2018 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツ電磁波発生を利用した新しい時空間分光法の開発と物性研究への展開
Project/Area Number |
18H01858
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
貴田 徳明 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (30587069)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | テラヘルツ電磁波 / 有機強誘電体 / 光誘起相転移 / ドメイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、強誘電体(強磁性体)にフェムト秒レーザーを照射したときに放射されるテラヘルツ電磁波をプローブにすることにより、光誘起分極(磁化)ダイナミクスを抽出する新手法を確立することを主要な目的としている。 今年度、共鳴励起を行う場合など、レーザーの侵入長が短い試料や放射されるテラヘルツ光の領域に吸収がある試料にもテラヘルツ波放射分光法が適用できるよう、反射型のテラヘルツ放射測定系を新たに構築した。実際、構築した光学系を用いて、強相関系物質の一種である有機分子性結晶TTF-CAにおいて、フェムト秒レーザー照射によるテラヘルツ電磁波の検出に初めて成功した。詳細な偏光依存性を測定したところ、可視パルス光を照射により、イオン性-中性転移が起こり強誘電分極が消失することを見出した。すなわち、従来の二次非線形光学効果によるテラヘルツ放射現象でなく、光誘起相転移に由来した新しいテラヘルツ放射現象を観測した。また、その放射効率が、非線形光学効果による放射効率に比べ、約10倍大きいことを明らかにした。このように、光誘起相転移によって、高効率のテラヘルツ放射現象が現れることは、予期していなかった発見であった。 さらに、典型的なテラヘルツ放射素子であるZnTeを参照用試料として、その放射時間波形を理論的に求め、回折効果と検出系の周波数応答を定量的に評価し、テラヘルツ電磁波の絶対時間波形を決定する手法を確立した。この手法を用いて、TTF-CAから放射される電磁波の時間波形から、分極のダイナミクスを抽出することに成功した。 強誘電体や磁性体においては、サブピコの時間分解能でドメインを実空間で観察することが重要な課題である。今年度は、従来の透過配置ではなく反射配置で測定できる光学系を構築し、TTF-CAのドメイン構造の可視化に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標に掲げていた、汎用的な反射型の測定システムを用いて、TTF-CAにおいて、新しい放射原理(光誘起相転移)によるテラヘルツ放射現象を見出しただけでなく、TTF-CAから放射される電磁波の時間波形から、分極のサブピコ秒のダイナミクスを抽出することに成功した。さらに、汎用的な反射型イメージングシステムを構築し、TTF-CAの分極ドメインイメージングにも成功した。上記の成果は当初の計画以上のものと言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度構築した反射型測定系を用いて、他の有機強誘電体からのテラヘルツ電磁波放射現象を探索し、テラヘルツ電磁波をプローブにすることにより、光誘起分極(磁化)ダイナミクスを抽出する手法の実証研究を行う。
|
-
-
[Presentation] 位相安定中赤外パルス光による二次元モット絶縁体銅酸化物の強電場応答の観測2019
Author(s)
園直樹, 北尾貴之, 山川貴士, 森本剛史, 宮本辰也, 寺重翼, 伊藤利充, 岡邦彦, 笹川崇男, 貴田徳明, 岡本博
Organizer
日本物理学会第74回年次大会
-
-
-
-
-
[Presentation] 電荷秩序相転移近傍における分子性導体α-(ET)2I3のテラヘルツ電場応答の研究2018
Author(s)
山川大路, 大瀧貴史, 宮本辰也, 寺重翼, 森本剛史, 浅田和規, 高村直幹, 貴田徳明, 須田理行, 山本浩史, 森初果, 岡本博
Organizer
日本物理学会2018年秋季大会
-
-
-
-