2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Selective Oxidation Reactions Using Iodine Catalysis
Project/Area Number |
18H01973
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
ウヤヌク ムハメット 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (20452188)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 合成化学 / 有機化学 / ヨウ素 / 酸化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、貴金属や重金属の代替元素としてヨウ素の酸化・還元能を活かし、デザイン型ヨウ素化合物を有機分子触媒に用いる非金属系環境低負荷型酸化的カップリング反応及び不斉ヨウ素触媒の開発を目的とした。本年度は、特に次亜ヨウ素酸塩触媒システムにおいて以下の成果が得られた。 1.高活性新規次亜ヨウ素酸塩触媒システムの開発:これまでに、触媒量のキラル第四級アンモニウムヨウ化物と酸化剤に過酸化水素あるいはアルキルペルオキシドを用い、酸化的カップリング反応を開発している。触媒活性種は次亜ヨウ素酸アニオンであり、その対カチオンである第四級アンモニウムイオン近傍の反応場が不斉を誘起したり反応を促進する。本年度は、酸化剤としてOxoneを用いるキラル第四級アンモニウム次亜ヨウ素酸塩触媒による低活性アレノール類のエナンチオ選択的酸化的脱芳香族化反応(スピロラクトン化)に成功した。尚、アレノール類の脱芳香族的スピロ環化は、上記のようにこれまでに、分子内求核種としてカルボキシル基を有する酸化的スピロラクトン化反応が数多く報告されていたが、分子内求核種にヒドロキシ基やアミド基を有する酸化的スピロエーテル化およびスピロアミノ化反応は報告例が少なく、特にその化学選択性に課題が残されていた。我々は、本I+/Oxone触媒を用い、酸化的スピロエーテル化及びスピロアミノ化反応の開発にも成功した。 2.キノンメチドの新規生成法の開発:キノンメチドは医薬品や機能性材料の合成中間体としての有用性が期待されるものの、不安定ゆえに合成・取扱が困難で十分に活用できていなかった。本研究では、キノンメチドを、次亜ヨウ素酸塩触媒を用いて温和な条件下(常温・常圧)で効率よく合成する方法を開発した。また、不安定なキノンメチドを単離することなく、他の反応と組み合わせたワンポットによる多様な物質変換を可能にした(タンデム型反応)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.高活性新規次亜ヨウ素酸塩/Oxone触媒システムの開発:本触媒システムでは、不安定な触媒活性種としてIOHが、安定なドーマント種としてI2が生成することを見出した。これにより従来のI+/H2O2やI+/ROOH触媒システムの大きな課題であった触媒失活等の非生産的経路は大幅に抑制できた。これ故、本I+/oxone触媒システムをさらに展開でき、従来法では達成困難な化学選択的酸化的スピロエーテル化及びスピロアミノ化反応にも成功した。また、本I+/oxone触媒システムでは、酸性条件下での水素結合相互作用またはin situで生成された触媒種であるI2とのハロゲン結合相互作用を介したヨウ化物の還元的脱離の加速により、これまでのI+/ (H2O2またはROOH) 触媒システムと比較して高活性の触媒作用を示すことも見出した。実際には、触媒量は最大0.1 mol%まで削減することができ、最高触媒回転数(TON)と回転頻度(TOF h-1)はそれぞれ900と450を達成した。本反応において、Oxoneの酸性度は反応性の向上だけでなく、化学選択性の向上にも関与していることが示唆された。 2. キノンメチドの新規生成法の開発:古くからフェノールを原料に重金属酸化剤を用いてキノンメチドを生成する方法が知られているが、重金属の毒性の問題や反応の選択性が低いなど、合成法としては適用しづらく、実用的な生成法の開発が求められていた。本研究では、高活性な次亜ヨウ素酸塩触媒を開発し、フェノールを原料に温和な条件下(常温・常圧)でキノンメチドの高効率的生成法を開発した。本法は、従来法では困難とされていた様々なワンポットによるタンデム型反応に容易に応用できるため様々な合成的応用が可能であり、新薬の開発や医農薬品製造プロセスに利用できると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究体制は、2020年度は2019年度と同じ人数を予定している。2020年度は、研究を維持し発展的に推進する。具体的には、 1.高活性次亜ヨウ素酸塩触媒システムの構築及びエナンチオ選択的酸化的分子間カップリング反応の開発:これまでに未達成であった分子間のエナンチオ選択的炭素-窒素カップリング反応、具体的にはカルボニルのαアジド化反応を開発する。また、本触媒の活性化及び化学選択性のさらなる向上を目指し、触媒及び反応機構をより詳細に検討し、触媒の対カチオン及び反応場(添加剤効果)の精密設計を行う。 2.超原子価ヨウ素(III or V)触媒を用いる(エナンチオ選択的)酸化反応を開発:これまでに、キラル超原子価ヨウ素(III)触媒を設計し、フェノールのエナンチオ選択的酸化的脱芳香族化反応、特に分子内炭素ー酸素カップリング反応を開発した。今後は、エナンチオ選択的ビアリールカップリング、即ち分子間炭素ー炭素カップリング反応を開発する。また、また、高活性超原子価ヨウ素(V)触媒であるIBSを用い、これまでに達成できなかったアルコールの常温での高化学選択的酸化反応及び酸化的エステル化反応の開発を目指す。
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Research Products
(34 results)