2019 Fiscal Year Annual Research Report
Fabrication of thin films composed of coordination-polymer/semiconductor heterojunction and their functions controlled by electron/hole transfer
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18H01988
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
栗原 正人 山形大学, 理学部, 教授 (50292826)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石崎 学 山形大学, 理学部, 講師 (60610334)
八木 政行 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00282971)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 配位高分子 / 電気化学触媒 / 炭素電極 / ナノ微粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの研究成果を踏まえ、本年度では次のような計画に基づき研究を遂行した。水分子を利用した高効率エネルギー変換・蓄積デバイスの開発の基礎となるOER触媒は、「低過電圧駆動」・「高耐久」・「安価・豊富な遷移金属元素の組み合わせ」が必須である。そこで、安価・豊富な3d遷移金属元素を任意の比率・原子レベルで均一に取り込むことができ、且つ、そのナノ結晶を分散液として扱うことができるプルシアンブルー類似体(PBA)に着目した。OER触媒本来の性能を系統的に評価するため、金属フリーのカーボンペーパーを電極として用いた。二元系金属元素からなるPBAナノ結晶を作製した。独自に開発したフェロシアン酸イオン表面修飾法により、このナノ結晶を水に分散させ、カーボンペーパー上にキャストする簡便な方法でPBAナノ結晶を担持した。カーボンペーパー上に担持したFeCo-PBAナノ結晶を、高温加熱処理でFeCo酸化物とした後、OER触媒能を評価した。高い触媒能が知られるIrO2と比較すると、同程度の触媒過電圧を示し、その成果は論文掲載済みである。一方で、この高温加熱処理は、カーボンペーパーにダメージを与えること、触媒作製においてエネルギー消費量が大きいこと、3d遷移金属の中で、Coは希少金属・高価であることから、二元系金属元素としてFeNi-PBAを選択し、研究を継続した。同様な方法でFeNi-PBAナノ結晶の水分散液を作製し、カーボンペーパー上に担持したFeNi-PBAナノ結晶をKOH水溶液中で加水分解し、水酸化物ナノ微粒子へと変化させた。 (i) FeNi-PBAナノ結晶のFe/Ni金属組成比を系統的に制御、(ii)カーボンペーパー上への担持量を単位面積(cm2)当たりマイクログラムスケールで系統的に制御することで、そのOER触媒能を評価し、その成果は論文投稿する段階になっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究計画は、概ね順調に進んでおり、下記に示したように、期待した以上の成果に結びついている。研究実績で示したように、独自の方法により作製した二元系金属元素からなるPBAナノ結晶水分散液を用いて、カーボンペーパー上に担持したFeNi-PBAナノ結晶は、アルカリ水溶液中で、加水分解し、特定のFe/Ni金属組成比(Fe:Ni = 1:1.5 mole/mole)で、FeNi layered-double-hydroxide (LDH) ナノ結晶に変化することを、電子顕微鏡観察、XRD、IR、XPS測定結果から明らかにした。また、FeNi LDH ナノ結晶がどのようにカーボンペーパー上に分布しているか?その特徴を電子顕微鏡観察で明らかにできた。そのカーボンペーパー上のFeNi LDH ナノ結晶は、これまで様々な電極上・様々な金属組成で報告された莫大な数のOER触媒と比較した結果、世界最高性能の機能を示していると結論付けられた。カーボンペーパー上への担持量を単位面積(cm2)当たりマイクログラムスケールで制御することで、最も小さな Tafel slopeである15.1 mV dec-1、過電圧300 mVにおいて、最も高いturnover frequency である1.58 s-1 と最も大きな mass activity である10600 A g-1を記録した。しかも、そのFe/Ni金属組成比(Fe:Ni = 1:1.5 mole/mole)は、二元系金属元素触媒では最もFeリッチな群に属し、資源問題解決にも寄与する。この成果は、単にOER過電圧のみをパラメーターとしていた従来の触媒評価の問題点を明確に示す意義などもある。現在、高IFの論文投稿段階になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況で示したように、論文投稿後、その審査意見に従って、研究成果の補強が適宜、必要になるため、最終年度では、昨年度の成果である世界最高性能OER触媒の発見と評価について、論文報告・学会報告を通じて総括していく。また、FeNi-PBAナノ結晶を前駆体として用いたカーボンペーパー電極上でのOER触媒の更なる性能の向上(記録更新)を狙うため、その指針としては、(i) FeNi LDH ナノ結晶の結晶サイズを小さくする技術、(ii)カーボンペーパー上に、均一・高分散でFeNi LDH ナノ結晶を担持する方法を開発することが挙げられる。(i)(ii)に基づいて、研究を推進する計画であるが、具体的には、(i)では、既報を参考にして、FeNi-PBAナノ結晶の合成法を改良する。(ii)では、低温・揮発性有機溶剤に分散する有機分子で表面保護されたFeNi-PBAナノ結晶を作製し、カーボンペーパー電極上での親和性を向上させる。追加の研究項目として、コアシェル型(結晶内部と表面の金属組成の異なる)ナノ結晶について、そのOER触媒能を評価する。世界最高性能のOER触媒を得るには、結晶内部でなく、結晶表面の活性サイトの金属元素組成が重要であることが分かってきた。PBAのコアシェル型ナノ結晶は、独自の方法を既に論文報告済みであり、その方法を活用して系統的な表面金属組成の制御を行い、OER触媒機能への効果を調べる。ここでは、Feリッチな組成でありながら、OER触媒性能の向上を、錯体化学(配位高分子結晶)の視点から設計していく。
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Research Products
(9 results)