2018 Fiscal Year Annual Research Report
両親媒性ランダム・交互共重合体の花型ミセルが形成する高次秩序構造とその応用
Project/Area Number |
18H02020
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐藤 尚弘 大阪大学, 理学研究科, 教授 (10196248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺尾 憲 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (60334132)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 両親媒性高分子 / 交互共重合体 / ランダム共重合体 / 花型ミセル / フラワーネックレス / 小角X線散乱 / 蛍光寿命測定 / 疎水化多糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
マレイン酸ナトリウムとドデシルビニルエーテルからなる両親媒性交互共重合体は、重合度分布を狭くしなくても水溶液中で均一な花型ミセルあるいは均一な花型ミセルを単位とするフラワーネックレスを形成することが知られている。当該年度は、この交互共重合体を合成し、そのミセル水溶液について以下の研究を行った。 (1)花型ミセルおよびフラワーネックレスを形成している濃厚水溶液に対して小角X線散乱(SAXS)測定とピレンを可溶化させて蛍光寿命測定を行い、花型ミセル溶液は高濃度までミセル構造を維持しながら、コロイド結晶に類似した高次の規則構造を形成することを見出した。フラワーネックレス溶液は、濃度増加に伴ってゲル化を起こすので、花形ミセル溶液のような高次構造は観測されなかった。 (2)pH 9の弱アルカリ水溶液中で花型ミセルを形成していた交互共重合体試料が、pHを下げていくとフラワーネックレスにモルフォロジー転移することを見出した。 (3)この交互共重合体と球状蛋白質(β-ラクトグロブリン)とを水溶液中で混合すると共重合体の会合数の大きい複合体を形成することを見出し、その複合体の構造をSAXSにより調べた。 さらに、生体適合性と生分解性を有する多糖(プルラン)を疎水化した両親媒性ランダム共重合体を合成し、その水溶液中でのミセル構造をSAXSと蛍光寿命測定により調べ、これまでに研究してきたビニル系の両親媒性ランダム共重合体と類似のミセル構造を形成していることを見出した。疎水化多糖の水溶液中でのミセル構造を詳細に調べたのは本研究が最初で、生体適合性と生分解性に優れたドラッグデリバリーシステムへの応用が期待されている疎水化多糖のミセル構造を明確にできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は計画していなかった疎水化多糖が水溶液中で形成するミセルの構造を調べることができた。これは多糖の疎水化に適した疎水化剤が利用できたことによる。また、マレイン酸ナトリウムとドデシルビニルエーテルからなる両親媒性交互共重合体のミセルモルフォロジーが溶媒条件に敏感に依存することは以前より予想されていたが、調節が容易な溶液中のpH変化でミセルモルフォロジー変化が観測されたのも、当初の研究計画にはなかった発見である。ただし、予備的な研究より、花型ミセルを形成する濃厚溶液がコロイド結晶に類似した高次構造を形成することはわかっていたが、フラワーネックレスでは、高濃度で会合・ゲル化が起こり、コロイド結晶様の秩序性が見出せなかったことは想定外であった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた研究成果をさらに発展させる予定である。具体的には、以下の研究を進める。 (1)pHを下げたときのマレイン酸ナトリウム-ドデシルビニルエーテル交互共重合体のミセル構造をさらに詳細に調べ、ミセルモルフォロジー転移を引き起こしている原因を探求する。 (2)疎水基にオクタデシル基を有する疎水プルランの疎水基含量を増加させたときに、ランダム行為る状態からフラワーネックレスへの形態転移の様子を詳細に調べる。 (3)水溶液中で両親媒性高分子と球状蛋白質とが形成する複合体構造を小角X線散乱測定によりさらに詳細に調べる。さらに、この複合体の形成機構を、低分子界面活性剤と球状蛋白質との複合体形成機構と比較し、タンパク質光学への高分子界面活性剤の利用の基礎を提供する。
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