2019 Fiscal Year Annual Research Report
NanoSuit膜の物性解明と生体微粒子電子顕微鏡観察法の確立
Project/Area Number |
18H01869
|
Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
針山 孝彦 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 特任教授 (30165039)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 浩司 浜松医科大学, 医学部, 教務員 (50345831)
平川 聡史 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 特任准教授 (50419511)
高久 康春 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 特任研究員 (60378700)
河崎 秀陽 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 准教授 (90397381)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 電子顕微鏡 / ナノ薄膜 / NanoSuit法 / 生体微粒子 / 表面科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物学をはじめとした生命科学の研究の基本として、「観る」ことは必要不可欠である。現在、高倍率にしたときに最大の分解能をもつ機器は電子顕微鏡であり、広く研究に用いられている。しかし、電子顕微鏡は電子線を試料に照射することで高分解能を得ているために、筐体内を高真空に維持しなければならない。その為、走査型電子顕微鏡では試料は事前に乾燥・金属蒸着処理が不可欠であると考えられ、電子顕微鏡の生物試料観察が始まった1950年代から70年におよぶ間、世界中でこの真空環境下に入れるための固定・乾燥・金属蒸着処理法の改良が重ねられてきた。 我々は生物個体と組織において、生きたまま・濡れたままの走査型電子顕微鏡技術を確立し、一部の細胞でも観察可能とした。本研究では、この技術の基本であるNanoSuit膜の表面界面物性を解析し、そのデータに基づいてNanoSuit膜溶液と重合法を改変し、すべての細胞および生体微粒子(ウイルスやエクソソームなど)を観察可能にすることを目的として研究推進してきた。その中で、生物試料固定標本や、切片試料(プレパラート)などに対する導電性付与としてのNanoSuit膜の応用も可能であることを示すことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、生体試料に合わせた3種のNanoSuit膜溶液を調合し、生体試料に成膜できることを確認した。ヒト培養細胞(線維芽細胞など)にNanoSuit膜溶液を滴下し成膜させることで薄膜を形成させ生命維持できること、ヒト培養細胞にウイルスを播種し同時観察できることなどを確認した。また、生物試料が生得的にもつNanoSuit膜溶液に匹敵する化学物質をもつ場合、生きたまま無処理で電子顕微鏡観察できることを見つけ、A ‘NanoSuit’ successfully protects petals of cherry blossoms in high vacuum: examination of living plants in an FE-SEM (Takehara S. et al.) として Scientific Reports, (2018) 8:1685 DOI: 10.1038/s41598-018-19968-w に掲載した。 また、NanoSuit溶液を基板上に滴下しスピンコートした溶液状態のものにプラズマ照射することにより成膜させた膜において、プラズマ照射のエネルギーと照射時間によって厚みのコントロールが可能であることがわかり、導電性が付与されることも確認した。
|
Strategy for Future Research Activity |
NanoSuit膜の表面界面物性の解析Ⅰ 今年度は、昨年度のNanoSuit溶液の濃度による照射前の膜厚に対してプラズマ照射のエネルギーと照射時間についての解析結果に基づいて、それぞれの用途に対しての最適化の実験を進める。また、生体の表面に存在する物質およびその疑似物質(生体適合性高分子)を生物試料又は基板上に塗布し、電子線又はプラズマ照射によりNanoSuit膜を形成させ、生物試料又は基板の特性変化の解析を行うと共に、基材表面の成膜状態を確認し、表面機能の解明を行う。その為に、プラズマ照射のエネルギーと照射時間と、表面機能の指標として以下の電位や撥水性の評価を進める。 NanoSuit膜の表面界面物性の解析Ⅱ NanoSuit法によって生物試料表面に生成させたナノ薄膜によって生命維持される仕組みの解明として、生物試料および生物関連基材を用いて解析を進める。 a.プレパラートなどの表面保護としてのNanoSuit膜の機能解明のために、プレパラートガラス表面における導電性、撥水性などの物理学的膜の機能解明を実施し、生体試料におけるそれと比較する。 b.広範に使える生体微粒子の観察法確立のために、生体微粒子そのものの安定的観察法として、ウイルスを指標対象としてNanoSuit電子顕微鏡法で観察可能とする。そのために、ウイルスと細胞表面、ウイルスと人工基材との関連を明らかにする。
|