2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18H02176
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
掛田 克行 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (50221867)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松田 隆夫 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター, 主席研究員 (60370657)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自家不和合性 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)オオムギ野生種における花粉側S遺伝子候補の機能証明 In vitroバイオアッセイ法による花粉側S因子の機能証明実験を実施した。花粉側S候補遺伝子(DUF247)のSハプロタイプ特異的多型領域の塩基配列(20nt)に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド(as-oligo)を合成してin vitro花粉発芽培地に添加し、自家および他家花粉の発芽・管伸長に対する効果を調査した。本アッセイでは、花粉散布後の培地に自家雌蕊の浸出液を加えてin vitro花粉に自家不和合性を誘起する。ここで、as-oligoに効果がなければ不和合性状態が維持され、花粉の発芽・管伸長は停止したままとなるが、as-oligoによって花粉側S遺伝子の発現がブロックされ、花粉側S因子の供給がなくなれば、不和合性状態が打破され、花粉の発芽・管伸長が回復すると予測される。これまでに、S1ハプロタイプ(S1-DUF247)のas-oligoの添加によって、S2・S3(他家)花粉の不和合性状態が維持されたのに対し、S1(自家)花粉の発芽・管伸長が回復し、Sハプロタイプ特異的に自家不和合性が打破されることを示唆するデータが得られた。 (2)イネ科におけるS遺伝子オルソログおよびシンテニー領域の解析 雌蕊側S遺伝子(HPS10)のオルソログにおいて従来得られた結果と同様に、花粉側S遺伝子候補(DUF247)のイネ科オルソログについても、花粉の自己認識特異性に必要な高い配列多型性を有し、それらがイネ科内で種を超えたハプロタイプのグループを形成することから、当該候補遺伝子が花粉側S遺伝子であることが支持された。一方、これとは別のクレードに属するDUF247パラログが、Z遺伝子の座乗領域に対応するコムギの第2同祖群染色体長腕(2AL, 2BL, 2DL)に共通に存在することが新たに発見された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、花粉側S遺伝子の同定を第一の目的として、オオムギ野生種から単離した当該有力候補遺伝子(DUF247)のin vitroバイオアッセイを進めている。本年度のアッセイ結果は、候補遺伝子の発現阻害によって花粉側のS認識特異性がブロックされることを示唆するもので、花粉側S遺伝子の機能証明に迫る結果が得られている。また、DUF247遺伝子のイネ科オルソログの多型性・系統解析からも、当該候補遺伝子がイネ科共通の花粉側S遺伝子であることを支持する結果が得られている。さらに、これまで未知であったZ遺伝子に関して、DUF247ホモログのゲノム・シンテニー解析から新規候補の糸口が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初研究計画からの大きな変更はなく、とくに研究遂行上の問題点はない。今後、バイオアッセイデータの再現性を高めるための条件検討をさらに進め、候補遺伝子が花粉側S遺伝子であることを証明する。また、新規Z遺伝子候補の解析に着手し、ハプロタイプ特異的な配列多型性の有無など、当該候補がZ遺伝子の要件を満たすかどうかを調査する。
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Research Products
(4 results)