2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of new surface electron diffraction method and evaluation of electron density distribution
Project/Area Number |
18H01877
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
深谷 有喜 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (40370465)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 電子回折 / 表面 / 電子密度分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
物質表面の電子密度分布は、表面物性を決定する重要な因子であり、原子・分子との反応や化学結合に係る重要な担い手である。現在、表面敏感な回折法を用いれば、表面の原子配置を決定することは可能である。しかし、それと同時に表面の電子密度分布を決定する手法はこれまでのところ確立していない。本研究では、収束ビーム反射高速電子回折(収束ビームRHEED)装置を開発し、実験と解析の双方を高度化することにより、物質表面の原子配置と電子密度分布を実験的に同時に決定することを目的とする。 研究開始初年度である2018年度では、収束ビームRHEED装置の立ち上げ及び、電子密度分布導出のための解析法の構築を行った。 収束ビームRHEED装置の立ち上げにおいては、ビームを広角に発散収束可能なレンズを備えた高輝度電子銃(電子源LaB6)を開発し、立体角1°の収束ビームを形成可能であることを確認した。更に、計測システムを構築し、CCDカメラにより撮影した回折ディスクを2次元数値データとしてパソコンに取り込み、実験と計算の回折ディスク強度の直接比較を可能にした。 電子密度分布導出のための解析法の構築においては、収束ビームRHEEDの強度解析から電子密度分布の情報を導出するための理論構築を行い、動力学的回折理論に基づく計算コードに実装し、回折ディスクの強度計算を実施した。予備計算において電子密度分布導出の可能性を検討したところ、回折ディスク強度の低散乱角成分において、電子密度分布の変化に有意な差が生じることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、2018年度は収束ビーム反射高速電子回折装置専用の高輝度電子銃を完成させ、ビームの発散及び収束、電流量について所定の性能が得られていることを確認した。また、解析法の構築においても計算コードの構築が完了し、電子密度分布の検出のための指針が得られている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究開始2年目となる2019年度は、収束ビーム反射高速電子回折(収束ビームRHEED)装置の性能試験及び、既知の表面における原子配置と電子密度分布の同時決定の実証試験を実施する。 収束ビームRHEED装置の性能試験においては、実際の表面からの回折ディスク強度を解析することを目的に、試料表面を清浄化するための加熱機構を備えた試料ステージの構築及び、実際の表面からの回折ディスクの測定を実施する。また、収束ビームRHEEDチャンバー内で様々な元素を蒸着するための抵抗加熱蒸着源の整備も実施する。これにより、清浄表面及び超薄膜からの回折ディスクを観測可能な収束ビームRHEED装置の建設を完了する。 電子密度分布の同時決定の実証試験においては、実験装置の性能試験後、表面科学において標準的な試料であるSi(111)-7×7表面を用いて実証試験を開始する。この表面では、単位格子内に12個のアドアトムが存在し、それぞれがダングリングボンド(不対電子)を持つ。始めにこのダングリングボンドを検出することを目的に、実験装置及び解析法の高精度化を進める。具体的には、低視射角入射で回折ディスクを測定し、表面を構成する原子の位置と価電子の散乱振幅をフィッティングパラメータとして、最適な原子配置と電子密度分布を実験的に決定する。
|