2018 Fiscal Year Annual Research Report
液体の分子運動性が導入された結晶性有機構造体の合成と動的機能
Project/Area Number |
18H02032
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堀毛 悟史 京都大学, 高等研究院, 准教授 (70552652)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 結晶性有機構造体 / イオン伝導 / 分子運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
長鎖ポリエチレングリコール(PEG)鎖を有するモノマーを合成し、アルデヒドと反応させ、イミン結合で連結させることによって、高分子化した結晶性有機構造体(COF)の合成を行った。PEGユニットが3,6,9,12のモノマーを用いると、長さ9まではCOFの構造体を作ることが粉末X線回折、IR、DSC等解析よりわかった。なおユニットが12のPEGを利用した場合は、非晶質のゲル状の物質が得られ、IR測定などから十分なイミン結合が形成されておらず、置換基が大きすぎることがその原因と推定した。得られたCOFの熱安定性をTGにより測定すると、300℃以上まで安定であることが示唆された。一方で固体NMR測定を行うと、フリーのモノマーは存在せず、十分なネットワークが構築されていること、また内部のPEG部位が比較的高い運動性を有すると同時に、それらはCOFの骨格に近い箇所に局在化していることがわかった。これらCOFにリチウム塩を液相法によって導入したところ、結晶性が低下し、全体構造に変化があることが示唆された。なおこのリチウムイオン導入COFに対してクラウンエーテルを液相で共存させたところ、リチウムイオンの脱離が起こり、結晶構造は回復する。次にリチウムイオン伝導特性の評価を行った。インピーダンス測定を行ったところ、室温においてはリチウムイオン伝導は低いものの、温度を上げることで上昇し、100℃以上では10^-4 S/cmの高い伝導度を示すことが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始時に目的としていた長鎖ポリエチレングリコール(PEG)鎖を有する結晶性有機構造体(COF)の構築を系統的に実現でき、その合成指針をしっかり理解することができている。またそれらは固体中で高い運動性を有し、イオン伝導のターゲットの一つであるリリウムイオンの導入が可能であること、またそれに伴い構造の崩壊がないこと、など本研究の基盤となるCOFが得られたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
合成した、イミン結合を有する長鎖ポリエチレングリコール(PEG)鎖を有する結晶性有機構造体(COF)の動的挙動を固体NMR、DSC等解析から詳細に検討し、特に温度に依存したガラス転移的挙動の有無、体積変化など、イオン伝導体の特性として重要な変化の理解をすすめる。またリチウム塩導入の複合体についてイオン伝導を測定し、高いリチウムイオン伝導を示すものに対しては全固体電池の作成などデバイス検討についても進める予定である。
|