2018 Fiscal Year Annual Research Report
イネの光合成と個体生育の窒素利用効率の改良:炭酸固定とその基質再生産の同時増強
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18H02111
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
鈴木 雄二 岩手大学, 農学部, 准教授 (80374974)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光合成 / 炭酸同化 / イネ / 遺伝子組換え |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、イネを材料とし、光合成炭素同化を担うカルビンサイクルの代謝改変により光合成および個体生育の窒素利用効率の改良を図ることである。このため、酵素Rubiscoによる炭酸固定能力と代謝産物グリセルアルデヒド3-リン酸 (GAP) 供給能力の同時増強を図ることとした。 H30年度ではGAPの代謝抑制および生成強化を試みた。前者においては、トリオースリン酸イソメラーゼ (TPI) の量を遺伝子組換えにより抑制した。組換え当代で量的抑制の程度が強いものから弱いものまでを選抜した。T1世代でホモ化された系統をさらに選抜し、当代の性質を保持していることを確認した後、GAP供給能力の指標として高CO2分圧下の光合成速度を測定した。その結果、野生型と比べ光合成速度が高くなったものは得られなかった。このため、TPI抑制イネの解析は一時中止することとした。 GAPの生成強化においては、グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素 (GAPDH) の活性を遺伝子組換えにより増強した。組換え当代で活性増強程度が異なるものを選抜した。T1世代でホモ化された系統をさらに選抜し、当代の性質を保持していることを確認した後、高CO2分圧下の光合成速度を測定した。その結果、増強程度が強い系統では光合成速度が最大で2割程度増加することが明らかとなり、GAP供給能が増強されたことが強く示唆された。 なお、カルビンサイクルのボトルネックであると考えられてきたセドヘプツロース-1,7-ビスフォスファターゼの量を増強したものの光合成に野生型との違いはなく、Rubiscoと同時増強しても同じく光合成には変化は生じなかった。 さらに、H31年度に計画していた、Rubisco増強イネとGAP生成増強イネの交配を前倒しで行い、F1種子を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
遺伝子組換えイネの作製および交配が前倒しで進んでいるためこの評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
Rubisco増強イネとGAP生成増強イネに絞り、計画に従い推進する。また、GAP生成増強イネで高CO2条件下の光合成速度が上昇したため、高CO2環境での個体生育量が増加することが期待される。この点についても加えて実験を行うため実施内容が増えた。また、新たに導入した遺伝子組換えイネ栽培用の人工気象器でイネに生育異常が生じるケースがあることが発覚した。これらの理由で、今後の研究の進展にはこれまでよりも時間を要するかもしれない。
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