2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of genome-to-genome cross-talk mechanism in the flowering-time gene pathway of hexaploid wheat and its breeding use
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18H02180
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
村井 耕二 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (70261097)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 倍数性 / 花成 / ゲノム間クロストーク / 転写因子 / エピジェネティック |
Outline of Annual Research Achievements |
1.日長反応性経路遺伝子群の変異解析 早生型および晩生型タルホコムギ系統(AT80およびPI508262)における花成ホルモン(フロリゲン)遺伝子WFT (Wheat FLOWERING LOCUS T)のORF構造をPCR法により比較解析した。その結果、両系統間で、第1エキソン内に非同義塩基置換が1箇所あり、1アミノ酸の変異が存在ことが明らかとなった(早生型 23I ― 晩生型 23V)。このアミノ酸変異が早晩性と関係するのか、早生型×晩生型合成パンコムギNILs(組換え近郊系統)を用いて解析する予定である。また、日長反応性経路でWFTの上流に位置するCO-like遺伝子(TaHd1およびWCO1)についてORF構造を調べたところ、早生型と晩生型のタルホコムギで塩基置換はみられなかった。 2.日長反応性経路遺伝子群の発現解析 4倍体マカロニコムギLangdon、早生型および晩生型タルホコムギ系統、早生型および晩生型合成6倍体コムギ系統(Syn6239およびSyn6228)におけるCO-like遺伝子(TaHd1およびWCO1)について、A, B, Dゲノムの同祖遺伝子ごとに発現パターンを解析した。その結果、CO-like遺伝子発現パターンは、WFT遺伝子発現パターンと同様、早生型合成パンコムギでは、晩生型合成パンコムギと比較して、Dゲノムの遺伝子だけでなく、AゲノムとBゲノムの同祖遺伝子の発現レベルも上昇していることが明らかとなった。これは、異なるDゲノムの作用による「ゲノム間クロストーク」がCO-like遺伝子に働いていることを示唆する。今後、早生型合成パンコムギにおいて、CO-like遺伝子がなぜ発現上昇するのかを解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パンコムギのような倍数体種では、ジェネティックにあるいはエピジェネティックにゲノムを超えた遺伝子間の相互作用「ゲノム間クロストーク」が生じており、これが、倍数体種に多様性を付与し、倍数体種が2倍体種よりも広域適応性、高生産性、高ストレス耐性を示す一要因であると考えられる。本研究は、マカロニコムギ(4倍体、ゲノム構成AABB)に、早生あるいは晩生のタルホコムギ(2倍体、ゲノム構成DD)を交雑して得られた出穂性の異なる2種類の合成6倍体コムギ(ゲノム構成AABBDD)を材料に用い、Dゲノム上の花成(栄養成長から生殖成長への移行)に関与する遺伝子が、どのようにしてAおよびBゲノムの遺伝子を制御し、合成6倍体コムギの花成(出穂性)が決定されるのか、6倍体コムギの花成遺伝子経路におけるゲノム間クロストーク機構の実態を解明し、育種的利用を図ることが目的である。今年度の研究により、異なるDゲノムからの作用が、ゲノムを超えてCO-like遺伝子に働くことが明らかになったことは、大いに進展があったといえる。エピジェネティック作用の解明までは届かなかったが、CO-like遺伝子のエピジェネティック制御機構を解明するという、今後の方向性がつかめた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.WFTおよびCO-like遺伝子のゲノム遺伝子構造の解明 4倍体マカロニコムギLangdon、早生型および晩生型タルホコムギ系統、マカロニコムギとタルホコムギの交雑から作出した早生型および晩生型合成6倍体コムギ系統におけるWFT遺伝子およびCO-like遺伝子(TaHd1/WCO1)のゲノム遺伝子構造を解明する。早生型と晩生型タルホコムギ系統間で変異があるのか、その変異が合成6倍体に引き継がれているのかを明らかにする。これにより、6倍体化によって新たな変異が生じているかを知ることができる。また、合成パンコムギにおけるWFTの発現パターンは日長反応性経路の上流に位置するCO-like遺伝子の発現パターンに制御されていると考えられ、今後、CO-like遺伝子の発現パターンが異なるDゲノムの作用により、どうして変化するのかの解明に注力する。 2.WFTおよびCO-like遺伝子の発現制御機構の解明 遺伝子発現パターンの変化がエピジェネティック制御(DNAのメチル化、ヒストンの化学的修飾)であるかどうかを調べるため、早生型と晩生型で発現変異のあるCO-like遺伝子について、DNAメチル化解析(バイサルファイト法)およびクロマチン免疫沈降解析(ChIP)を行う。また、エピジェネティックな変異が6倍体化に伴って変化するのかを明らかにする。また、CO-like遺伝子の発現制御がジェネティックに行われている可能性もあるため、CO-like遺伝子の転写因子群であるGIタンパク質やそれと共同で働くFKF1およびCDFs遺伝子の変異、CDFs遺伝子発現を制御するCCA1およびPRR5遺伝子の変異も調査する。この解析により、早生型と晩生型の合成パンコムギ系統間の遺伝子産物アミノ酸変異および遺伝子構造変異といったジェネティックな変異を明らかにする。
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Research Products
(2 results)