2018 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜スフィンゴ脂質の代謝破綻から細胞を守る新規救済機構の解明
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18H02139
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷 元洋 九州大学, 理学研究院, 准教授 (20452740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 洋平 九州大学, 農学研究院, 助教 (90572868)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 複合スフィンゴ脂質 / セラミド / スフィンゴイド塩基 / 出芽酵母 / ストレス応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はスフィンゴ脂質の代謝破綻による細胞機能異常発現とそれに対する救済機構に関して、以下の成果を得た。 (1) スフィンゴイド塩基の新たな細胞毒性の発見とその回避 複合スフィンゴ脂質の基本骨格となるスフィンゴイド塩基 (出芽酵母ではフィトスフィンゴシン (PHS), ジヒドロスフィンゴシン (DHS)の二種類)は、通常は細胞に極微量にしか存在しないが、セラミド合成酵素阻害、セリンパルミトイル転移酵素の異常活性化で、量的変化を受けやすい脂質である。今回、DHSが細胞内に過剰に蓄積するとPHSよりも遥かに強い細胞毒性を発揮することを見出した。DHSが過剰蓄積すると、細胞内で活性酸素種の増大が観察された。一方で、ミトコンドリアDNAを欠損した変異株では、活性酸素種増大はみられずDHSの細胞毒性も緩和された。また抗酸化剤の添加でも細胞毒性は顕著に抑制された。これらのことより、DHSの過剰蓄積は、ミトコンドリアを介した活性酸素種産生を促進することで細胞死を誘導し、活性酸素種抑制が救済に繋がることがわかった。 (2) 複合スフィンゴ脂質破綻応答シグナル (HOG経路)の最終標的因子の検討 これまでに複合スフィンゴ脂質が減少するとHOG経路が活性化され細胞を救済することを見出しているが、HOG経路の最終標的は不明であった。本研究では、DNAマイクロアレイを用いて複合スフィンゴ脂質代謝破綻下でHOG経路依存的に転写が増大する遺伝子約70個を同定した。これらの中から特に転写誘導活性が強かった19遺伝子に着目し、酵母に過剰発現させ複合スフィンゴ脂質代謝破綻による生育阻害に対する影響を調べた。その結果、3遺伝子に救済能があることを見出した。これらの遺伝子は解糖系やミコトンドリア機能に関連しており、糖代謝の調節が複合スフィンゴ脂質代謝破綻に対する救済と関係することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心的課題であるスフィンゴ脂質破綻下でのHOG経路の機能解明において、その最終標的因子を絞り込むことができた。さらに、その中の一つ (ミトコンドリア局在の機能未知のキナーゼ)はミトコンドリアを介した活性酸素種産生の低減に寄与するというデータも得ており、具体的な救済メカニズムの一端が明らかになりつつある。またDHSの細胞毒性については、これまで知られておらず、酵母のスフィンゴ脂質の生合成系破綻における新たなリスクファクターとして位置付けられるものである。そのため本発見は、スフィンゴ脂質代謝破綻によるリスクから細胞を守る機構を明らかにしていくという本研究の方向性において、重要な位置を占める。以上のことから、本研究課題の進捗状況は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
DHSがスフィンゴ脂質代謝破綻における新たなリスクファクターとなることが判明したため、次年度以降はDHS過剰蓄積に対して酵母が潜在的に持つ救済機構の探索を試みる。 また、HOG経路については、その最終標的因子としてミトコンドリア局在の機能未知のキナーゼが同定されたため、今後はこのキナーゼに着目して複合スフィンゴ脂質破綻に対する救済との連関性を明らかにしていく。さらに、複合スフィンゴ脂質の親水性頭部構造の破綻による機能障害を補填するメカニズムについても解析を進め、「複合スフィンゴ脂質の量、構造が破綻した際に細胞はどのような対策をとるのか?」について多角的視点から検討を進める予定である。
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