2019 Fiscal Year Annual Research Report
光縮環法を駆使した有機超伝導・半導体創製から有機EL発光素子開発への展開
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18H02043
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
山路 稔 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (20220361)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 秀毅 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (30204043)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 有機超電装 / 有機半導体性 / 高発光効率分子 / 有機EL発光素子 / OLED / フェナセン / 光環化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は前駆体に光を照射するだけでベンゼン環がジグザグに配列した高純度なフェナセン類を簡便に合成する方法を見いだした。通常の有機合成では作成が難しいフェナセン類もこの光反応を用いれば容易に合成が可能な化合物もあり、この方法により創製された化合物で新しい物性発現が期待される。目的のフェナセンをこの光反応で作製するときに重要な点は主に二つある。一つは前駆体の設計である。光励起状態で環化反応が進行するため、励起状態のある程度の寿命が(数ナノ秒以上)必要なため、励起状態の短寿命化を避けるような分子設計が必要である。もう一つは光環化反応の高効率化である。ベンゼン環数が6以上のフェナセンを光縮環法で作成する場合、基本的にベンゼン環数が3-5個であるフェナセン誘導体(本研究では基本ユニットと呼ぶ)を組み合わせて作成しなければならない。このため高次フェナセンを効率良く作成するためには、大量の基本ユニットを準備する必要がある。基本ユニットはこれまでのバッジ処理による光縮環では効率が大きくない(約50%)ことが問題であった。我々はこの基本ユニット作成効率の向上のため、マイクロ流路光反応装置を考案し、作成効率を100%近くまで向上させることに成功している。このように作成したフェナセン部位を発光性分子のクロモファーに導入すると、発光量子収支が向上するという知見を得ている。これらの実績を踏まえて今年度は以下の成果を得た。 我々は窒素と酸素原子で配位したジフロロボロン錯体を新規に創製し、固体と溶液状態で発光効率が全く異なることを発見している。今年度は、この錯体のクロモファーをフェナセンに置換した配位子を作製し、その光物性と結晶構造との関連性を研究した。固体、溶液中いずれも高効率で青色発光を示し、結晶構造との関連性を明らかにした。有機ELデバイスの青色発光層への応用の可能性を示すことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高次縮環化合物を光環化反応で作成する第一段階では、基本ユニットと呼ばれるベンゼン環数が3-5個であるフェナセン誘導体(それぞれフェナントレン、クリセン、ピセン)およびそれらの置換体を、光反応前駆体を経由して大量に準備する必要がある。その次の段階にこれら基本ユニットを組み合わせて再度光反応前駆体を準備する。それを光環化反応により縮環する過程が目的化合物を作製する最終段階である。これらの過程を効率良く推進させるためには、光環化反応の効率向上が必須であった。この問題を解決するために、我々はマイクロ流路光反応装置を設計・実際に装置を作成し、基本ユニット作成のための光反応効率を向上させるためマイクロ流路光反応装置を開発し、従来の光環化収率(約60%)を98%まで向上させている。 今年度はフェナセンをクロモファーとして有する新規高発光性分子の作成を目標に研究を推進した。有機合成過程の途中で、フェナセン部位を導入させるためにカルボン酸アルキルエステル基を有するフェナセンを作製する必要があった。光環化反応は励起一重項で進行するため、カルボニル基の存在は光環化反応効率向上を阻害する。そのため我々はカルボニル基をアルキルエステル化した光反応前駆体を準備し、この化合物で光環化反応を進行させ、目的のフェナセンのカルボン酸アルキルエステル体を作成可能なことを提示できたことが進捗した主な理由である。さらに基本ユニットの作成がマイクロ流路光反応装置の完成により捗ったため、研究計画にあったフェナセンを有する新規ボロン錯体を予定通り作製し物性研究が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、光環化反応を用いて従来の有機合成法では作成困難な大きなπ電子系炭化水素化合物を作製し、その物性、特に超伝導性・半導体性及び高効率発光性を見出すことである。マイクロ流路光反応装置を用いて効率の良い基本ユニット作製が可能になったため、今後は高効率で様々なフェナセン誘導体を準備できることが期待できる。官能基(ハロゲン、ホルミル基、電子供与性・吸引性基等)を有するフェナセン誘導体も反応させる溶媒や温度等の制御により光環化反応により作成可能であることがわかったため、基本ユニット骨格の電子構造制御やハロゲン体を経由したボロン酸への導出、ヒドロキシル基導入による反応点が追加されたフェナセンを導出し、新たにフェナセン骨格を有する様々な縮環・縮合分子を作製する可能性を与える光反応系はこれからの新規縮環化合物開拓に応用展開していく。 我々はこれまでに縮環芳香族分子を炭素ー炭素結合で連結させたマルチクロモファー分子の光物理特性、特に固体発光量子収率と結晶構造の関連性を明らかにしてきた。固体発光効率が大きな分子は結晶構造がヘリングボーン型であることが判っている。一方、有機超伝導を示すピセンの結晶構造もリングボーンであり、固体発光を示すことを明らかにしている。ヘリングボーン結晶構造を中心キーワードとして、固体発光という物性探索からのアプローチによる有機超伝導性を提示する分子の探索を,前述した様々な官能基を有するフェナセン作製技術を基盤として今後の研究方針に据える予定である。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Spectroscopic properties of push-pull 2-(4-carboxyphenyl)-6-dimethylaminobenzothiazole derivatives in solution and the solid state2019
Author(s)
Y. Takahashi, T. Uehara, C. Matsuhashi, M. Yamaji, T. Mutai, I. Yoshikawa, H. Houjou, K. Kitagawa, T. Suenobu, S. Maki, T. Hirano
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Journal Title
J. Phorochem. Photobiol. A: Chem.
Volume: 376
Pages: 324-332
DOI
Peer Reviewed
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