2019 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトiPS細胞を利用した次世代栄養環境リスク評価系の開発
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18H02154
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
白木 伸明 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (70448520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
賈 慧娟 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (60456324)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | DOHaD / メチオニン / マウス / iPS細胞 / 微量元素 / 膵臓 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の検討により、ヒトiPS細胞膵臓分化誘導過程において以下の点を新たに確認した。1)血中アミノ酸濃度を参考にして作成した特注培地(生体環境擬似培地)を用いた培養においても、ヒトiPS細胞からグルコースに応答してインスリンを分泌する膵臓β細胞を分化誘導することに成功した。2)全アミノ酸濃度を40%に低下させた培地と上記培地を比較して、影響因子が膵臓分化誘導に与える影響を検討した結果、分化初期の低栄養暴露は細胞死を誘導しないものの内胚葉分化を顕著に阻害することを見出した。3)2)と同様な評価について40%アミノ酸培地に加えてメチオニン・スレオニン個別除去培地を用いて、分化中期および後期に適応して、遺伝子発現および機能評価実験を行った。評価についてコロナ禍で検討が中断しており、次年度の実験再開後に評価を行う。また、妊娠マウスへのメチオニン制限・スレオニン制限の介入により、仔の出生後および成獣時の耐糖能について評価を行った結果、予備的な解析結果から妊娠時の限られた期間の栄養制限で若干の変化が起こることを見出した。詳細な解析については3)同様にコロナ感染拡大の影響を受け、中断している。本年度に予定していたマウスを用いた実験自体は終了しており、取得済みのデータ解析に行うとともに最終年度に行う検討項目を策定できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
順調に進んでいたが、2020年1月以降はコロナ禍で常に研究機関閉鎖の危険性を考えての研究となり長期培養実験が困難であった。マウス実験についても実施が危ぶまれたが、日程調整することで当初予定の研究はおおむね実施することが出来た。一方、得られた結果に対する詳細な解析については若干の遅れは生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトiPS細胞in vitro系(白木) in vitro評価系は既に構築した生体環境擬似培地を用いる。これまでの解析結果からえられた知見を用いた栄養因子が与える影響についての機序解明を進める。最終年度は、メチオニン、スレオニンおよび亜鉛について、細胞機能の評価について遺伝子発現解析・免疫細胞化学的解析・インスリン分泌試験を行い、処理の影響を判断する。特に、微量元素である亜鉛については重点的に評価を行い、得られた結果について投稿論文を作成する。 さらにin vitro系を用いたリスク評価を継続し、ヒト胎生期の至適栄養因子パネルを作成する。 妊娠マウスを用いたin vivo評価(賈) ・膵臓発生分化に影響を与えるものとして白木班で見出されたメチオニン、スレオニン、亜鉛について、初年度同様の評価項目で膵臓機能に与える影響を評価する。これまでにメチオニンおよびスレオニンのin vivo実験が終了しており、最終年度はこれらの実験で得られたデータ解析を進めるとともに、亜鉛過剰摂取実験に取り組む。 ・in vitro分化誘導時の栄養不足および過剰に加えて、成熟後における高栄養負荷時を行った場合でのみ膵臓機能に影響が起こった場合は、出生仔マウスに対して高脂肪食(HFD)処理を行い7週齢目にこれまで同様の評価を行い、in vivoでも同様に悪影響が惹起されるかを検証する。
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