2019 Fiscal Year Annual Research Report
高分子融液の基板への展開挙動の分子鎖レベルAFM観察
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18H02025
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
熊木 治郎 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 教授 (00500290)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 展開挙動 / 高分子ブレンド融液 / 原子間力顕微鏡 / 高分子孤立鎖 / プレカーサーフィルム |
Outline of Annual Research Achievements |
イソタクチックポリメタクリル酸メチル(it-PMMA)/PMMAオリゴマー(1/10000 wt/wt)の混合融液がプレカーサーフィルムを形成してマイカに高湿度下で展開する様子を原子間力顕微鏡(AFM)を用いてin situ、実時間観察し、it-PMMA孤立鎖がプレカーサーフィルム中で活発に流動する様子を実時間観察することに既に成功している。 本年度は、プレカーサー中のit-PMMA分子鎖の運動の湿度依存性を検討した。分子鎖の運動は湿度の影響を大きく受け、湿度が72%から、66%、58%RHと低下するに従い、分子鎖の運動速度は、20-32nm/min、6-11nm/min、0.4-2nm/minと大幅に低下した。これは、湿度に応じて混合融液の展開速度が大きく低下することに対応している。プレカーサーフィルムは、薄く、かつ柔軟なため、直接AFMで観察することはできないが、液滴の体積減少から、プレカーサーフィルムの膜厚を仮定し、そのAFM観察位置における流動速度を推定すると、それぞれ780、359、151nm/minであり、PMMAオリゴマーが高速に流動し、それに流される形でit-PMMA鎖が流動していることが分かった。オリゴマーの流速に対してit-PMMAの分子鎖の流動速度の比は、およそ1/15、1/42、1/130と湿度が低下するに従って、さらに低下することがわかった。AFM観察されるit-PMMA分子鎖の長さは、湿度が低下するにつれ、短くなっており、低湿度では高分子量体の流動性が低く、低分子量体のみが観察されている可能性がある。その場合、低湿度でのit-PMMA鎖とPMMAオリゴマーマトリックスの流動速度の差はさらに大きく広がっているものと考えられる。液滴が完全に流動し終わった後のit-PMMA分子鎖の分布を評価することで、分子量分別の影響を評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
it-PMMA/PMMAオリゴマーの混合融液が高湿度下で、マイカ上にプレカーサーフィルムを伴って展開する様子をAFMを用いて観察し、プレカーサーフィルム中を流れるit-PMMAポリマーを分子レベルで観察することに成功しており、R1年度は、その湿度依存性の評価を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
it-PMMA/PMMAオリゴマー融液がマイカに高湿度下で展開する様子をAFMを用いて観察している。R1年度は、プレカーサーフィルム中でのit-PMMAの運動の湿度依存性を検討し、運動挙動が湿度に大きく影響されることを明らかにした。本年度は、液滴が完全に展開した後のit-PMMA鎖の分布を観察・解析することにより、展開挙動をより明確にする。また、現在のところ、プレカーサーフィルムそのものは、柔らかく、かつ薄いため、その全体像を観察することができていない。吸着水層の薄い低湿度下で、プレカーサーフィルムの全体の展開挙動の観察できないか検討を試みる。
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Research Products
(11 results)