2018 Fiscal Year Annual Research Report
Study on initial growth mechanism of InN under high density radial irradiation for high carrier mobility channel
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18H01890
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
近藤 博基 名古屋大学, 低温プラズマ科学研究センター, 准教授 (50345930)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 修 名古屋大学, 低温プラズマ科学研究センター, 特任教授 (30588695)
堤 隆嘉 名古屋大学, 低温プラズマ科学研究センター, 助教 (50756137)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プラズマ / InN / ラジカル / その場観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
高移動度InNチャネルの低温成長技術の確立に資する、高密度ラジカル照射下におけるInNおよび高In組成InGaN(In組成:50%以上)の初期成長機構の解明を目的に、ラジカル照射下での結晶成長その場観察手法の構築に取り組んだ。ラジカル照射には申請者らが開発した高密度ラジカル源(HDRS)を用い、従来の誘導結合型プラズマ源(ICP)と比較して10倍以上高密度な窒素・水素ラジカル照射下での特異な結晶成長の初期過程を調査した。ラジカル照射表面の観察には、走査トンネル顕微鏡(STM)や、ガス雰囲気下(100Pa以下)でも原子像観察可能な反応科学超高圧走査透過電子顕微鏡、角度分解X線光電子分光法(ARXPS)での表面組成の深さ方向解析を行った。ARXPSでは、最大エントロピー法による深さ方向分析システムを構築し、プラズマ照射表面の原子層レベルでの組成分析を行った。これによりArイオンとClラジカルの交互照射を行ったGaN表面において、Arイオン照射後のGa金属の表面組成がArイオンの加速エネルギーに依存して変化することを明らかにした。一方、Ga金属の表面組成に関わらず、それに続くClラジカル照射後でのClの表面組成は一定であることを見出した。このことからClラジカルが試料表面のGa金属を選択的に揮発脱離させることにより、GaN表面の状態が一定となるものと考えられる。さらにサイクルプロセスにおけるエッチング深さが、Arイオン照射によるGa金属リッチ層の形成量に強く依存することがわかった。一方、STMやXPSと、多様なプラズマ照射システムとの間を、真空状態を保ったままで試料搬送可能な真空シャトルシステムについて、より高真空状態で試料搬送可能なシャトル接続ポートチャンバを開発し、表面の清浄性をより高質かつ長時間に保つことを可能とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プラズマ照射表面の表面組成の深さ方向解析を原子分解能で可能とするために、角度分解X線光電子分光法(ARXPS)での表面組成の深さ方向解析において最大エントロピー法(MEM)による解析手法を構築した。最尤法の一種であるMEMでは、確率分布の推定によって未知のデータを算出する必要があるため、データフィッティングの結果を人為的に判定することが必要とされる。これによって一程度の外れ値には影響されにくく、ばらつきが大きかったり、有限のデータ点数に対しても精密にフィッティングできる利点がある一方、適正なデータフィッティングが成されているかの判定が難しい。そこで、比較的シンプルな組成分布が想定される試料や、モデル分布の設定により、フィッティングプログラムと判定基準を確立した。その結果、ArイオンとClラジカルを交互照射した表面の組成分布について、原子レベルでの詳細な深さ方向解析ができるシステムを実現した。一方、多様なプラズマ照射システムと、STMやXPSなどの表面分析システムを直接に接続すること無く、真空搬送シャトルを介して間接的に接続し、プラズマ照射後の試料を大気曝露すること無く真空一貫で相互搬送可能なシャトルシステムについて、清浄表面の維持の高度化を図った。具体的には、同シャトルを用いた搬送ルーティンと、各経由ポートの真空度および真空の質、それらの回復能力を調査し、真空度に依存する清浄表面維持可能時間を鑑みて、搬送能力の高度化を検討した。その結果、真空搬送シャトルを接続するポートチャンバの真空度とその回復速度が律速要因であることが明らかとなり、可能な限り小型のポートチャンバの設計・作成と、チタンサブリメーションポンプの増設によって搬送能力の向上を図った。プラズマ照射表面の実観察については、やや条件振りが限定的に留まったものの、より高精度で多様なその場表面分析システムが確立された。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に確立した、角度分解X線光電子分光法(ARXPS)と最大エントロピー法(MEM)による深さ方向組成解析手法、清浄表面維持機能が向上した真空搬送シャトルシステムを駆使して、これまでに行った初期成長過程における窒素ラジカル照射条件に対する依存性の検討を継続する一方、同初期成長表面における水素ラジカル照射との複合的効果の解明にも取り組む。より具体的には、GaNテンプレート上でのInNおよびInGaN(InN組成:50%以上)の成長における、Inの表面拡散と偏析機構のSTM/STSによる原子レベルでを解明する。特に高密度な窒素ラジカル照射がInの表面拡散や偏析に及ぼす効果を明らかにする。一方、初年においては、名古屋大学が誇る「反応科学超高圧走査透過電子顕微鏡」を駆使した、水素・酸素ラジカル照射下でのin-situ TEM観察システムも確立している。初年度では初期実験としてグラフェンなどナノ炭素材料に対する水素・酸素ラジカル照射の効果を検証し、酸素ラジカル照射によってグラフェンシートが原子層単位で除去される様子のその場観察に成功している。これを踏まえ、最終年度の目標であるInN およびInGaN内の転移構造変化の動的観察などに向け、予備実験も推進する。
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Research Products
(15 results)