2019 Fiscal Year Annual Research Report
全4塩基遺伝暗号翻訳システムの開発と超多様化ペプチド創薬への応用
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18H02083
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
芳坂 貴弘 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (30263619)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 遺伝暗号 / 非天然アミノ酸 / 無細胞翻訳 / ペプチド / 分子進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究代表者がこれまで研究を進めてきた4塩基への遺伝暗号拡張を発展させて、4塩基コドンのみからなる無細胞翻訳システムを構築し、さらにそれを遺伝情報連結型ペプチドセレクション技術と組み合わせることで、多様性を飛躍的に向上させたペプチドの取得技術に応用することを目的として実施している。2018年度には、アミノ酸を含まない再構成無細胞翻訳系を用いて4塩基コドンの翻訳を評価できる実験系を構築し、実際にArgのコドンを拡張した4塩基コドンが効率よく翻訳されることを確認した。一方で、4塩基コドンの翻訳においては3塩基による天然アミノ酸への翻訳以外に、別の競合過程の存在も示唆された。そこで2019年度は、まず4塩基コドンの翻訳過程の分析を行い、4塩基コドンの翻訳と競合して、4塩基コドン上流でのペプチジルtRNAの加水分解、および、4塩基コドン下流での自発的な翻訳読み枠のずれ(フレームシフト)が起こることを新たに見い出した。また、すべての4塩基コドンについてmRNAおよびtRNAの作製を完了し、順次、対応するアミノ酸を含まない再構成無細胞翻訳系において、非天然アミノ酸の導入の評価を行った。その結果、これまでのところ複数の種類の4塩基コドンにおいて、実際に非天然アミノ酸の導入が認められた。これらの成果は、4塩基コドンを用いて複数の非天然アミノ酸を導入した超多様化ペプチドの発現の基礎となるものであり、今後、特定の標的に結合する非天然ペプチドの取得技術への応用に向けて研究を進めていく計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた256種類すべての4塩基コドンについて、mRNAおよびtRNAの作製を完了した。また、4塩基コドンの翻訳過程において当初想定していなかった競合過程が存在することが明らかとなったが、対応するアミノ酸を欠損させた場合であっても、上流でのペプチジルtRNAの加水分解や下流でのフレームシフトが競合して起こり得ることを明らかにし、今後の4塩基コドン翻訳の分析を行うための基礎的知見を得ることができた。これらの成果については、今後、学会発表および論文投稿による外部発表を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も継続して、すべての4塩基コドンについて再構成無細胞翻訳系での非天然アミノ酸の導入評価を行い、独立に翻訳可能な4塩基コドンを網羅的に探索する。その際、それぞれの翻訳生成物についての質量分析から、目的物の同定とともに、副生成物の確認およびその同定を行うことで、4塩基コドン翻訳における翻訳メカニズムについても考察する。また、4塩基目の読み分けについて、1塩基ミスマッチを含む4塩基アンチコドンを持つtRNAを用いて翻訳を行うことで、互いに独立して翻訳可能か検証する。さらに、複数の4塩基コドンを並列させた遺伝子から、複数の非天然アミノ酸が導入されたペプチドの発現が可能かどうか検証して、4塩基コドンのみからなる翻訳の可能性を探るとともに、mRNAディスプレイ法へ適用することで、複数の非天然アミノ酸を組み込んだペプチドライブラリーから、標的に結合する非天然ペプチドの取得を試みる。
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