2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18H01941
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹腰 清乃理 京都大学, 理学研究科, 教授 (10206964)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 泰斗 京都大学, 理学研究科, 助教 (00631384)
武田 和行 京都大学, 理学研究科, 准教授 (20379308)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 四極子核共鳴 / 核磁気共鳴 / 電場勾配 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度でNQRプローブとNQR分光計を作成し、塩素酸カリウムなどのNQRが既に行われている試料を対象として、プローブや分光計の調整・最適化を行い、多核のNQR実験としてスピンエコー二重共鳴実験を行い、アイデアの妥当性を確認した。またNQRに基づく局所構造情報の取得という目標にむけて多次元NQR相関測定の実現を目指して検討を行った。相関には磁化の移動が必要であり、NMRではINEPTシーケンスや交差分極法といった方法が多数提案されている。量子化軸が磁場方向で規定されるNMRと異なり、NQRでは各々のスピンの四極子テンソルの主軸方向が量子化軸になっていることが大きな違いを生み、NMRで用いられているパルス法や理論をそのまま適用することは出来ない。従って、多次元相関NQRの実現に向けて、NQRコヒーレンスのパルス制御法の研究(理論・シミュレーション)を行っている。また、これまでの準備測定の結果、多くの試料で室温では相関~磁化の移動に必要な時間だけNQRの磁化コヒーレンスが保たれないことがわかってきた。そこで、試料温度を液体窒素を用いて低温に保つことが可能なように作成したNQRプローブを改良する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・予定通りにNQRプローブとNQR分光計を作成し、標準試料を用いて最適化した。 ・NQRの古典的な実験手法~非観測核へのラジオ波磁場照射の有無による観測核のスピンエコーの強度変化をモニターする手法(Spin-Echo Double Resonance (SEDOR) 法)に、Carr-Purcell Meiboom-Gill(CPMG)法を組み合わせた新しい二重共鳴実験を行った。試料は、塩素酸カリウム(KClO3)で、35Clを観測核、39Kを非観測核とした測定を行い、35Cl-39Kの異種核間双極子相互作用の情報を取得することが可能であることを示した。 ・二重共鳴の結果、KClO3は3以上の多スピン系をなしていると考えられ、さらに従来の高磁場下でのNMR解析理論は適用が難しいことが示された。従って、磁場のないNQRの磁化コヒーレンスの時間推進に異種核双極子相互作用がどのように影響を与えるかの、理論構築の必要性が示された。 ・また、ラジオ波照射下のNQR磁化の章動(nutation)運動を二重共鳴条件で観測する二重共鳴 nutation NQR法を考案し、異種核間のそれぞれの電場勾配の相対配向情報取得の方法となり得ることを示した。以上は磁気共鳴の研究会で発表した。 ・これまで試料として用いてきたKClO3では測定対象の35Cl-39Kペアが空間的に孤立しておらず、2スピン系とみなせないために、理論式の適用が難しい。そこで、2スピン系とみなせる試料を探索し、ピリジン・一塩化ヨウ素をターゲットとして選定した。 ・ピリジン・一塩化ヨウ素における35Clと127IのNQR測定を試み、個別に35Clと127IのNQR信号を確認することができた。また、室温と液体窒素温度におけるデコヒーレンス時間T2を測定した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.異種核ペアの二重共鳴実験において、非観測核へのラジオ波照射の有無によるスペクトル変化から四極子テンソルの相対配向に関する情報の取得を得るための理論の構築と測定を行う。本件には、ラジオ波の照射方向が重要になることが、これまでの解析で明らかなために、直交交差コイルを用いたプローブの開発を行う。
2.その結晶構造から分子内の35Cl-127Iを2スピン系としてみなせるピリジン・一塩化ヨウ素(PyICl)は、異種核相関NQRの方法論を研究する試料として都合が良い。さらに、測定ターゲットの35Cl-127Iペアは、最近注目されているハロゲン結合(I-Cl)を形成しており、NQRから得られる四極子相互作用~核の周りの電場勾配の情報はハロゲン結合の研究に役立つと考えられる。
3.これまでの測定で、多くのNQR対象試料では室温で異種核NQR相関実験を行うために十分長い横緩和時間(T2)を有していないものが多いことが示されている。そこで、液体窒素などの冷媒を用いた低温実験ができるようなプローブが必要であり、作成を行う。すでに簡易的な低温化実験を行い、液体窒素温度では室温に比べて横緩和時間が10倍程度長くなることを確認している。
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Research Products
(1 results)