2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H02085
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
萩原 伸也 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, チームリーダー (80373348)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 植物ホルモン / ケミカルバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではbump-and-hole法を植物科学に取り入れ、植物ホルモン受容の局所的制御を実現する。bump-and-hole法とは、変異を導入して受容体の構造を改変し、この改変型受容体に結合するリガンドを設計することで、天然型のリガンドー受容体ペアとは独立にシグナル伝達を誘起する人工ペアを作る手法である。申請者はこれまでの研究で、植物の成長全般において極めて重要な役割を担う植物ホルモン「オーキシン」について、bump-and-hole ペアを作成している。さらに、この改変受容体を対象とする器官で発現させることで、オーキシンの効果を器官特異的に誘起することに成功した。これはbump-and-hole法を個体レベルで実現した初めての例である。本研究では、さらに植物の成長全般に関わる植物ホルモンであるサイトカイニン、ジベレリンに焦点をあて、受容を時間的・空間的に制御する新技術を開発し、植物個体レベルでの機能制御をめざした。 本期間は、この成果を農業応用可能なレベルに引き上げるため、人工ペアの分子構造のさらなる最適化を行った。その結果、わずか10 pMでオーキシン応答を誘起可能な新規オーキシンと受容体ペアの開発に成功した。さらに、サイトカイニンについても、精密な分子設計に基づきbump-and-hole ペアを作成し、大腸菌を用いたレポーターアッセイにより評価したところ、天然の系とは独立してシグナルを誘起可能であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オーキシン応答をわずか10 pMで誘起可能な人工オーキシンー受容体ペアの開発に成功した。この成果は、本手法の農業応用を可能にするだけでなく、植物以外の幅広い分野の細胞生物学へ展開可能であり、強い波及効果が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発したオーキシンのbump-holeペア、並びに本申請課題で開発するサイトカイニンやジベレリンのbump-holeペアをトマトなどの実用植物で器官特異的に発現させ、実用化に向けた実証実験を行う。トマトのゲノムデータベースから各器官で特異的に発現する遺伝子のプロモーター配列は簡便に調べることができる。本課題では、果実の肥大化を選択的に誘起するため、子房で発現するプロモーターを用いる。子房特異的プロモーターの中でも、果実の形成に至る各段階で時期特異的に発現するプロモーターが存在する。本研究では、こうしたプロモーターをそれぞれ導入した改変型受容体遺伝子をトマトに形質転換し、高品質な果実形成に適したプロモーターを探索する。このような果実形成の仕組みは植物学的に重要であるにもかかわらず、植物ホルモンが子房のどこで・いつ受容されると果実の形成に至るのかは不明な点が多い。本研究は、農業利用のみならず、こうした植物科学において謎とされている仕組みを解明するのに有効で、学術的にも幅広い波及効果が期待される。
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Research Products
(2 results)