2018 Fiscal Year Annual Research Report
多機能性高分子イオニクス材料の創製とエネルギーデバイスへの応用
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18H02030
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
宮武 健治 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (50277761)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 機能性高分子 / イオニクス / 燃料電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
疎水部にパールフオロアルキル基を持ち、親水部にペンダント型のトリメチルアンモニウム基を持つ高分子化合物の重合反応条件、四級化反応条件を検討した。特にNi(0)のシクロオクダジエン錯体をモノマー末端塩素に対して過剰に用いることにより、設計した組成を有する前駆体高分子を得ることができた。前駆体高分子の分子量は、Mn >7 kDa、Mw >73 kDaであり、これまでの高分子イオニクス材料と同等以上であった。次に四級化反応についてヨウ化メチルとジメチル硫酸を用いた場合を比較したところ、いずれの反応系においてもほぼ定量的にアンモニウム基が生成することが明らかとなった。特に、ジメチル硫酸を用いると残存イオンの影響がなく高純度の高分子イオノクス材料が得られた。滴定値から算出したイオン交換容量(IEC)は、1H NMRスペクトルから算出されたIECと概ね一致していることを確認した。薄膜の含水率はIECの向上とともに増加し、同程度のIECを有するペンダント型でない薄膜と比べて大きな値であった。ペンダント型薄膜ではアルキレンスペーサーを有することにより、四級アンモニウム基近傍の自由体積が大きいためと考えられる。薄膜のアニオン導電率はIECの増加とともに向上したが、IECが1.5 meq/gを越えるとやや低下した。常温での導電率は50mS/cm程度であり、高性能薄膜であることが示された。 次に疎水部構造の効果を検討するためにパーフルオロアルキル基に変えてキンケフェニレン(5つのフェニレンが連結した)構造を用いた。この場合にもパーフルオロ疎水部の場合とほぼ同程度の高分子量体が得られ、柔軟な薄膜を得た。キンケフェニレン疎水部とすることにより含水率を大幅に低減することができた。さらに、IECが2.0meq/gを超えても導電率は低下せず約80mS/cmを達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り研究代表者の独自の設計指針に基づいて高分子イオニクス材料の合成と物性解析を実施し、高分子量体が得られる条件を明らかにすることができた。また、アンモニウム基を有する高分子イオニクス材料の基礎物性を解析し、疎水部構造の効果を定量的に明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に共重合体を用いて薄膜形成を検討する。これまでの経験から溶液キャスト法が平滑で均質な薄膜形成に好適なことが分かっているので、極性有機溶媒を用いて透薄膜が得られる条件を見出す。また、超薄膜(膜厚1μm以下)の作製にはスピンコート法を、膜物性改善のためにはガラス転移温度以上でのホットプレス法を適宜適用する。得られた薄膜のモルフォロジーは、結晶構造(XRD)と親水クラスター径(SAXS)、親・疎水相分離構造(TEM, STEM)を解析し、芳香族骨格や共重合組成との相関を解析する。導電率は、陽イオンに関してはH+, V4+, V5+、陰イオンに関してはOH-, Cl-, SO42-に変化させながら測定し、それぞれのシングルイオン導電率を水中および気相中で湿度・温度を制御した条件で測定する。研究代表者らが独自に組み上げた環境制御型原子間力顕微鏡を用いて、温度、湿度、および電位を制御した条件における薄膜界面の形状像とイオン電流像を定量的に可視化し、バルク構造やイオン導電率との相関を明らかにする。水素、酸素、水蒸気の透過率は既設の装置を用いて測定し、緩和時間の算出から拡散係数と溶解係数を分離して、結晶化度や親・疎水相分離構造との関連を調べる。化学安定性は、酸化雰囲気(過酸化水素水溶液、V5+含有水溶液)と還元雰囲気(水素雰囲気、V2+含有水溶液)、強酸および強アルカリ中で一定時間処理した後に構造と物性の変化を解析する。これらの結果を三元共重合体の主鎖構造やその組成、イオン官能基の種類、キンケフェニレン構造の導入効果の観点から統計的に整理し、薄膜の高次構造や各種物質移動を制御できる分子構造要件を明らかにする。次年度以降に検討する界面設計やエネルギーデバイス展開のため、これまで困難とされてきた安定性とイオン導電率のトレードオフ関係を打破できるイオニクス設計指針を提案する。
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