2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Four-probe STM/AFM/STP and Atomic-scale Direct Observation of Electronic States, Atomic Structures and Electrical Transport
Project/Area Number |
18H01867
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山崎 詩郎 東京工業大学, 理学院, 助教 (70456200)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / 原子間力顕微鏡 / 走査トンネル電位計 / 原子スイッチ / 電気伝導 / 分子 / 表面 |
Outline of Annual Research Achievements |
走査トンネル顕微鏡(STM)は原子スケールで電子状態を可視化する顕微鏡である。一方、原子間力顕微鏡(AFM)は原子位置や分子骨格を可視化する顕微鏡である。さらに、走査トンネル電位計(STP)は試料にマクロな電流を流しながらナノスケールで電気伝導をマッピングする手法である。本研究計画ではこれらを組みあわせ、原子や分子や単原子層を対象に、それらの電子状態をSTMで結合状態をAFMで、さらに電気伝導状態をSTPで原子スケールで可視化することを最終目標とした。 【装置改造1:STMを、原子構造を見るAFM、電気伝導測定の固定電極STPへ改造】装置全体を超高真空状態にする重要なステップをクリアし、コントローラーをはじめとするすべての電極の接続を確認した。まずは室温において超高真空中でナノスケールの像を得ることに成功した。加熱によりSi基板を清浄化し、7x7表面の形成を確認するRHEEDの設置を完了させた。 【装置改造2:4探針STM(4P-STM)立上げと、4探針STP、4P-AFMへの改造】Omicron社製低温4探針STMの立ち上げを進めている。イオンポンプの交換を含む超高真空を得るのに必要な真空備品の整備を行い、4探針STMとSEMに関係する100本以上の配線を確認の上で接続し、電気伝導測定に必要な微小電流微小電圧計のセットアップを始めた。 【計画1-2:Ag超薄膜のステップ構造をSTP観察し、電気抵抗の主原因であることを確認する】TiO2ステップ基板によりVO2薄膜の電気伝導における金属絶縁体転移温度を操作した研究が行われた。国際学会3件を含む学会4件で発表され[IVC-22,応用物理学会,IWOX-XIII,SANKEN]、応用物理学の速報誌[論文Applied Physics Express]に速やかに受理された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【装置改造1:STMを、原子構造を見るAFM、電気伝導測定の固定電極STPへ改造】装置全体を超高真空状態にする重要なステップをクリアし、コントローラーをはじめとするすべての電極の接続を確認した。まずは室温において超高真空中でナノスケールの像を得ることに成功した。加熱によりSi基板を清浄化し、7x7表面の形成を確認するRHEEDの設置を完了させた。これにより、室温でのSTMの立ち上げが完了し、本研究計画に必要な80Kでの低温測定およびAFM化への下地が全て整った。 【装置改造2:4探針STM(4P-STM)立上げと、4探針STP、4P-AFMへの改造】Omicron社製低温4探針STMの立ち上げを進めている。受け入れ実験室の整備を徹底的に行い、装置の搬入を済ませた。イオンポンプの交換を含む超高真空を得るのに必要な真空備品の整備を行い、4探針STMとSEMに関係する100本以上の配線を確認の上で接続し、電気伝導測定に必要な微小電流微小電圧計のセットアップを始めた。この装置は本研究計画の後半の主力装置であり、その前準備が整ったといえる。 【計画1-2:Ag超薄膜のステップ構造をSTP観察し、電気抵抗の主原因であることを確認する】本研究計画に関係する共同研究が予想以上に広がった。TiO2ステップ基板によりVO2薄膜の電気伝導における金属絶縁体転移温度を操作した研究が行われた。国際学会3件を含む学会4件で発表され[IVC-22,応用物理学会,IWOX-XIII,SANKEN]、応用物理学の速報誌[論文Applied Physics Express]に速やかに受理された。この研究では明らかにならなかったステップ近傍での抵抗をマッピングすることこそが本研究計画の最終目標であり、その下地が整ったといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
【装置改造1:STMを、原子構造を見るAFM、電気伝導測定の固定電極STPへ改造】低温STMの立ち上げに引き続き、本研究計画に必要な原子構造評価のためにAFMコントローラーを導入する。さらに、電流を流すための固定電極2つをSTMヘッドに追加し固定電極STPへの改造を行う。 【計画1-1:Ag超薄膜をAFM観察し、3x3超周期の由来が原子構造にあることを確定する】r3-B/Si(111)表面超構造上のAg(111)超薄膜をSTMで観測すると3x3超周期が見られるが、その凹凸の由来が電子状態か原子構造か区別ができない。原子構造に敏感なAFMを用いて3x3超周期が原子構造由来であることを確定し、AFMの性能評価を行う。 【計画1-2:Ag超薄膜のステップ構造をSTP観察し、電気抵抗の主原因であることを確認する】4端子法は接触抵抗の影響なしに対象の抵抗が測れる方法として知られている。しかし、接触抵抗が1MΩ程度より大きいとノイズのため実用性を失う。そこで、接触抵抗が小さく鏡像準位の研究で経験深いAg(111)超薄膜を選択する。まずSTPを用いてテラス部での電位勾配がAgの電気抵抗と一致することを確かめる。次に、単原子ステップでの抵抗が10倍程度上昇することを確認する。研究代表者が、ドイツで立ち上げたSTPの結果と比較し性能評価を行う。 【装置改造2:4探針STM(4P-STM)立上げと、4探針STP、4P-AFMへの改造】4探針STMを立ち上げ、本研究計画に従ってSTMヘッドやSEMのメンテナンスや交換を数か月かけて行う。次に、時定数100msの電子回路(積分器)を追加して4探針STPへの改造を行う。最後に、原子構造評価のために1探針に加振と検出用の電極を2本追加しAFM化するとともにAFMコントローラーを導入する。
|