2019 Fiscal Year Annual Research Report
細胞外基質の硬さによる細胞機能制御の分子機構の解明
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18H02167
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木岡 紀幸 京都大学, 農学研究科, 教授 (90234179)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞外マトリックス / メカノバイオロジー / 細胞接着 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞を取り囲む細胞外基質(コラーゲンなど)の「硬さ」が細胞の分化方向性を制御することがわかってきた。例えば間葉系幹細胞は軟らかい基板上では脂肪細胞に、硬い基板上では骨芽細胞に分化やすくなる。申請者はこれまでに、接着斑タンパク質ビンキュリンが細胞外基質の硬さを感知するメカノセンサーとして働き、硬さによる脂肪細胞への分化調節に必要なことを明らかにしてきた。しかし、脂肪細胞と骨芽細胞への分化のように、至適な硬さが数十倍も異なる際に、同じ仕組みが働いているかは不明である。本研究では、ビンキュリンとともに細胞外基質の硬さを感知するセンサーとして繊維芽細胞において働いているタンパク質SORBS1とSORBS3が、細胞が感知する硬さのレンジに影響している可能性があると考え、その可能性を検証する。これまでに、SORBS1とSORBS3の発現を抑制した間葉系幹細胞を作成し、その細胞にSORBS1またはSORBS3の遺伝子を再発現させた細胞を作成していた。今年度はこの細胞を用い、SORBS1とSORBS3が骨芽細胞への分化に与える効果を検証したところ、SORBS1は骨芽細胞分化を促進し、SORBS3は骨芽細胞分化を抑制していることがわかった。また、細胞外基質の硬さによる脂肪細胞分化の調節に働く転写共役因子YAP/TAZを制御する経路について調べるために、SORBS1またはSROBS3の発現を抑制した間葉系幹細胞でのリン酸化タンパク質のプロテオームの結果から候補シグナル分子を絞り、その役割を検証した。しかし、候補シグナル分子による明確な効果が見られなかったため、今後条件の再検討を行うとともに、接着斑を単離して行うプロテオーム法でも候補タンパク質を探索する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに作成しているSORBS1またはSORBS3の遺伝子を発現抑制/再発現させた間葉系幹細胞を用い、 SORBS1は骨芽細胞分化を促進し、SORBS3は骨芽細胞分化を抑制していることを明らかにした。また、SORBS1またはSROBS3の発現を抑制した間葉系幹細胞でのリン酸化タンパク質のプロテオームのアプローチでは、現在の条件では候補シグナル分子の同定が難しいことがわかった。またin vitroでのSORBS1とSORBS3の効果を調べるための動物細胞での発現、精製系を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
SORBS1およびSORBS3がYAP/TAZの活性を制御する経路について、今後条件の再検討を行うとともに、接着斑プロテオームを利用して候補を絞り、YAP/TAZの制御に関わる分子の探索を行う。また、SORBS1とSORBS3の発現、精製条件の検討を進め、ビンキュリンとの親和性評価を行う。
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