2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of physical properties of lead-free perovskite semiconductors as high efficiency solar cell materials
Project/Area Number |
18H01888
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松石 清人 筑波大学, 数理物質系, 教授 (10202318)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ペロブスカイト半導体 / 太陽電池 / 光物性 / 高圧物性 / 構造物性 / 鉛フリー |
Outline of Annual Research Achievements |
高効率で安定したペロブスカイト太陽電池を作製するために、まず成膜法としてアンチソルベント法を吟味し、良好なデバイス特性を引き出すための最適な貧溶媒について知見を得た。さらに、成膜で使用する前駆体溶液へのCuCl2添加によって結晶性の向上と粒界サイズの増大並びにデバイス性能の飛躍的向上を実現した。これらの知見を基に、Sn系ペロブスカイト太陽電池で問題となっていたSn2+の酸化を抑制し、かつ膜質を向上させるためにN2H5Cl添加を考案し、電力変換効率とデバイス安定性の両方の向上に成功した。さらに、2官能基を有する5-AVAIの添加によって0.25 cm2の面積を有するSn系ペロブスカイト太陽電池において電力変換効率7.0 %を実現し、空気安定性が向上し、連続光照射下で100時間にわたって初期性能を維持させることに成功した。 Ge系ペロブスカイト半導体AGeI3(A: CH3NH3 or Cs)を作製し、4 Kから室温までの温度領域で光物性と構造物性並びにAサイトの置換による物性の変化を明らかにした。発光測定では低温域で励起子発光を観測し、CH3NH3GeI3ではメチルアミン分子の配向性により結晶の対称性が温度変化と共に徐々に変化した。両試料で構造相転移を確認した。 良質で空気中でも安定なダブルペロブスカイト半導体Cs2AgInCl6の単結晶を水熱合成法で作製し、その光学特性を明らかにした。高圧下の光吸収測定では、圧力誘起構造変化に伴う特異な電子状態の変化を観測した。 有機と無機の複合効果を解明するために、(CH3NH3)PbBr3とCsPbBr3を作製し、有機カチオンが光物性に及ぼす影響について主に温度依存性と励起光強度依存性の観点から調べた。前者ではレーザー照射により100 Kと150 Kにおいて電子格子相互作用による不可逆な発光の変化を観測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Sn系ペロブスカイト太陽電池においては、共添加エンジニアリングを活用した添加剤を提案し、Sn系ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた研究に貢献する重要で貴重な知見を得ることができた。しかしながら、その変換効率は7%程度であり、さらなる変換効率の向上を目指すとともに、その基礎物性においては不明な点も多く、引き続き、構造物性と併せて光物性を明らかにしていく必要がある。 ダブルペロブスカイト半導体の単結晶作製に概ね成功し、高圧下の光物性の測定にも着手できた。高圧物性についてはまだ予備的な結果しか得られていないが、興味深い電子状態の変化が見られたので、圧力誘起構造相転移の知見も含めて今後詳しく調べていく。 有機と無機の複合効果を解明するために、有機カチオンの効果を発光の励起スペクトル測定や低温でのラマン散乱測定などによってさらに詳しく調べていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)高効率の太陽電池材料としての構造物性及び光・電子物性の解明: 太陽電池材料としてのペロブスカイト半導体においてペロブスカイト構造特有の格子変形に係わる構造物性とそれに伴う電子格子相互作用に起因した光・電子物性を実験と第一原理計算の両方から明らかにする。具体的には、APbBr3(A: Rb, K, Cs)の単結晶を作製し、高温での構造安定性、フォノン寿命とRashbaスピン軌道相互作用に起因したキャリア寿命を偏光ラマン散乱法とDFT計算の両方から明らかにする。それらの知見を基に高効率ペロブスカイト太陽電池材料を戦略的に探索して結晶安定性と高効率化への材料設計の指針を導き出す。 (2)有機と無機の複合効果の解明: 協同的複合効果と量子的複合効果を解明するために、圧力印加によって有機部と無機部の相互作用を増強させ、ペロブスカイト半導体における有機分子の隠れた役割と可能性について検討する。特に、圧力印加による構造相転移、それに伴う電子構造(バンド構造)の変化に着目する。 (3)鉛フリーの高変換効率太陽電池のための物質探索: 4族元素(Ge, Sn)を用いたペロブスカイト半導体の単結晶作製とその物性評価、並びに構造及び化学的安定をさらに検証して。Sn系においては、逆型平面p-i-n構造の高品質薄膜太陽電池をco-additive技術等を活用して作製し、さらなる変換効率の向上を目指す(国立研究開発法人物質・材料研究機構太陽光発電材料グループのAshraful Islam博士の協力のもとで実施)。また、金属カチオンに3族元素と5族元素を同時に用いたダブルペロブスカイト半導体の単結晶をいくつかの異なる金属カチオンの組み合わせにおいて作製し、物性解明を行う。さらに、ダブルペロブスカイト半導体を用いた太陽電池を作製し、太陽電池材料としての可能性を検討する。
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Research Products
(11 results)