2020 Fiscal Year Annual Research Report
Cost-Effective Polyfluoroalkylation Employing Bulk Chemical
Project/Area Number |
18H02014
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
菊嶌 孝太郎 立命館大学, 薬学部, 助教 (40609880)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | トリフルオロビニル / フルオロアルキル化 / ヒドロキシ化 / ポリフルオロアレーン / 芳香族求核置換反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
工業的に入手容易な含フッ素有機化合物であるテトラフルオロエチレン、トリフルオロ酢酸塩、およびポリフルオロアレーンを用いた分子変化反応に取り組んだ。 テトラフルオロエチレンに対して金属マグネシウムおよび塩化亜鉛を1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-オン溶媒中で反応させたところ、テトラフルオロエチレンの炭素―フッ素結合の活性化が進行して、一つのフッ素原子が亜鉛で置換されたトリフルオロビニル亜鉛を高収率で与えた。パラジウム触媒や銅触媒による種々のカップリング反応の出発物質として用いることが可能であり、トリフルオロスチレン誘導体やトリフルオロアクリル酸エステルなど、モノマーとして有用な含フッ素有機合物を高収率で与えた。 トリフルオロ酢酸カリウムおよびジアリールヨードニウム塩とを銀触媒存在下で反応させたところ、トリフルオロアセトキシアレーンが生成した。シリカゲルによって処理したところ、加水分解が進行してフェノール誘導体を与えた。ジフルオロ酢酸カリウムを用いてジオール修飾したシリカゲルによって処理したところ、加水分解反応を抑制して対応する含フッ素エステルを単離することができた。またカルボニル基を有するジフルオロ酢酸塩を用いると脱炭酸を経たジフルオロアルキル化が進行することを見出した。 ポリフルオロアレーンはフッ素原子を多数有しているため、芳香環の電子密度が低く、芳香族求核置換反応が進行する。適切な塩基存在下、ポリフルオロアレーンとフェノチアジンとを反応させることにより、位置選択的に一置換生成物を与えた。有機光触媒として作用するフェニルフェノチアジン誘導体のメタルフリー合成となりうる。また、ポリフルオロアレーンに対してシリルカチオンフェンおよびフッ化物塩触媒を作用させたところ、ポリフルオロアリール化チオフェンが得られた。本生成物は有機エレクトロニクス材料として有望であると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの検討において、工業的に安価で入手容易な含フッ素有機化合物を出発原料とした分子変換反応を開発してきた。ただし、新型コロナウィルス感染拡大防止を目的とした大学構内入構禁止期間があり、有機合成実験を遂行する時間が例年よりも少なかったため、2020年度を通してやや遅れているといった状況である。上半期の時点では大幅に遅れをとっていたが、入構制限緩和後は順調に進んだと考えている。 テトラフルオロエチレンを用いた分子変換反応では、トリフルオロビニル亜鉛への変換反応、および続く触媒的カップリング反応によるトリフルオロビニル誘導体への変換法などを見出した。以上の内容をまとめ、学術論文にて発表した。産業界へのインパクトは大きく、企業との共同研究のきっかけとなったほか、特許も取得している。 フルオロ酢酸塩を用いたジアリールヨードニウム塩との銀触媒カップリング反応では、新たなフェノール合成法や含フッ素アリールエステルの合成に有用であることを見出した。ただし、当初の検討項目の一つに挙げていた「トリフルオロ酢酸塩の脱炭酸を経由するフルオロアルキル化反応」については未解決である。また銀触媒の作用や適用基質の拡大などいくらかの課題点が残っている。これまでの研究経過については学会等で発表しているが、学術論文にて発表するには時間を要すると考えている。 ポリフルオロアレーンを用いた分子変換反応においては、芳香族求核置換反応を活用することでフェニルフェノチアジン誘導体やチオフェン含有オリゴアレーンの合成を達成した。いずれの生成物も従来は遷移金属触媒を用いたカップリング反応によって主に合成されていたが、本手法の開発によりメタルフリー合成法として利用されると期待している。それぞれの研究内容については、多数の学会や学術論文にて発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
フルオロ酢酸塩と超原子価ヨウ素反応剤とのカップリング反応では、今年度中に学術論文への発表を行う。適応基質の拡大と銀触媒の作用解明に早急に取り組む。反応基質の合成には時間を要するものの達成可能であると勧化ている。一方で、銀触媒の作用については計算化学を活用する必要があると考えている。また、脱炭酸を経由するジフルオロ酢酸塩を用いたジフルオロアルキル化反応について、条件検討を行って収率の向上を目指す。ジアリールヨードニウム塩を用いた脱炭酸的フルオロアルキル化反応は、医農薬をはじめとする含フッ素有機化合物の合成法として有用な手法となりうる。 ポリフルオロアレーンの芳香族求核置換反応によって合成したフェニルフェノチアジン誘導体および含チオフェンオリゴアレーンについては、その有用性について知見を得たい。特にフェニルフェノチアジン誘導体は、ハロゲン化物などの一電子還元を促進する有機光触媒として有用であるため、新たな有機光触媒の創製につながると考えている。芳香族求核置換反応を活用することでさまざまな置換基を導入し、その光触媒能について検討していく。 バルク原料を用いた新たなフルオロアルキル基導入法として、フルオロ酢酸誘導体のα位への官能基化に取り組む。すなわちジフルオロブロモ酢酸エステルやジフルオロクロロ酢酸エステルを出発物質に用いた分子変換反応の開発に取り組む。これまでに活用してきた超原子価ヨウ素反応剤に加え、グリーンサスティナビリティーを意識した手法、すなわち光触媒や電解反応を活用した分子変換に取り組んでいく。
|