2018 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトiPS細胞を利用した次世代栄養環境リスク評価系の開発
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18H02154
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
白木 伸明 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (70448520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
賈 慧娟 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (60456324)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | iPS / DOHaD / アミノ酸 / 膵臓 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、胎生期の栄養環境変化が出生後の臓器機能に与える影響を簡便に評価できるヒトiPS細胞in vitro系を構築して、得られた知見についてマウスを用いたin vivo系で検証することを目的とした。研究初年度はin vitroおよびin vivoにおける実験系の構築を行った。 ヒトiPS細胞を用いたin vitro評価系は新規の生体環境擬似培地を用いるものへと改良し、一過性のアミノ酸の不足が成熟後の膵臓機能に与える影響を評価した。改良した分化誘導法については特許出願を予定している。細胞機能の評価についてはPCRアレイを用いた遺伝子発現解析・免疫細胞化学的解析・インスリン分泌試験を行い、処理の影響を判断した。刺激を与える時期としては①内胚葉分化・②膵臓前駆細胞分化・③内分泌前駆細胞分化・④膵臓β細胞分化の4時期を想定していたが、まずは全期間において含有アミノ酸濃度を生体環境擬似培地の60%および40%に低下させた場合の変化を検討した。遺伝子発現の結果では細胞分化誘導効率への変化は軽微であるが、全体の細胞数がアミノ酸濃度に依存して減少することが示唆された。機能面に対する評価に関しては現在検討中である。 妊娠マウスを用いたin vivo評価については予備検討で膵臓への影響が示唆されている③内分泌前駆細胞分化におけるメチオニン欠乏をマウスで検証した。マウスにおいて内分泌前駆細胞が分化する胎生11.5から13.5日齢に特別食を与え、胎生13.5日齢および出生直後における膵臓の評価を行った。評価としては免疫組織化学的解析および遺伝子発現解析を現在行っている。膵臓の評価に関しては研究代表者の白木らと協力して検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度はin vitroおよびin vivoにおける実験系の構築を目的に検討を行ったが、in vitro評価に関しては生体環境擬似培地を用いた新規の膵臓分化誘導方法の構築に成功し、構築した分化系を用いて低栄養暴露実験を行い、膵臓発生分化におけるアミノ酸の影響について評価できた。遺伝子発現解析や細胞数の検証から分化誘導過程におけるアミノ酸濃度を60%まで低下させることで膵臓β細胞の減少が起こることを実証できた。機能面に関する評価は検討中であるが、当初予定した検討を十分に行えた。また、in vivo評価においても妊娠マウスを用いて内分泌前駆細胞分化におけるメチオニン欠乏を検証することに成功した。遺伝子発現解析や免疫染色については研究代表者との連携を取り進めており、問題なく研究が遂行出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトiPS細胞in vitro系(白木) in vitro評価系は新規の生体環境擬似培地を用いるものへと改良することで評価精度を高め、一過性のアミノ酸や微量元素の過不足が成熟後の膵臓機能に与える影響を網羅的に評価する。細胞機能の評価については遺伝子発現解析・免疫細胞化学的解析・インスリン分泌試験を行い、処理の影響を判断する。前年度に引き続き、評価を行うがアミノ酸に関してはメチオニンおよびスレオニン、微量元素に関しては亜鉛を評価対象とする。in vitro系を用いたリスク評価を継続し、ヒト胎生期の至適栄養因子パネルを作成する。 妊娠マウスを用いたin vivo評価(賈) ・初年度に白木班において膵臓発生分化に影響を与えるものとして新たに見出された栄養因子について、初年度同様の評価項目で膵臓機能に与える影響を評価する。 ・in vitro分化誘導時の栄養不足および過剰に加えて、成熟後における高栄養負荷時を行った場合でのみ膵臓機能に影響が起こった場合は、出生仔マウスに対して高脂肪食(HFD)処理を行い7週齢目に初年度同様の評価を行い、in vivoでも同様に悪影響が惹起されるかを検証する。
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