2018 Fiscal Year Annual Research Report
冷却イオン分光によるイオンチャンネルのイオン選択性に対する水和効果の解明
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18H01938
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石内 俊一 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (40338257)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イオンチャンネル / ペプチド / 質量分析 / レーザー分光法 / 赤外分光法 / 冷却イオン分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)異性体分離した赤外スペクトルの測定法の確立 複数の異性体が混在している系に対して、異性体ごとの赤外スペクトルを測定する方法である IR-IR dip分光法を開発した。この方法では2台の波長可変赤外レーザーを用い、特定の異性体の振動遷移に波長を固定した赤外レーザー(プローブレーザー)によって生じるフラグメントイオンをモニターしながら、それよりも時間的に前に照射したもう1台の赤外レーザー(ポンプレーザー)を波長掃引する。ポンプレーザーがモニターしている異性体を振動励起すると、プローブレーザーによって生成するフラグメントイオン量が減少するため、特定の異性体の赤外スペクトルをフラグメント量の減少として測定することができる。これを実現するために、ポンプレーザー用の波長可変赤外レーザーを励起するYAGレーザーを高ビーム品質のものに変更し、レーザー出力の向上を図った。開発したIR-IR dip分光法をカリウムイオンチャンネルのKcsAの選択フィルター部分ペプチドGYGのカリウムおよびナトリウムイオン錯体に適用し、それぞれ3種の異性体を分離した赤外スペクトルの測定に成功した。 2)水和クラスターの生成効率の改善 水和クラスターの生成量を増やすには、親イオン(水和する前のイオン)の量を増やす必要がある。そのために、エレクトロスプレーで生成したイオンを真空中に導入するガラスキャピラリー出口部分に、空間的に広がるイオンを捕集するための装置であるイオンファネルを設置することとし、イオンファネルの設計・製作、およびそれを既存装置に導入するための改造を行った。 3)水和クラスターの測定 GYGペプチドのカリウムおよびナトリウムイオン錯体の水和クラスターを生成し、サイズ選別した赤外スペクトルの測定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画では「研究実績の概要」の項目1)、2)が本年度の実施項目であったが、これらが順調に進捗したため、項目3)の水和クラスターの測定に着手することができた。また、項目1)に関しては、開発した方法を用いてGYGペプチドのカリウムおよびナトリウムイオン錯体の異性体分離した赤外スペクトルの測定に成功し、成果を英国王立化学会のPhysical Chemistry and Chemical Physics誌で発表した。この成果を示すイラストは内表紙にも採用され、高く評価されている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)波長可変赤外レーザーの分解能の改善 昨年度、出力向上を図った波長可変赤外レーザーの波長分解能を向上するために、励起YAGレーザーにインジェクションシーダーを導入する。 2)GYGペプチドのカリウムおよびナトリウムイオン錯体の水和クラスターの赤外分光とその解析 より大きなサイズの水和クラスターおよび重水クラスターの赤外スペクトルを測定し、量子化学計算を用いて、それらのスペクトルを解析する。これにより、カリウムイオン錯体とナトリウムイオン錯体の構造の違いを明らかにする。
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Research Products
(8 results)