2019 Fiscal Year Annual Research Report
π電子イオニクス:電荷を有するπ電子系の合成と自在な集合化
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18H01968
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
前田 大光 立命館大学, 生命科学部, 教授 (80388115)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | π電子系 / イオンペア / 集合体 / 半導体物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、新たなπ電子系イオンを創製し、その集合化および電子機能材料・デバイスへの展開、さらに物性や集合体形態に関わる学理の解明に挑戦した。本年度は、電荷を有するπ電子系の合成および集合化を中心に検討した。とくに、拡張π電子系であるポルフィリンのAuIII錯体が+1価のπ電子系カチオンとしてふるまうことを基盤とし、対としてπ電子系-アニオン会合体の導入によるイオンペア集合体の制御に成功した(Chem. Asian J. 2020)。また、アニオン会合能を有するπ電子系のアニオン会合挙動および次元制御型集合体への展開を行い、π拡張や芳香環エチニル基の導入によるイオンペア集合体(液晶)の構造制御(J. Org. Chem. 2019,Chem. Eur. J. 2020)や、芳香環多置換誘導体における光誘起電子移動による蛍光スイッチング(溶媒極性・アニオン会合)(Chem. Commun. 2019)、アニオン会合による分子構造の変化にともなう二光子吸収特性の制御(Chem. Eur. J. 2020)を報告した。光応答性アニオンとπ電子系の会合体における、光応答挙動(超分子ゲルの崩壊)も見出した(Chem. Commun. 2019)。一方、π電子系であるジピリン誘導体の2次元配列(STM観察)(J. Porphyrins Phthalocyanines 2020)や金属錯化による光励起状態(三重項状態)の検証も行った(Chem. Eur. J. 2019)。さらに、アニオン応答性π電子系のアニオン会合挙動に関する理論的考察(RSC Adv. 2020)に関する内容を共同研究で実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
π電子系イオンからなる集合体の構成ユニットの形成手法として、π電子系の金属錯化による電荷付与とイオン会合体を形成するπ電子系の合成を中心に、多様な骨格の構築および周辺置換基の導入を実現した。アニオン応答性π電子系の光物性(光誘起電子移動や二光子吸収)の詳細を解明し、イオンペア集合体における物性発現の基礎となる研究が実施できた。また、安定性や誘導体展開に優れたポルフィリンAu(III)錯体を基盤とした新たな集合体形態の形成に成功した。このように、π電子イオニクスを展開する事項を発表論文としてまとめ、公表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
電荷を付与したπ電子系骨格の設計・合成、周辺修飾・誘導体の合成、電荷付与手法の開拓・検証、集合化に関わる最適化、さらに得られた集合体(材料)の物性・機能性への展開を継続して実施する。
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