2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Efficient Organic Synthesis Utilizing C-C Bond Cleavage Reactions
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18H01981
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
木村 正成 長崎大学, 工学研究科, 教授 (10274622)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 炭素-炭素結合切断反応 / パラジウム / ニッケル / ニッケル |
Outline of Annual Research Achievements |
高選択的炭素骨格構築法は精密有機合成化学の発展において最も重要な手法である。申請者は、ジケテンのメチレン炭素がニッケル触媒作用によって切断反応を受け、対称フェニル酢酸を与える新形式の分子骨格変換を既に開発している。本課題では、ジケテン以外のメチレンラクトン類も同様な炭素-炭素二重結合が切断反応を受けるかどうかを検証する。また、同条件下でメチレンカーボネートが脱炭酸を起こさずに、二酸化炭素の分子内転位を経由したβ-ケト酸合成を開発する。更にニッケル触媒作用によるGrob型転位反応を介した1,3-ジオール骨格の切断を伴う分子骨格変換の開発を行う。例えば、4,6-シクロヘプタジエニル-1,3-ジオールをニッケル触媒と反応すると、Grob型転位反応と酸化的環化反応の連続的反応により、置換ベンゼンが得られると予想される。また、4-シクロヘキセン-1,3-ジオールを原料に用いた高効率プロスタグランジン(PG)の合成に着手する。本研究では、炭素-炭素結合切断反応を基軸とした新しい炭素骨格変換反応の開発を行うことを目的としている。 特にパラジウムやニッケルの遷移金属と有機ホウ素、有機アルミニウム、有機亜鉛等のアルキルメタロイドによる相乗効果を活用した高選択的多成分連結反応を目指した。入手容易な基質に対し、より簡便で新しい触媒活性種の形成と高効率合成反応の開発を目的としている。新規性が高く、かつ生成物の有用性が極めて高い反応の開発を目指し、高選択的な炭素骨格構築を検討した。今年度は主に3-ヒドロキシ-4-ペンテン酸を基質とした炭素-炭素結合切断形成の多連続反応を探求した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビニル環状カーボネートやβ-ヒドロキシペンテン酸に対し、ニッケル触媒を作用させると、炭素-炭素結合が切断する新規反応を見出した。メタラサイクルのβ-炭素が脱離反応を受け、アルデヒドとジエンまたは二酸化炭素とジエン類への官能基変換を可能にする点が特徴である。本研究では、この現象を基盤として、不飽和炭化水素存在下におけるメタラサイクル中間体を経由した分子変換反応の開発を行った。金属触媒及び有機亜鉛存在下、β-ヒドロキシペンテン酸と不飽和炭化水素を用いた炭素-炭素結合切断に続く炭素骨格再構築化を検討した。例えば、アクロレインとエステルによるアルドール反応で容易に調製できる3-ヒドロキシ-4-ペンテン酸を共役ジエンと二酸化炭素の1:1の等価体と見なすことができる。一般に、置換共役ジエンを高立体選択的に調製することは困難であり、異性体の混合物として単離されるが、共役ジエンを基質に用いる合成反応では単離精製に労力を必要とする。本研究において、3-ヒドロキシ-4-ペンテン酸をE-体共役ジエンと二酸化炭素の1:1の混合等価体とみなすことができる。共役ジエンを精製単離することなく、そのまま分子変換反応へ適用し、新たな炭素-炭素骨格形成反応へ応用する事ができた。本研究内容を現在、速報誌として投稿している最中である。
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Strategy for Future Research Activity |
既に1,3-プロパンジオールをSc(OTf)3触媒と反応すると、アルケンとアルデヒドを与えるβ-炭素脱離反応を見出している。本反応は形式的なGrob型転位反応であり、1,3-ジオール骨格の炭素-炭素切断反応として興味深い。次年度では、Sc(OTf)3だけでなく、第一遷移金属触媒を用いた反応へ展開し、新たな骨格形成を開拓する。とりわけ、ニッケル触媒作用によるGrob型転位反応が可能になれば、様々な1,3-ジオール骨格を母核とした炭素骨格再構築化が期待できる。例えば、4,6-シクロヘプタジエニル-1,3-ジオールをニッケル触媒存在下、Grob転位反応と酸化的環化反応の連続的反応により、クレゾール骨格が一挙に構築できると予想される。本素反応が確立された場合は、4-シクロヘキセン-1,3-ジオールを原料に用いた高効率プロスタグランジン(PG)の新規合成開発に挑戦したい。従来、PG合成には複雑な多段階反応が必要であったが、本研究ではオキサメタラサイクル中間体に対してアルキン挿入と有機亜鉛の高立体選択的な付加反応を多段階的に利用することで、PGF2αの全合成をわずか4段階で行うことが可能になる。また、得られたPGF2αが更に炭素骨格切断反応を受けることで、新たな薬理活性を示す有用物質探索が展開できると思われる。今後は、効率的反応を開発するだけでなく創薬に直接結びつく新技術開発を推進する。
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