表面改質を用いることで、電気絶縁性を確保しつつ表面での配向を制御する方法を示した。これまでの研究では、液晶材料に印加されている電圧に関する情報が得られていなかったが、インピーダンス測定とそのデータの解析によって、液晶と界面に消費される電圧の大きさが明らかになり、パターン形成との関連性を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
実験に関しては主要な条件は明らかになったため、今後はその詳細について検証を行う。まず、異なるシリコーン樹脂を用いることで、電気抵抗率などの物性値を変化させた実験を行う。続いて、インピーダンス測定を通じて試料セル内部の電圧降下に関する情報が得られるため、試料の種類や温度などの条件を変化させたときの影響について調べる。さらに、これまでは同じ種類のイオン性物質を液晶材料に混合させていたが、液晶中におけるイオンの挙動はその種類にも影響を受けることが期待される。そのため、異なる種類のイオン性材料を混合させ、イオンのダイナミクスとパターン形成についての総合的な理解を得ることを目指す。
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