2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of ecdysteroidogenesis during embryonic development of the silkworm by comprehensive ecdysteroid analysis.
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18H02143
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片岡 宏誌 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (60202008)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 昆虫 / ステロイド / リン酸抱合体 / 胚発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの予備的な実験結果の再現性を確認するとともに以下の解析を行った。 1.エクジステロイドリン酸化酵素(EcK)の発現解析とリン酸抱合体の抽出方法の検討を行った。EcKは卵巣において蛹後期から発現が見られ、発育時期依存的に発現量が増加した。羽化直後の卵巣を摘出し、メタノール-ヘキサン抽出でステロイドを抽出し、アルカリフォスファターゼ処理後、LC-MS/MSで遊離型エクジステロイドを検出した。その結果、未処理群に比べて活性型エクジステロイドである20Eの検出量が増加した。この結果から、抽出液にリン酸抱合体が含まれること、卵巣では主に20Eのリン酸抱合体として貯蔵されていることが明らかになった。 2.産卵後から孵化までの胚形態を12時間ごとに観察し、胚発生期における形態形成のタイムテーブルを作成した。また、産卵直後と産卵3日目の胚からステロイドを抽出し、アルカリフォスファターゼ処理をすることで、リン酸抱合体の含有量を定量した。産卵3日後のリン酸抱合体含有量は産卵直後よりも減少していたことから、胚発生初期にリン酸抱合体が利用されることが示された。 3.カイコガの胚休眠期および休眠覚醒期におけるエクジステロイド生合成酵素を経日的に測定した結果、休眠覚醒後の胚発生再開期に徐々に発現量が増加した。また、生合成酵素の遺伝子欠損変異体では胚発生中期から後期にかけて発生が停止した。このことから、この発育時期には胚自身がエクジステロイドを生合成することにより、胚発生が進行することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた、エクジステロイドの生合成酵素遺伝子とリン酸化を触媒する酵素遺伝子の発現解析を中心に解析するとともに、リン酸抱合体抽出法とアルカリフォスファターゼを用いたリン酸抱合体の半定量法を確立することができた。また、得られたステロイド分析の結果から胚発生初期にリン酸抱合体が脱リン酸化されていることを示した。しかしながら、得られた抽出液中のリン酸抱合体をLC-MS/MSで直接定量する系は確立できなかった。 一方で、エクジステロイド生合成酵素の欠損変異体では胚発生中期から後期にかけて発生が停止することから、胚発生中期から後期にかけて胚自身が生合成したエクジステロイドが胚発生に利用されるというエクジステロイド合成経路に使い分けがあることを示せた。
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Strategy for Future Research Activity |
LC-MS/MS定量の標品となるリン酸抱合体を合成するためEcK遺伝子を培養細胞で発現させ、遊離型エクジステロイドをリン酸抱合体に変換することを計画している。このリン酸抱合体をLC-MS/MSに供し、定量するためのパラメーターを設定する。さらに、確立した定量系を用いて胚発生に伴うリン酸抱合体の含有量を直接定量する予定である。特に胚発生初期には著しい形態変化が観察されたので、産卵直後から96時間後までは6時間ごとにサンプリングし、リン酸抱合体と遊離型エクジステロイド量を定量し、胚の形態変化との関連を解析する予定である。
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