2018 Fiscal Year Annual Research Report
画像診断から動画診断へ ~非線形ラマン散乱による超解像ライブ細胞診の開発~
Project/Area Number |
18H02000
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
加納 英明 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (70334240)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 雅之 筑波大学, 医学医療系, 教授 (00198582)
猪子 誠人 愛知県がんセンター(研究所), がん予防研究分野, 主任研究員 (30393127)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞診 / ラマン / 非線形光学 / 分子イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、穿刺吸引細胞診によって臨床的確定診断が行われる症例が増加しており、ガンの新しい確定診断法としての細胞診が益々注目を集めている。しかしながら、従来の細胞診では染色工程が必須であるため、死細胞の染色像という細胞の「スナップショット」による画像診断しか行えない。これに対して、患者から採取したばかりの細胞は新鮮な生細胞であるため、細胞を特徴付ける分子情報が全て揃っている。そこで本研究では、非線形光学過程を基盤技術として用い、オルガネラを高い空間分解能でそのままライブで可視化する”動画診断”を可能とする、まったく新しい細胞診の開発を目的として研究を行っている。 初年度である本年度は、新規細胞診を実現するための顕微イメージング装置の開発を行った。近赤外域のコヒーレントラマン信号を効率よく取得するためには、近赤外域にて高感度かつ低雑音のディテクタを導入する必要がある。そこで、本測定に最適な光検出器(CCDカメラ)を選定・導入した。この新規CCDカメラを用いて、新規細胞診装置のためのプロトタイプ機(非線形ラマン分光イメージング装置)立ち上げを行った。新規CCDカメラに搭載されたADコンバータが従来のものより格段に高速化していたため、ソフトウェアの開発も並行して進めた。その結果、本CCDカメラの導入により世界最速の超広帯域マルチプレックスcoherent anti-Stokes Raman scattering (CARS)分光顕微鏡を立ち上げることができた。本装置を用いて培養生細胞の測定も行った。細胞は研究分担者から提供頂いた肺腺がん由来の細胞(A549株)を用いた。培養中の細胞を直ぐに装置にマウントして測定したところ、一点当たりの露光時間1.8 msにて信号対雑音比のよい分光イメージングを行うことができた。特に、この細胞の特徴である不飽和度の高い脂質の蓄積も明らかに出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度導入した新規CCDカメラにより、世界最速の超広帯域マルチプレックスcoherent anti-Stokes Raman scattering (CARS)分光顕微鏡を立ち上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、開発した本装置を適宜改良しながら、がん細胞の分子指紋の探索を行う。これまでの知見から、ガン細胞はエクソソーム(exosome)を分泌すること、核所見が異常である(細胞核内の分子分布が正常細胞と顕著に異なる)こと、細胞内の活性酸素の濃度が高く、過酸化脂質が多いこと、細胞内でポリアミンが過剰に生産されていること、細胞内温度が高い(乳腺がんの場合2度程度も高温)ことなど、様々な特徴を示すことが知られている。これらの情報を手がかりに、がん細胞など疾患に由来する分光学的指標(spectroscopic signiture)の探索を行う。膨大な時空間分光情報を解析するため、多変量解析の一つである繰り返し最小二乗法・多変量スペクトル分離法(Multivariate Curve Resolution–Alternating Least Squares; MCR-ALS)等のケモメトリックな手法を適宜取り入れながら、システマティックに測定・解析を進める。
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Research Products
(20 results)