2018 Fiscal Year Annual Research Report
孤立系および結晶の統一的電子励起状態・ダイナミクス精密第一原理計算手法の開発
Project/Area Number |
18H01939
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
大野 かおる 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (40185343)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 第一原理計算プログラム / 全電子混合基底法 / GW近似 / Bethe-Salpeter方程式 / XPS / 光吸収エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で開発している全電子混合基底法プログラムTOMBOを用いてXPSスペクトルのone-shot GW計算を行い、シリコン、ダイヤモンド、SiC、BN、AlP結晶の内殻電子束縛エネルギーを求めた。(1) 一般化プラズモンモデルを使用した結果、(2) 数値ω積分を使った結果、(3) 数値ω積分とさらに自己遮蔽補正(SSC)を行った結果を実験値と比較し、SSCの計算結果は実験値と1 eV程度の差に収まっており、十分な計算精度が得られることを明らかにした(J. Phys.: Cond. Mat.)。
次に、やはりTOMBOのGW法および自己無撞着GWΓ法を1価正イオンに適用し、Bethe-Salpeter方程式(BSE)を用いないGW(Γ)法により原子・分子の光吸収エネルギーを求めた。(1) 通常のone-shot GW近似とBSEを組み合わせた方法、(2) BSEを用いないone-shot GW法、(3) MCHF法/MRDCI法、(4) BSEを用いない自己無撞着LGWΓ法(Lは線形化、Γはバーテックスを表す)で求めた結果を実験値と比較したところ、BSEを用いない自己無撞着LGWΓ法の精度はMCHF法/MRDCI法の精度と同程度かそれを上回り、0.1 eVの誤差で実験値を再現することが分かった(Phys. Rev. A, Rapid Comm.)。
さらに、立方調和関数を用いてスピン軌道相互作用(SOI)と超微細相互作用(HFI)をTOMBOにインプリメントすることに成功し、SOIはAnnal. Phys.誌に、HFIはJ. Phys. B誌に論文投稿した。さらにNO2分子に対して時間依存GW法を適用し、光解離シミュレーションに成功した(論文投稿予定)。この他、TOMBOに反復対角化法としてBlock Davidson法を取り入れ、SCFループの高速化を実現することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数値原子軌道と平面波を使う我々の全電子混合基底プログラムTOMBOは多体摂動論(Green関数法)のGW近似により分子と結晶に対して統一的に光電子スペクトル全電子計算が行える。
本研究の目的は「自己無撞着にバーテックス補正を取り入れる世界初のGWΓ+Bethe-Salpeter方程式の方法により、MRDCI法と同精度で分子と結晶の光電子・光吸収スペクトルの統一的全電子計算をTOMBOで行い、ダイナミクスにも適用し、divide conquer法を導入して計算量をO(N)に減らす。さらに、我々が最近提案した拡張準粒子理論に基づいて任意の電子励起状態とそのダイナミクスの計算を可能とし、Hyperfine,XPS,NMR,Auger,2光子吸収スペクトル、スピン軌道相互作用(SOI)、電子線照射シミュレーション等の精密計算を行い、プログラム普及を図る」である。
この内、初年度はTOMBOを用いてHyperfine,XPS,SOIの計算に成功し、さらにΓ点のみでのdiamond(炭素64原子系)のGW計算に成功した(計算時間は北大のGrand Chariotを4ノード使用して40分程度であった)。また、TOMBOにBlock Davidson法を取り入れてSCFループの高速化を実現し、複数の分子の構造最適化と分子振動解析を試験するとともに、NO2分子の光解離反応に対して代表者の提案する時間依存GW法を適用し、光解離シミュレーションにも成功した(論文投稿予定)。さらに、本研究ではTOMBOをO(N) 化するという挑戦的な目標を掲げ、平面波基底をガウス基底に変換するコードを組み、完成に近づいている。平面波をガウス基底のような局在した基底の線型結合で表すことは従来不可能と考えられてきたが、代表者は数学的な平面波の完備性からこれが可能であることを示し、実際にコードを組んで実証しようとしている。
|
Strategy for Future Research Activity |
TOMBOのBethe-Salpeter方程式(BSE)の部分は現在、結晶には対応していないので、まず、Γ点のみの結晶計算を可能とするようなプログラムの拡張を行う。これによって、Γ点のみのGW + BSE結晶計算が可能となり、不純物や表面などを含むいろいろな系の光吸収スペクトル計算を可能とする。
また、未解決のGW近似における自己エネルギーのエネルギー依存性の問題に取り組み、TOMBOを用いて one-shot GW近似や自己無撞着GW近似および線形化された自己無撞着GW近似(LGW法)に対してその近似の精度や線形化の効果を議論し、学術論文として投稿する予定である。さらに、XPSで内殻に孔が空いた初期状態に、代表者の拡張準粒子理論を適用し、TOMBOのGW+BSE 計算により光吸収の逆過程としての発光過程を扱い、価電子準位からこの内殻準位に電子が落ちる発光過程(X-ray emission spectroscopy, XES)の計算の定式化を行い、複数の分子に適用し、XES精密第一原理計算を行う。この研究においては、現在D2(社会人Drコース)の青木翼君が全面的に研究協力してくれている。次年度内に計算結果をまとめて論文投稿する予定である。
代表者は、TOMBOをO(N) 化するという挑戦的な目標を掲げているが、平面波基底をガウス基底に変換するプログラムを完成させる。平面波をガウス基底のような局在した基底の線型結合で表すことができれば従来の常識を破る画期的なことである。そればかりでなく、このコードが完成すれば、平面波を用いたあらゆる第一原理計算プログラムを分割統治法により O(N) 化することが可能になるので、応用面でも画期的なことである。この研究においては、現在D2の磯部智遥君が全面的に研究協力してくれているので、力を合わせて是非ともこのプログラムを完成させたいと考えている。
|
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] TOMBO Tutorial: Lecture II2018
Author(s)
Kaoru Ohno and Ryoji Sahara
Organizer
Asian Consortium on Computational Materials Science (ACCMS) - Thema Meeting on Multiscale Modeling of Materials for Sustainable Development (Hanoi, Vietnam)
Int'l Joint Research / Invited
-
-
-
-
-
-
-