2019 Fiscal Year Annual Research Report
放射線被ばく事故に対応したDNA損傷解析による被ばく線量評価法の開発と実用化
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18H01919
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
清水 喜久雄 大阪大学, 放射線科学基盤機構附属ラジオアイソトープ総合センター, 准教授 (20162696)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 文信 大阪大学, 工学研究科, 教授 (40332746)
松尾 陽一郎 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (90568883)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 緊急被ばく / デジタルPCR / DNA損傷 / 被ばく線量 |
Outline of Annual Research Achievements |
デジタルPCR法とはDNA一分子についてのPCR反応を同時に数万回の反応を行い、増幅の有無を検出する装置で絶対定量が可能で、標準曲線の必要性を排除するシンプルな単一分子計数法である。原理的には1分子のDNAの違いを検出可能である。本研究にあっては、段階希釈したサンプルについて分析を行い、1分子レベルでの高感度の分析が可能となる。 被ばく患者からの血液を採取し本提案の方法を用いれば、数時間で結果が得られ、素早い対応が可能になると考えられる。ウシの全血にガンマ線を照射した後にDNAを分離・精製しリアルタイムPCRにより線量の評価を行った。 デジタルPCRによる0 Gy の時の未損傷鋳型DNA分子数を基準値とした場合の、 吸収線量に伴う未損傷鋳型DNA分子数を求めた。また、比較のためのリアルタイムPCRでも同様の実験を行った。デジタルPCRおよび従来法であるリアルタイムPCRともに吸収線量が増加するにしたがって, 増幅可能なDNAが減少することが示された。一方で、吸収線量の増加に伴う未損傷鋳型DNAの減少の傾きは、リアルタイムPCRとデジタルPCRとでは異なった。これは両手法のポリメラーゼ連鎖反応の効率が異なるためである可能性がある(DNA合成効率の違い)。次年度以降、これらの原因を解明するとともに、より低い線量(mGy以下の)線量域での評価を行う計画である。 ウシ血液に対してガンマ線を照射しリアルタイムPCRで解析を行った。吸収線量の増加に伴って、ウシ血液中のDNAが損傷する傾向があることが示された。1Gyのガンマ線を照射したサンプルについては未照射サンプルに対して有意な差が検知された。緊急被ばく領域での血液サンプルを対象とした本手法の判定が可能であることが結果から示唆された。一方で、低い線量(mGy以下の)線量域での評価のためには誤差の低減が課題である。課題の解決方法として、DNA精製の最適化、サンプルのDNA濃度の最適化が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来我々が用いていたリアルタイムPCR法よりも進化したデジタルPCR法によるDNA損傷評価の道筋をつけることができた。また、哺乳動物の血液から効率よくDNAを抽出し測定するためのプライマーの設計も終えることができた。 これらの成果により、次年度からヒト血液にγ線、中性子線、重粒子線などの放射線を照射して緊急被ばくに対応できるシステムを構築する準備を終えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト血液にγ線、中性子線、重粒子線などの放射線を照射して緊急被ばくに対応できるシステムを構築するために、できるだけ多くの試料を作成し、解析を進める。また汎用性のあるシステムを構築するために自動化の検討も行う。 なお、現在放射線医学総合研究所、大阪大学産業科学研究所などの照射施設が照射実験の自粛を行っており測定試料の作成が遅れる可能がある。その場合、放射線と同様の効果が見込める突然変異剤の使用を考えることになる。
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Research Products
(4 results)