2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of interlocking mechanism between motion of confined molecules and physical properties of framework in clathrates
Project/Area Number |
18H01997
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大場 正昭 九州大学, 理学研究院, 教授 (00284480)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 多孔性金属錯体 / 包接体 / 磁性 / 発光特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、多孔性金属錯体を基盤とする分子包接体の内部空間に束縛した分子の挙動と骨格構造に組み込んだ磁性および発光性との動的連動の達成、およびこの機構の解明を目指す。本年度は、Hofmann 型多孔性金属錯体 {Fe(pz)[Pt(CN)4]} (1) を基軸化合物として、以下の ①-③ を推進した。 ① アルカン分子包接体内のアルカンの挙動と磁気特性の相関の解明:1 のアルカン類包接体の構造と磁気特性を系統的に研究し、プロパン包接体が降温過程において4段階の磁化率の変化を示し、さらに昇温過程では2段階で磁化率が増加した後に減少する異常な挙動を見出した。磁化率の減少の割合は、温度変化速度に依存し、遅いほど大きく減少し、速いと4段階の磁化率の増加を示すことから、この磁気挙動が磁気的な非平衡状態を反映していることが示唆された。 ② I2 の細孔内挙動の解明及び磁気特性との相関:化合物 1 の Pt を Pd に部分的に置換した固溶体で、I2 包接体の磁気挙動が大きく変化することを見出した。Pt : Pd = 1 : 0 では、スピン転移温度が 400 K まで上昇しヒステリシス幅は30 K だが、Pt : Pd = 0 : 1 では、スピン転移温度は 290 K だがヒステリシス幅が 97 K まで増加する。固溶体にした場合は、Pt と I2 が強く相互作用するため、Pt の性質が優先的に表れるが、Pt : Pd = 0.05 : 0.95 など Pt が 1 % 以下の場合は、スピン転移温度の上昇とヒステリシス幅の増大が同時に現れることが確認された。 ③ 分子包接体内の束縛分子の挙動と発光特性の相関:多孔性金属錯体 {Zn[ReN(CN)4]} (2) が Re(V) 由来の発光を示し、包接する溶媒分子による構造変化に応じて顕著な発光強度と発光波長の変化を示すことを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画の各項目は、ほぼ予定通りに進展している。 ① では、プロパン包接体において非常にユニークな磁気挙動を見出すことができた。これは想定以上の進捗である。この磁気挙動は、プロパン分子の細孔内における挙動が大きく関与すると予想され、本課題の核心に迫る成果につながることが期待される。 ② では、骨格内の相互作用点を変えた固溶体において、細孔内における I2 の挙動を制限して、全体の磁気特性を制御することに成功した。これは想定通りの進捗であり、今後、包接分子を変えて、これらの包接体の構造・磁気特性および骨格内のゲスト分子の運動との連動をの系統的研究が可能となる。 ③ では、発光性多孔性配位高分子の開発に成功し、包接分子に応じた構造変化と発光特性変化を見出した。これは想定通りの進捗であり、今後は in situ 測定による動的構造変化と発光挙動の変化の相関の検討が可能になる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を基盤として以下の3項目を引き続き推進し、分子包接体内の束縛分子の状態変化を物理的変数として捉え、束縛分子の温度・密度制御による自由度の制御を通して、骨格の磁性および発光特性との動的連動を達成する。また、いずれの成果も論文投稿に至っていないので、今年度中に論文発表を目指す。 ① アルカン分子包接体内のアルカンの挙動と磁気特性の相関の解明:プロパンの細孔内挙動をガス雰囲気下 IR および Raman スペクトルの in situ 同時測定、および固体NMRにより追跡し、プロパンの相転移と分子包接体の磁気特性との相関を in situ DSC 測定により考察する。さらに、充填するプロパン分子の密度を制御して、密度と状態変化および磁気特性変化の相関を検討する。また、重水素化したプロパンについても同様の実験を行い、比較する。 ② I2 の細孔内挙動の解明及び磁気特性との相関:Br2 および二原子ハロゲン間化合物 IBr を用いて、これらの包接体の構造・磁気特性および骨格内のゲスト分子の運動を調べて、I2 と比較することで、ゲスト分子の細孔内挙動の解明と制御を目指す。 ③ 分子包接体内の束縛分子の挙動と発光特性の相関:分子の吸着に伴う動的な構造と発光挙動の変化をガス雰囲気下 in situ X線回折-発光スペクトル同時測定により評価する。また、吸着と時間分解発光スペクトル測定の同期による吸着量(細孔内の分子密度)と発光特性の相関、ならびに温度依存測定によるゲスト分子の集合状態と発光特性の相関を検討する。
|