2019 Fiscal Year Annual Research Report
酵素反応を駆使した金属イオン応答性DNA超分子の創製
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18H02081
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹澤 悠典 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (70508598)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | DNA / 人工DNA / 金属錯体型人工塩基対 / DNA合成酵素 / デオキシリボザイム / DNAナノテクノロジー / 超分子化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、様々なDNA合成酵素を活用した金属配位子型人工DNAの酵素合成法を開発し、金属錯体型塩基対形成を駆動力として構造・機能のスイッチングが可能な金属イオン応答性DNA超分子を創製することを目的としている。昨年度に引き続き、Cu(II)イオン存在下で金属錯体型塩基対H-Cu(II)-Hを形成するヒドロキシピリドン型ヌクレオチド(H)を用い、(1)DNAポリメラーゼとリガーゼによる金属配位子型ヌクレオチドの挿入反応、および(2)金属錯体型塩基対形成により活性を制御できるデオキシリボザイム(DNAzyme)の開発を進めた。 (1)昨年度までに、鋳型となる塩基をAまたはTとしたときに、DNAポリメラーゼによりHヌクレオチドを導入できることを見出した。本年度はさらに、Hの一塩基伸長の後にDNAリガーゼを用いたライゲーションを行うことで、Hヌクレオチドを含む人工DNA鎖の酵素合成を行った。この方法により、Hヌクレオチドを2箇所に含むDNA鎖のワンポット合成にも成功した。 (2)H-Cu(II)-H塩基対の形成により高次構造が大きく変化することで触媒活性を制御できる、一本鎖型のアロステリックDNAzymeを開発した。既報のRNA切断DNAzymeのステム部分に一対のHヌクレオチドを導入し、さらにCu(II)非存在下で不活性構造をとるように、触媒活性部位と相補的なDNA配列をループ部分に導入した。その結果、1当量のCu(II)存在下での触媒活性はCu(II)非存在下の6.8倍となり、Cu(II)の添加・除去に応答したDNAzymeのアロステリック制御を実現した。 以上のように、DNAポリメラーゼおよびリガーゼを用いた配位子型人工DNA鎖の酵素合成法を確立し、金属錯体型塩基対H-Cu(II)-Hの形成によりアロステリックに活性が制御できる一本鎖型DNAzymeの開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、金属配位子型人工DNA鎖の酵素合成に基づく金属イオン応答性機能性核酸・DNA超分子の創製を目指しており、本年度は以下の結果を得た。 (1)天然DNAを鋳型鎖とし、DNAポリメラーゼによる一塩基伸長反応、およびDNAリガーゼによるライゲーション反応により、ヒドロキシピリドン型ヌクレオチド(H)を導入した金属配位子型人工DNA鎖の酵素合成法を確立した。特に、2箇所にHヌクレオチドを含む人工DNA鎖をワンポットで合成することにも成功した。 (2)金属錯体型塩基対H-Cu(II)-Hの形成により高次構造が大きく変換し、触媒活性がアロステリックに制御できる一本鎖型のデオキシリボザイム(DNAzyme)の開発に成功した。蛍光性のピロロシトシンを導入したDNAzyme鎖を用いた解析から、Cu(II)イオン添加により望んだ構造変換が起きたことが確かめられた。DNAzymeの活性は、Cu(II)イオンの添加・除去に応答して速やかに変化し、繰り返し制御することもできた。 Cu(II)以外の金属イオンに応答するDNAzymeの開発などの課題は残っているが、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、DNAポリメラーゼとリガーゼを用いた配位子型人工DNA鎖の酵素合成法の開発、およびCu(II)錯体型人工塩基対の形成により活性がアロステリックに制御できる一本鎖型デオキシリボザイム(DNAzyme)の開発を行った。 次年度以降は、複数の配位子型人工ヌクレオチドの連続導入法の開発や、ヒドロキシピリドン型ヌクレオチド以外の配位子型人工ヌクレオチドの酵素による導入法の開発を進める。特に、Cu(II)以外の金属イオンを介して塩基対を作る配位子型人工ヌクレオチドの導入を検討し、種々の金属イオンに応答するDNAzymeやDNA超分子の創製を目指す。さらに、複数種の金属錯体型人工塩基対を導入することで、複数の金属イオンを入力として構造・機能が変換するロジックゲート応答を示すDNA超分子の開発も行う。
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