2019 Fiscal Year Annual Research Report
有機材料による多励起子生成反応の新展開:新規材料と逐次反応の実験的探索
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18H01957
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
羽會部 卓 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70418698)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多励起子生成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はテトラセンアルカンチオールで修飾した金ナノクラスター(144原子体)の合成に成功した。本系では特に、金表面上で近接する二分子間での配向を制御するため、アルキル鎖の異なるテトラセンジスルフィド体の合成を行った。一方の鎖長をアルキル鎖nをn = 11で固定し、もう一方の鎖長をn = 5, 7, 9, 11と変化させた。このテトラセンジスルフィド体を用いて金表面上でのテトラセン分子の配向制御が実現でき、質量分析や粉末X線解析の結果からの結果から金144原子のナノクラスター上にテトラセンが60個修飾されていることが明らかとなった。吸収スペクトル測定ではテトラセンと金ナノクラスターの吸収体が明確に観測され、蛍光スペクトル測定ではテトラセンモノマーと比較して大幅な蛍光消光が確認された。フェムト秒過渡吸収測定によりアルキル鎖の組み合わせが(11, 7)のときに一重項分裂の収率が90%(最大値: 100%)で進行していることが分かった。一方、(11, 11)の時ではニ分子間の相互作用が強く逆反応の三重項ー三重項消滅(TTA)が相対的に起こりやすくなることが分かった。(11, 5)および(11, 9)でも(11, 7)には及ばない結果となった。次に、独立した三重項励起子生成を確認するため、一重項酸素発生の評価を行ったところ、(11, 7)では量子収率が約160%に達し、(11, 11)の22%と比べて大きな違いが明らかとなった。以上、テトラセンアルカンチオールで修飾した金ナノクラスターの合成・構造制御だけでなく、高効率な一重項分裂による励起三重項状態の生成が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テトラセンアルカンチオール修飾した金ナノクラスターにおいて極めて高効率な一重項分裂の観測に成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は配向性の異なるテトラセン二量体を合成し、テトラセン系の一重項分裂でのSF効率の最適化を図る予定である。
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