2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of highly efficient non-precious metal catalysts by low-spin design of iron and other 3d metals.
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18H01980
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永島 英夫 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (50159076)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田原 淳士 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (50713145)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 3d金属 / 強配位子場配位子 / 錯体設計 / 触媒反応 / 反応機構 / ヒドロシリル化 / カルボニル化合物 / 還元反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会が求める低環境負荷均一系触媒反応の実現には、活性中心を貴金属から鉄および3d金属へシフトすることが必要である。本研究では、「鉄および3d金属種錯体から発生する触媒活性種を、幾何構造と配位子の選択で低スピン状態に制御する」という考え方のもとに、イソシアニド等の強配位子場配位子を有する3d金属錯体の設計と効率的な貴金属代替反応を実現する。3年間を通じて、①高い触媒活性を示す低スピン鉄、コバルト、マンガン錯体の開発、②ヒドロシランを用いる反応を中心に反応開発、③DFT計算による反応機構解明、④開発した触媒反応を用いる機能性分子開発、の4段階で研究を実施する。本年度は、①~③として、鉄およびコバルトのカルボニル錯体、イソシアニド錯体の開発をおこない、その合成、解析、素反応過程の解明を通じて、強配位子場配位子を用いる低スピン錯体設計の妥当性を検証した。まず、新規鉄、コバルトイソシアニド錯体がアルケンのヒドロシリル化に高い活性を示すことを明らかにし、これらから発生する触媒活性種が鉄およびコバルトカルボン酸塩とイソシアニドの混合物のヒドロシラン還元で発生する手法を確立した。これにさらに2つのSi-H基の近接による反応加速効果を利用することにより、コバルトカルボン酸塩とイソシアニドからなる触媒がニトリルを効率的に還元し、ジシリルアミンへ変換することを明らかにした。一方、イソシアニド配位子を持つ鉄ジシラメタラサイクル錯体が多置換アルケンの水素化に高い活性を示す成果をもとに、カルボニル基を強配位子場配位子とするルテニウムジシラメタラサイクル錯体が従来報告されていた鉄触媒を含む既報の触媒よりも高い活性で、ケトン、アルデヒドのヒドロシリル化を達成することを示し、その反応が非古典的なSi-H結合活性化を経由していることを計算科学的に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の成果は3つの論文発表に集約される。まず、アルケンのヒドロシリル化に高い活性を示す新規鉄、コバルトイソシアニド錯体の開発に成功し、これらから発生する触媒活性種が鉄およびコバルトカルボン酸塩とイソシアニドの混合物のヒドロシラン還元で発生する手法を確立した。この成果はアメリカ化学会のOrganometallics誌に発表したが、掲載にあたり、Editor’s Choice に選出されている。これをさらに展開し、コバルトカルボン酸塩とイソシアニドからなる触媒がニトリルを効率的に還元し、ジシリルアミンへ変換することを明らかにした成果はOrganic Letters誌に掲載されている。これらが実験化学的成果であるのに対し、実験と計算双方を活用した非古典的な結合活性化を含む新反応機構でのカルボニル化合物のヒドロシラン還元の成果はChemical Communications誌に発表している。これら2つもEditor, Reviewerの評価は高い。本研究に関連した招待講演も国内、国際学会で実施しており、鉄および3d金属種錯体から発生する触媒活性種を、幾何構造と強配位子場配位子の選択で低スピン状態に制御する」という考え方と効率的な貴金属代替反応の実現という、本研究グループの研究コンセプトは世界的に受け入れられているだけでなく、実際に工業的に重要なアルケンのヒドロシリル化反応や、有機合成化学上で重要なカルボニル化合物の還元を、低環境負荷で安価なヒドロシランを用いて超高活性な触媒で実現する、という実用性のある成果を創出している。以上より、今年度の成果は当初計画よりはるかに進展している、と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
「鉄および3d金属種錯体から発生する触媒活性種を、幾何構造と強配位子場配位子の選択で低スピン状態に制御する」という考え方と、得られた成果を効率的な貴金属代替反応へと展開する手法について、本年度、その有効性の実証に成功した。今後の方策としては、とくに、計算科学と実験化学の連携による反応機構解析と触媒設計へのフィードバックが低スピン3d金属触媒活性種では有効であることは明らかである。残る研究期間では、金属を鉄、コバルトからマンガンやニッケルのような3d金属に展開する必要がある。同時に、機構解明を含む3d金属触媒開発は、通常の手法では達成できない貴金属触媒設計へもつながることから、元素の特性を広い視野でとらえ、十分に活かした触媒設計への展開が課題である。実験化学的には、これらをもとに、多様な貴金属触媒代替有機・高分子合成反応に展開するとともに、3d金属触媒でしかできない反応や、極めて触媒効率が高い3d金属触媒は機能性有機・高分子材料の開発にも貢献すると考えられることから、今後の研究の中で検討していく。
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Research Products
(14 results)