2018 Fiscal Year Annual Research Report
行動する動機(=意欲)の形成・維持機構の解明と食品によるその調節の可能性
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18H02156
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 和生 京都大学, 農学研究科, 教授 (80213148)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 動機 / 疲労 / 自発行動 / 自発運動 / 中鎖脂肪酸 / カフェイン |
Outline of Annual Research Achievements |
2. 行動する動機を調節する機構の解明:エンドルフィンを産生する神経(POMC神経)にCreリコンビナーゼを発現するマウスと、チャネルロドプシン、もしくはハロロドプシンを、creの存在下に発現するマウスを交配することでPOMC神経にオプシンを発現するマウスを得た。光ケーブルを使わず、無線による信号でLEDを発光させ、オプシンを活性化させるシステムを導入した。マウスが回転かごに接近、回転かごへ進入、さらに回転かごで走行する速度の増大に応じて刺激頻度を増大させるようプログラムした測定系を開発した。この2システムを組合せ、自発走行すれば脳報酬系がより強く活性化する実験系を確立した。これによりPOMC神経を光によって特異的に興奮させるとマウスの自発運動量が増加することを示唆するデータを得た。 3. 行動する動機を高める食品の開発:カフェイン投与が持久走行量や自発行動量を増すことを示してきたが、末梢投与した脳内にカフェインが移行することを明らかにし、その作用が脳に及ぶことを証明した。ニコチンは脂肪酸酸化を亢進する効果や、報酬効果を報告されているが、持久走行時間の延長に効果はなかった。 4. 抗疲労・疲労回復機能を持つ食品の開発:[中鎖脂肪酸] 中鎖脂肪酸を多く含むココナッツ油は、コントロール食群に比して有意に持久運動能力の延長を示したが、トレーニングの効果には及ばなかった。ココナッツ油はPPAR β/δの活性化と筋肉におけるグリコーゲン蓄積を阻害したが、肝臓におけるPPARαをトレーニング状態で活性化した。食事中の脂肪酸の違いが、これをリガンドとするPPARに対して異なる効果を示すことが明らかとなった。[米ぬか] 米ぬかは遊泳運動について効果がなかったが、走行運動については持久走行時間の延長に効果を持つことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 行動する動機(=意欲)と疲労度を測定する方法の最適化:2018年度は申請者の勤務地移動により設備の移設などでICSS実験を行えなかった。 2. 行動する動機を調節する機構の解明:予定通り進捗している。 3. 行動する動機を高める食品の開発:予定通り進捗している。 4. 抗疲労・疲労回復機能を持つ食品の開発:予定通り進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 行動する動機(=意欲)と疲労度を測定する方法の最適化:2018年度は申請者の勤務地移動により設備の移設などでICSS実験を行えなかった。設備の移動と稼働について確認できているため、2019年度以降計画を実行する予定である。 2. 行動する動機を調節する機構の解明:前年度確立した実験系に則り、オプシンを発現するマウスを用いた例数を増して仮説の検証を行う。 3. 行動する動機を高める食品の開発:トレッドミル走行を用いた運動意欲の測定に加えて、自発回転かごを用いた自発的な運動意欲の測定系を用い、強制性のない行動で意欲の測定を行う系を確立する。 4. 抗疲労・疲労回復機能を持つ食品の開発:高強度の走行トレーニングを継続しても限界走行能力が低下しない、もしくは走行能力が向上する食品/成分として米ぬかの効果を見いだしたことから、これがどのような成分に起因するかを明らかにする。引き続き種々の食品タンパク質成分についてその効果を検討する。
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Research Products
(2 results)