2019 Fiscal Year Annual Research Report
Evolution of STOP1 system that regulates multiple stress tolerance
Project/Area Number |
18H02113
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
小山 博之 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (90234921)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井内 聖 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 専任研究員 (90312256)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | STOP1 / 発現制御 / カリウム |
Outline of Annual Research Achievements |
シロイヌナズナの酸耐性遺伝子として同定されたZnフィンガータンパク質であるSTOP1は、転写因子として機能し、低pH耐性遺伝子の転写を制御する。このタンパク質が転写制御するSTOP1システムは、酸、アルミニウムストレスに加えて、ハイポキシアストレス、リン酸欠乏に応答する根の形態形成を制御する「多面発現性」を持つことを昨年度までに明らかにした(注;リン酸欠乏応答のみは、海外のグループの成果)。本年度は、STOP1システムが、乾燥耐性には負に働くことをシロイヌナズナで明らかにした。この知見は、ハイポキシア耐性と乾燥耐性がトレードオフの関係にあることを証明するとともに、それらがABAやエチレンシグナルで追加的に制御されるように進化したことを示唆するものである。乾燥耐性を負に制御する仕組みは、カリウム輸送体の活性化調節タンパク質の転写制御によるもので、STOP1は、リンに加えてカリウムの吸収・代謝も制御することを明らかにした。一方、ゼニゴケで実施した研究では、ゼニゴケの仮根の伸長が、1)アルミニウムや酸処理に弱いことをも見出し、ゲノム編集でSTOP1を破壊した系統の解析から、2)酸・アルミニウム耐性がSTOP1に制御される形質であることとともに、3)ハイポキシア耐性も制御することを明らかにした。これらの結果は、植物の陸上適応時に必須なハイポキシア耐性システムを多面発現様式で進化させたことを証明する成果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
3年間の計画で、1)ハイポキシア耐性制御の証明(2019、JXB誌に掲載)、2)乾燥耐性を負に制御することの証明、及びPIPシグナルが、転写誘導に関わることの証明(2019、JXB誌)に成功している。既に、ゼニゴケのSTOP1システムが機能することを明らかにしていることから、当初の計画を大きく超える成果を出すことができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
STOP1転写因子の発現制御は、タンパク質内部の構造変化(活性ドメインの獲得)と、プロモーターの変異による標的遺伝子の多様化が関係していると考えられる。昨年までの研究では、シロイヌナズナでは酸耐性、アルミニウム耐性、ハイポキシア耐性を制御することを突き止めている。また、その制御は予想通り、タンパク質ドメインの制御やシス因子(プロモーター構造)の変化が関係していることを示す結果を得ている。研究の最終年度に当たる本年は、1)タンパク質構造変化のWET実験(キメラタンパク質組換え体などの解析)、2)シャジクモ・ゼニゴケでのSTOP1様タンパク質の機能解析(シロイヌナズナの相補組換え体の解析及びゼニゴケでの遺伝子破壊系統の解析)を実施する。1)につい ては、標的遺伝子が特定できていることから、リアルタイムPCRなどで対応できるが、2)に関しては転写量をゲノムワイドにRNseq解析により特定する必要がある。そのターゲット遺伝子が分かった時点で、ゼニゴケにおいては標的遺伝子の破壊系統を作成して、転写因子・標的遺伝子の双方が高等植物と同等であるか否かを解析する。
|