2019 Fiscal Year Annual Research Report
Bottom-up Preparation of Functional Gel Materials Composed of Crystalline Oligosaccharides
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18H02029
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
芹澤 武 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (30284904)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤田 敏樹 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (20581078)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | セルロース / 酵素反応 / 自己組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、セルロースオリゴマーまたはその誘導体の自己組織化によりゲルを調製し、それらの構造・物性を評価した。本研究では、酸によるアルカリ水溶液の中和により自己組織化を誘起するため、析出が中和後にきわめて迅速に起こり、制御困難になることが予想された。したがって、試料濃度、酸またはアルカリの種類と濃度、温度などに注意を払いながら系統的に中和条件を変化させた。その結果、アルカリとして水酸化ナトリウム、酸として塩酸を用い、セルロースオリゴマーまたはその誘導体の終濃度が0.5から2.0% (w/v)程度になるように中和することにより、再現性よくゲルが得られることを明らかにした。この際、アルカリ水溶液を長期保存せずに、速やかに酸で中和することによりセルロース分子の分解反応を抑制できた。さまざまな条件で調製したゲルのネットワーク構造を走査型電子顕微鏡により観察した結果、いずれもよく成長したナノリボン状の集合体からなり、ネットワーク密度、つまり網目サイズは、セルロースの濃度で制御できることがわかった。これらのナノリボンはセルロースIIの結晶形を有していた。原子間力顕微鏡によるナノリボンの厚さ解析の結果と併せて考察した結果、セルロース分子鎖はナノリボンの基底面に対して垂直に配列していることが示唆された。セルロース濃度が高い場合には、自重でも潰れないゲルとなっており、圧縮試験により剛性や強度を定量することもできた。本系では中和によりアルカリおよび酸の濃度に依存した無機塩(水酸化ナノトリウムと塩酸の中和反応では塩化ナトリウム)を生成するが、他の塩の存在下でもゲル化が進行することがわかり、例えば、中和後の溶液が各種の緩衝液となるような繊細な調整も可能であることを見出した。一連の解析結果をもとに、中和後に凝集沈殿する前にナノリボンにまで成長することでゲルを生成する機構を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に水溶性セルロースの加リン酸分解酵素を触媒として利用することにより、セルロースオリゴマーはもとより、さまざまな誘導体を酵素合成できることを明らかにし、本年度はセルロースオリゴマーをアルカリ水溶液とし、これを酸により中和するだけの単純な手法により、高度に発達したセルロースオリゴマーの自己組織化物が得られ、ゲルが得られる一般性の高い知見を得た。酵素の再利用については十分な成果は得られていないが、それ以外については、おおむね当初の計画通りに進行していることから、このように判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度はセルロースオリゴマーまたはその誘導体からなるゲル中に機能性物質を固定化または複合化する予定である。この際、ナノリボンに対するそれら機能性物質の相互作用を分子レベルで理解し、如何に制御するかが肝要となる。このような相互作用の理解と制御を実施しながら特徴ある機能性ゲル材料の創製を推進する。
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Research Products
(32 results)