2018 Fiscal Year Annual Research Report
10nm空間制御による強相関金属酸化物ナノ相分離起源解明への実験的アプローチ
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18H01871
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
服部 梓 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (80464238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 真人 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (00748717)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ナノ電子相 / 強相関金属酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
強相関酸化物では、電子の集団的な振る舞い(電子相関)の結果できるナノ電子相の挙動が系全体の物性を決めている。ナノ電子相の最小サイズ(相転移の始まり)は10 nmスケールとみられる。申請者は、50-100 nmの空間制御により、強相関酸化物ではじめてナノ電子相の伝導特性の直接評価に成功し、ナノ電子相特性を明らかにしてきた。この独自法をさらに微小化させた1-10 nmの空間制御により、巨大な電子相応答を実験的に取得し、ナノ構造サイズ・形状と巨大応答性の相関を明らかにできる。 今年度は、金属-絶縁体転移を示す強相関酸化物ReNiO3(Re=Nd, Sm)を対象として、ナノ電子相サイズ以下の数十-100 nmサイズのナノ細線構造を作製し、その伝導特性を行った。線幅50 nmの単一NdNiO3ナノ細線は、階段状の抵抗変化を示した。これは薄膜等のマクロサイズ試料では示さない特性で、階段状の抵抗変化は細線中にナノ電子相が閉じ込められていること、すなわち電子相の閉じ込め効果に由来する。これは、ニッケル酸化物単一ナノ細線で初めてとなるマルチステップな抵抗変化、つまりナノ構造増感効果を観測したものである。ナノ電子相のサイズの定量的評価のため、ランダムレジスターネットワークを用いたシミュレーションを行ったところ、電子相の大きさは30-50 nmと見積もられた。以上のように、ニッケル酸化物でナノ相分離現象の存在を示し、ナノ電子相の伝導特性評価に初めて成功した。 また、2次元基板表面でのみ用いられてきた表面科学的手法を任意の方向に対して適応可能とし、あらゆる方向に存在する3次元表面に対し、原子層レベルで制御したナノ構造造形技術と立体表面構造の原子オーダー直接観察技術により、次世代の立体デバイス実現を可能とする技術要素の確立を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の課題として挙げていた、3次元全方向が10 nm以下の微小空間領域をもつ試料作製は、実現した。基本となる3次元ナノ立体構造では、x方向、y方向、およびz方向サイズは、細線幅、電極間距離、細線高さに相当する。強相関金属酸化物の機能発現の最小単位である数十nmサイズの電子相を閉じ込めるため、3次元すべての方向:[細線の線幅]×[電極間距離]×[細線高さ]で10 nm以下を可能とするナノデバイス構造の作製技術を構築した。3次元ナノ構造体の作製には、3次元立体パターン化基板を用いる独自の方法を用いた。この手法ではパターン深さが細線高さに相当するので、z方向のサイズ制御は容易である。一方、細線幅はパターン化した基板の側面を起点としてエピタキシャル成長を行うことで、リソグラフィーでは到達できない精度でサイズ制御を行う。そのため、表面に加え側面構造の観察と制御が必要である。そこで、2次元基板表面でのみ用いられてきた表面科学的手法を、側面やファセット斜面を含むすべての3次元表面に対し適応し、立体表面構造の原子オーダー直接観察技術により、これまで不可能であった側面方向の原子レベル積層構造の評価と、サイズ制御を達成した。 これにより単一NdNiO3ナノ細線での伝導特性評価(初年度の課題)も達成し、スケーリング物性評価は完了しつつある。また、電界効果トランジスタ構造での、キャリア注入による相転移挙動の評価では予想外の結果が出たが、動作挙動の解明が終わり、ナノサイズ試料での測定という次のステップに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
SmNiO3 (SNO)をチャネル、イオン液体をゲート絶縁体としたトランジスタでは、予想と反して静電的な動作ではなく、SNOの酸化還元反応に由来した多段階不揮発的な抵抗変調が確認された。精密制御に必要なパラメーターの同定を行うことで、電圧印加条件V(Vg, T, t)の選択により1桁から4桁に及ぶワイドレンジで不揮発的な抵抗変調を精密に制御することに成功した。さらに、チャネルサイズ低減により、抵抗変調効率が向上(ゲート電圧の低減と変調速度の上昇)することが分かった。これは反応点が10-100 nmの領域で、電圧の印加によりチャネル全体に伝達していくことに起因すると考えており、実証に向けての研究を進めている。 さらに、3次元全方向が10 nm以下の微小空間領域をもつ試料作製が達成できているので、単一ナノ電子相での純粋な相転移特性評価が可能となってきている。この試料を用いて、温度、磁場、電界効果(キャリア注入)によるナノ電子相の発生・消滅過程のダイナミクスの観察を行い、機能最少発現塊での純粋な物性を抽出して、学理の構築に取り組んでいく。さらに、エネルギー移動カソードルミネッセンス走査型電子顕微鏡を用いて、相転移過程でのナノ電子相構造の観察に取り組んでいく。
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[Journal Article] Strongly correlated perovskite lithium-ion shuttles2018
Author(s)
Y. Sun, M. Kotiuga, D. Lim, B. Narayanan, M. Cherukara, Z. Zhang, Y. Dong, R. Kou, C. Sun, Q. Lu, I. Waluyo, A. Hunt, H. Tanaka, A. N. Hattori, S. Gamage, Y. Abbate, V. G. Pol, H. Zhou, S. Sankaranarayanan, B. Yildiz, K. M. Rabe, S. Ramanathan
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Journal Title
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
Volume: 115
Pages: 9672-9677
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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